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京都東九条を非地球人として歩く不可思議な体験

 ジャンル横断的なパフォーミング・アーツの芸術祭――。2010年から続いてきた〈KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023〉には、そんな形容がしっくりくる。文字通り、演劇、ダンス、音楽、美術、デザインなどが交錯する舞台芸術フェスティヴァルである。今回のフェスが掲げたキーワードは〈まぜまぜ〉。可変性や流動性、複数性を思考の軸にするにあたって浮き彫りになった言葉だ。各所で分断が進み、二項対立的な思考が跋扈する現状への、オルタナティヴな試みである。

 今年の目玉となるのが〈Moshimoshi City:1から不思議を生きてみる|뚜벅뚜벅, 1도 모르는 신기속으로〉だ。Mosihimoshi Cityという企画は、京都市内を舞台に、作家が構想し執筆したテキストを、〈声〉を通して体験するプログラムだ。元々、2021年秋にたちあがったものだが、当時はコロナ禍でいつ劇場を閉めなければならなくなってもおかしくない状況だった。ゆえに、野外でできる企画ということで浮かび上がってきたものだった。

 今回、2023年版として、フェス側は、韓国のシンガー・ソングライター/コミック作家/映像作家/イラストレーター/エッセイストである、イ・ランに京都市の東九条エリアを舞台にテキスト執筆を依頼。イ・ランは、柴田聡子との共作した『ランナウェイ』も絶賛された才女である。

 更に彼女には、オンラインで東九条エリアをリサーチしてもらい、どのポイント(場所)でテキストを書くか、どのようにそのエリアを回るかというのを決めてもらったという。

 大まかに言うと、まず観客が受付でマップを入手し、指定された場所で自分のスマートフォンでテキスト音源を再生する。すると実際には存在しないはずのパフォーマンスが、観客の脳内で立ち上がってくるという。想像力をもって、実在しない作品を脳内に立ち上げる実践、とも言えるだろう。

 また、イ・ランは頻繁に来日しているが、来る度に自分が非地球人だと感じることが多いという。彼女曰く、同プログラムもまた、地球以外の見知らぬ場所からきた非地球人が、ある日東九条に降り立ち、思いも寄らぬセンス・オブ・ワンダーに触れる。そんな風になると記者会見でも話していた。

 同フェスでは、かつてメルツバウ、リシャール・ピナス、バラージ・パンディという前衛音楽家を迎えたこともあり、前衛的な音楽との親和性は極めて高い。まさにEXPERIMENTな可能性を秘めたフェスになるに違いない。

 


LIVE INFORMATION
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023
“まぜまぜ”“mazemaze”

2023年9月30日(土)~2023年10月22日(日)ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO ほか
https://kyoto-ex.jp/

©Lang Lee

Moshimoshi City
1から不思議を生きてみる|뚜벅뚜벅, 1도 모르는 신기속으로

会場:東九条エリア各所
総周遊時間:60-90分(予定)
言語:日本語・韓国語・英語(選択可)
https://kyoto-ex.jp/shows/2023_lang-lee/