男女混合8人組という驚きのフォーメーションへ進化! フレッシュなサウンドとクリエイティヴな閃きに溢れた新世界のパーティーはここから始まる!

個性豊かな8人

 今年2月に東京・Spotify O-WESTで行われた、新生lyrical schoolのお披露目ライヴには心底驚かされた。リリスク史上最多となる8人組、しかも3人のメンズを含む男女混成グループに生まれ変わったのだ。女性アイドル・グループという従来の姿に捉われない大きな変化。昨年7月の日比谷野音ワンマンをもってminan以外のメンバーが卒業、オーディションを経て誕生したリリスクの新たな形について、現在はプレイング・マネージャーとして携わるminanは語る。

minan「男女混合はキムさん(プロデューサーのキムヤスヒロ)がもともと構想していたんですけど、いままで通りメンバーは5~6人がベストだと考えていて。でも、最終審査を受けた11人からメンバーを絞る段階で、この8人であればお互い得意な部分と苦手な部分を補い合ってベストな形になると感じて、現実的な問題はいったん置いてみんな入れちゃいました(笑)」

minan

malik

mana

 メンバーの選定にあたっては、各々が持つ個性や武器、すなわち〈ハッシュタグ〉を意識。それらのタグを足し合わせることで、グループとしてもさまざまなクリエイティヴを発揮できるのが現在のリリスクの強みだ。例えば、今回の取材に出席したmalikはもともとイラストレーターとして活動していて、現在制作中のMVでは原画やキャラクターデザインなどを担当しているという。また、manaはダンサーとして華々しい成績を残しているばかりでなく、みずからラップ曲の制作も行う根っからのパフォーマー気質。しかも2人とも以前からリリスクのファンで、活動への熱量も高い。

malik「僕は前からもっとたくさんの人にリリスクのかっこ良さを知ってほしいと思っていて。その力になれたらと思ってオーディションを受けました」

mana「私は前々体制の頃からライヴに行っていて、前回のオーディションも受けて落ちたんです。だから前体制の活動は、純粋にファンとしての目線と、自分が受かっていた場合の目線で見ていて。〈この曲、自分だったらもっとかっこよくできる!〉ってずっと考えていました」

reina

sayo

ryuya

 もちろん他のメンバーも個性豊か。DJも兼任するreinaをはじめ、8人のMCそれぞれが自分の特技を持ち寄ることで、あらゆる意味で垣根を感じさせない、いまのリリスクの風通しの良さが形成されている。

malik「sayoちゃんはとにかく明るくて、ヒマワリみたいな存在。大勢で歌っていてもお客さんに届く真っ直ぐな声をしていて、歌うと雰囲気が一気に明るくなります」

minan「朝ドラの主人公みたいだよね。ryuyaくんももともとリリスクのファンで、お客さんとして接していた頃は穏やかな印象だったけど、仕事仲間として付き合ってみると熱いものを内に秘めていて、〈青い炎〉っていうイメージ。あと彼は長い間バンドでギター/ヴォーカルをやっていて、いまは楽曲制作にもトライしています」

mana「reinaはもともと別のアイドル・グループで活動していて、直接会う前は綺麗でクールな子なのかな?と思っていたら、実際はちょっと不思議なおもしろかわいい子でした(笑)。いろんなものが好きで、何を話しても大体知っているんですよ」

malik「hanaちゃんはオーディションで見たときからオーラがすごくて、〈この子は受かるだろうな〉って思いました」

minan「堂々としていて、人の目を惹く華があるし、ラップや動きの飲み込みも早い。彼女は文章を書いたり写真を撮るのも好きなんです。tmrwは少年マンガの主人公っていう感じで、いつもスケボーを小脇に抱えていて、風貌はやんちゃだけど、歌声は甘くてすごく魅力的。ギターの弾き語りも素敵です」

mana「素直な性格で、好きなものもわかりやすくて。玉置浩二さん、野球、犬、赤ちゃん。頭の中はその4分割でできています(笑)。でもだからこそ、私たちなら躊躇してしまうこともスッとできてしまうところがあって。急にお客さんの中に入って行ったり、乾杯したり。メンバーはみんな宝物です!」

 

リリスクはリリスクでいいじゃん

lyrical school 『NEW WORLD e.p.』 ビクター(2023)

