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〈CITY POP UP STORE FOR YOU @ TOWER RECORDS SHIBUYA〉の様子
※タワーレコード渋谷店のポップアップストアは終了しました

タツローファンの猛者たち

クリス「今日は長門さんのシュガー・ベイブやその周辺のお話をたくさん聞けて嬉しかったです」

長門「そうだといいですけどね」

クリス「RCAイヤーズを全部語り始めると、まだまだ終わりませんよね。

私は“MUSIC BOOK”(『FOR YOU』収録曲)が好きで、JALのプログラムの〈クリス松村のMUSIC BOOK〉で使わせていただいたんです。〈“MUSIC BOOK”を使わせていただきたい〉と、達郎さんにちゃんと断って。

あと、マスタリングしていた時に、達郎さんが忌野清志郎さんと2人でプールで遊んでいたってご存知ですか?」

長門「へ~。すごいですね。それは知らなかった」

クリス「もっと面白い話もあります。アン・ルイスさんが客席から引っ張ってこられて、“BOMBER”を歌わされたとか。

こういうサブの話はたくさんあるんですけど、長門さんが黙っちゃうから。自分のラジオで話せと」

会場「(笑)」

長門「いや~。クリスさんはすごいですよ。僕より全然マニアック」

クリス「それは言っちゃいけない! ここにいるお客さんたちは〈俺は、私はもっと知ってる〉という猛者たちですから!!」

長門「山下くんのファンは本当にいいなと思いますよ」

クリス「シュガー・ベイブの頃から達郎さんに目をつけていた人もいるわけですからね。みなさんはどこからなんでしょうか? (会場に挙手を求めて)80年代以降からの方って、どのくらいいますか? ワーオ。90年代からっていう方は? 70年代から?  やっぱり80年代が一番多いですね」

長門「今、同じ時間に下の階でイハラカンタロウくんがライブをやっているのですが……」

クリス「(会場に)イハラカンタロウさん、ご存知ですか? じゃあ、今週ラジオでかけましょう。この間、SUPER BEAVERの渋谷(龍太)さんとお話しさせていただいて、渋谷さんはお父様が達郎さんの大ファンなのだそうで」

長門「イハラくんもお父さんが山下くんの大ファンで、シティポップやAORが好きになったそうです」

イハラカンタロウの2023年作『Portray』ティザー

クリス「(会場に)息子・娘が20歳以上で、息子・娘もファンだっていう人はどのぐらいいらっしゃいますか? (手を挙げた観客を見て)お~。〈俺が聴かせた〉と!」

観客「コンサートに一緒に行っています」

クリス「今、若い人たちがコンサートにどんどん増えてますからね」

長門「息子に〈達郎〉って名前をつける人もいますからね」

クリス「ここにはいないですよね? (会場に)娘に〈まりや〉とつけた方はいますか? いらっしゃるんだ(笑)」

会場「(笑)」

 

『SPACY』とお蔵入りになったリンダ・キャリエールへの提供曲

クリス「ラジオで達郎さんがおっしゃっていますけど、『SPACY』の値段がすごく高騰しているんですよね。

私はずっと自分のブログで書いてますけど、コロナ前までロンドンに毎年行っていて、レコード店に達郎さんやまりやさん、ユーミンなどの日本のレコードが置いてあるんですけど、毎年コーナーが大きくなっていくんですよ。それで、〈帯付き〉なんて書いているわけです。あのレコードを大切にしないアメリカやイギリスの人たちがですよ! と、あえて言いますけど」

会場「(笑)」

クリス「日本が文化を変えたかのように、帯がある方がいいと。ところが、達郎さんのコーナーだけはいつも空っぽ。これ、事実ですから。神保町の方のレコード店に行っても、達郎さんのコーナーだけ何もなかったり。そういう現象を見た方は多いでしょう?

それで今回、こういう風に再発されて。今回の盤も残りわずかなのでしょうか? みなさんがSNSで〈早く渋谷店に集まれ!〉って言っただけで、すぐ売り切れちゃいそうですね。(ポケットを押さえて)……今、(携帯電話が)すごく鳴ってるの!」

会場「(爆笑)」

クリス「ブルブル震えてる(笑)。本筋のRCAについて話し出したら絶対に終わらないと思って、最後にブレイクタイムみたいなお話をしているんですけど、ダメ、話、終わらないですね」

長門「いいんですかね、こういう話で?」

クリス「いいんです!」

会場「(拍手)」

クリス「私も楽しかったですし」

長門「……『SPACY』は、僕も大好きなアルバムですけど……」

クリス「またトークが始まりますか!」

会場「(笑)」

長門「リリースは77年」

クリス「そうですね。6月25日です」

山下達郎 『SPACY(完全生産限定盤)』 ARIOLA JAPAN(2023)

長門「僕はシュガーをやって、それからティン・パン(・アレー)をやって、〈トロピカル探偵社〉という細野さんのマネージメント事務所を青山に作ったんですよ」

クリス「はい。(マイクがハウリングしているのを聞いて)これ、雰囲気を悪くして終わらせようとしているのかしら?」

長門「その内、客電が落ちるかも」

会場「(笑)」

クリス「もうね、積もる話は山ほどある!」

長門「……それで……」

クリス「はい! まだ続く!!」

会場「(笑)」

長門「山下くんは『SPACY』を作っていて、細野さんはリンダ・キャリエールというオーディションで選ばれたアメリカのシンガーのプロデュースをしていて、ほぼ同じ頃だったと思う。それで、リンダ・キャリエール用に山下くんが2曲作ってくれたんですよ」

クリス「はい。その話は『BRUTUS』(2022年7月1日号)で出ています」

BRUTUS編集部 『山下達郎のBRUTUS SONG BOOK 増補改訂版』 マガジンハウス(2022)

長門「山下くんが書いた“LOVE CELEBRATION”は笠井紀美子さんが歌っているんですけど、もう1曲の方は世に出ていないんです」

笠井紀美子の77年作『TOKYO SPECIAL』収録曲“バイブレイション”。原曲は山下達郎の“LOVE CELEBRATION”。“LOVE CELEBRATION”はその後『GO AHEAD!』に収録された

クリス「その話は『BRUTUS』で読んでご存知の方もいらっしゃると思います(笑)。去年、達郎さんと対談させていただいたのですが、数時間で終わる予定が、なんと2日間になって」

会場「(笑)」

クリス「達郎さんとお話ししていても、大体この調子で色んなサブの話があって、楽しくて終わらないんですよ。そうしたら翌日、もう腰痛になっちゃって」

会場「(笑)」

長門「……結局、そのリンダ・キャリエールのレコードは……」

会場「(笑)」

クリス「長門さん、最高ですね!」

会場「(拍手)」

長門「アルファの村井邦彦さんの一言でお蔵入りになっちゃったんですけど、曲は良かったんですね」