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4人それぞれの8年

 とはいえ近年、ブラーはメンバー全員がそれぞれの活動に多忙だった。むしろ、すでにブラー以外の活動の予定がぎっしり入っていた、という言葉のほうが正確そうだ。デーモン・アルバーン(ヴォーカル/キーボード)はアイスランドの自然音プロジェクトを形にして2021年11月に7年半ぶりのソロ・アルバムとして発表した『The Nearer The Fountain, More Pure The Stream Flows』のリリースがあり、ゴリラズとしても今年2月には8枚目のアルバム『Cracker Island』をリリースしている。

 一方グレアム・コクソン(ギター)は10年代末からはドラマのサントラを2つ作ったほか、デュラン・デュランの2021年作『Future Past』にはソングライティング段階から全面参加。2022年10月には初の自伝「Verse, Chorus, Monster!」を出版し、また2022年春からはローズ・エレノア・ダゴール(元ピペッツ)とのユニット=ザ・ウェイヴを始動。今年2月にはユニット名を冠したデビュー作もリリースしている。

 デイヴ・ロウントリー(ドラムス)はブラーの活動休止タイミングで事務弁護士の資格を取っただけでなく、幾度かの落選を経て2017年にはノーフォーク州議会選挙に労働党から出馬して当選。2021年まで議員活動を行ったほか、2022年からは初めてソロでの音楽活動をスタート。今年1月にはデビュー作『Radio Songs』をリリースしている。アレックス・ジェイムズ(ベース)は食や農の方面に行ってしまったと思っている人もいるだろうが、実は2012年に音楽と食のフェス〈Big Festival〉をスタート。コロナ禍の2020年など休止した年もあったようだが、今年もコッツウォルズの自身の農場で8月に開催予定。ヴァクシーンズやリック・アストリー、シグリッドをはじめ、数多くのアーティストが登場する大規模な内容だ。

 さて、デイヴとアレックスのリズム隊が後にメディアに語った内容によれば、ウェンブリー・スタジアム公演が決まって何か作品を、ということになったものの、他ならぬ彼ら自身も本当に新作アルバムが出来上がるとは思っていなかったようだ。個性的なメンバーたちが揃うからこその緊張関係もあるだろうし、そもそもグレアム脱退後の活動休止を経て前作『The Magic Whip』がリリースされたのは2015年。その後、本作までの8年間に4人がブラーとして活動したのは、2019年のイヴェントへのライヴ参加の一回のみだった。