 そんな新生リリスクの初作品『NEW WORLD e.p.』には、先述のライヴで初披露された新体制最初の新曲“NEW WORLD”を含む全5曲を収録。前体制からお馴染みの大久保潤也(アナ)と上田修平が手掛けた、煌びやかなギターが開放的な気分を演出する同楽曲(とそのMV)が象徴するように、本EPには〈新しい世界〉への第一歩を踏み出した8人の気さくでポジティヴなフィーリングが目いっぱい詰まっている。BBY NABEとR.I.K.によるトロピカル~アフロポップ系のスムースなダンス・チューン“House Party”、週末気分に浸れる爽快シンセウェイヴ“DRIVE ME CRAZY”、Rachel(chelmico)×Ryo Takahashi製のロッキッシュな“mada mada da!”など、どの楽曲にも新体制のリリスクならではのフレッシュさが刻まれている。

mana「いままでのリリスクは女の子だけだったので、男の子が入ることで声だけじゃなく雰囲気もガラッと変わって。“House Party”は特にその新しさが出ていて、これまでのリリスクのパーティー曲が昼間にプールで〈イェー!〉みたいな感じだとしたら、この曲はアフターパーティーっぽいというか、私たち8人でいるときのチルな感じが出ていると思う」

malik「“DRIVE ME CRAZY”は8名中5名が参加しているんですけど、ライヴでも楽曲の雰囲気やヴァースに合わせて編成を変えるところが、8人ならではの新しいポイントだと思っていて。それがEPにも反映されておもしろいものができました」

minan「サビはtmrwが歌っているんですけど、彼が歌うことありきで作られた楽曲なんです。私は“mada mada da!”が、いままでのリリスクのポップ感を失うことなく、いまの8人ならではの新しいエッセンスも入っていてお気に入りです。〈まだまだだ〉っていうのもこの8人でいちばん言いたいフレーズ!と思って。ここからなんですよね、まだまだなんだよっていう」

hana

tmrw

 さらには、リリスクの定番曲“秒で終わる夏”と“YABAINATSU”をボルティモア・ブレイクス風にマッシュアップした反則級の夏ソング“秒で終わるYABAI夏”も搭載。「8人になって男の子の声も加わったうえに、こういう曲の上でマイクリレーすると、いままでリリスクが武器にしてきた声が小刻みに変わるおもしろみもより味わえると思います」(minan)との言葉通り、ライヴの現場ではすでに話題騒然となっているそうだ。

 この夏にはワンマンやツアーを開催、そしてアイドルの祭典〈TIF〉出演も決定しているリリスク。前人未到の地に足を踏み出した8人だが、“NEW WORLD”で〈I won't let you down〉と繰り返し歌っているように、いまのリリスクについていけば失望とは無縁の新世界に辿り着けるはずだ。

malik「よく〈アイドルじゃないじゃん〉とか〈ヒップホップじゃないじゃん〉とか言われるんですけど、別に何かになりたいわけじゃないし、うちらはリリスクだから、それでいいじゃんっていう。いまはそれをみんなの中の共通認識として広めていきたくて」

mana「めっちゃわかる! いま、すごく〈◯◯っぽい〉と言われることが多いんですよね」

minan「きっと新しいものを見ているから、そういう反応になると思うんですけど、それは逆にラッキーなことでもあると思っていて。このままこのオリジナリティーを磨いて……」

malik「ブチ突き進んでいきたいです」

左から、minanの2021年のソロEP『ttyl』(ビクター)、キムヤスヒロがプロデュースしたMeguの2021年のシングル“So good”(T-Palette)

左から、BBY NABEが客演したbanvoxの2020年作『DIFFERENCE』(bpm tokyo)、アナの2019年作『時間旅行』(SECOND ROYAL)、chelmicoの2022年作『gokigen』(ワーナー)

 

男女共学に至るまでのlyrical schoolの長い歩み

 リリスクの起源は美大生だったキムヤスヒロらが〈卒業制作〉としてアイドル・ユニットのメンバー募集を始めた2010年の夏にまで遡れる。募集要項で謳われていたのは〈清純派ヒップホップアイドルユニット〉で、そこから誕生したのが6人組のtengal6だ。ある種のヘタウマなラップに伴う可愛さやあどけなさを強みにしたその作法は、いわゆる〈アイドル戦国時代〉の幕開けとされる時期にサブカル的な支持を広げていく。2011年にtofubeats作の“プチャヘンザ!”が評判を呼び、2012年の名作『CITY』は、以降のローファイでシティでメロウな日常系ポップに通じる内容であった。

 2012年夏にlyrical schoolに改名するとよりポップな作風に振り幅を広げ、その間の2013年7月にはminanが加入。2016年のメジャー移籍後は“RUN and RUN”のMVが話題となるも、翌年に結成メンバーは全員卒業となった。

 2017年に新たな5人組として仕切り直してからは、裾野を広げた現行ヒップホップとの同時代性を強めつつ〈キング・オブ・アイドルラップ〉を掲げて活動。2019年には再メジャー・デビューし、valkneeやRachel、KMらとも組んで独自の方向性を確立した。……と、常に変化してきたグループながら男女混成8人組への移行は過去最大の変化でもあり、さらなるフレッシュな進化に期待したい。 *狛犬

lyrical schoolのアルバム作品を一部紹介。
左から、tengal6の2012年作『CITY』(BootRock)、2013年作『date course』、2015年作『SPOT』(共にT-Palette)、2016年作『guidebook』(キング)、2018年作『WORLD'S END』(BootRock)、2019年作『BE KIND REWIND』、2020年のミニ・アルバム『OK!!!!!』、2021年作『Wonderland』、2022年作『L.S.』(すべてビクター)