
川本真琴が2023年7月19日にリリースしたニューアルバム『ひかり』。独ミュンヘンのブラスバンド、ホッホツァイツカペレ(Hochzeitskapelle)と盟友のテニスコーツ・植野隆司が全面参加し、ナチュラルで穏やかで幻想的なサウンドに挑んだ、これまでにない新機軸の新作だ。サブスク解禁や収録曲“ワールドエンド・ガールフレンド”のミュージックビデオの公開など、本作はリリース後も話題が続いている。
そんな『ひかり』と、川本が1996~2001年にソニー・ミュージックから発表した全シングルをアナログ化したボックス『川本真琴 Vinyl Single Collection』のリリースを記念して、川本とプロインタビュアーの吉田豪によるトークイベントが7月28日にタワーレコード横浜ビブレ店で開催された。脱線を繰り返しながら新作やソニー時代について語ったトークの模様をテキスト化してお届けしよう。
サブスク問題の真相
吉田豪「今日は宣伝色強めのトークをするようにと事前に言われたんですけど、無理ですよね(笑)。川本さん、できます?」
川本真琴「私、宣伝自体が得意じゃないので(笑)」
吉田「フフフ。わかりました。では探り探りいきましょうか」
川本「吉田さんは宣伝、得意ですか?」
吉田「ボクが宣伝を得意なわけないじゃないですか! ボクのインタビューはなるべく宣伝色をなくすのがテーマで、Twitter(X)でも宣伝が苦手なんですよ。感想をリツイートするのがせいぜいで」
川本「ホントですか!? そんな2人でトークを始めさせていただきます(笑)」
吉田「では、まずはサブスク問題※について!」
川本「いきなり(笑)!?」
吉田「昨日、『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)でこのイベントの告知をしてましたけど、えらい怯えてたじゃないですか」
川本「何かが起こるんじゃないかってね。吉田さんの記事はYahoo!ニュースになりやすいので」
吉田「なので、まずはニュースになりそうなこの話題から。ボクもサブスクに対して思うことはいろいろあるんですよ。もちろん大好きで使ってはいますけど」
川本「使ってるんですね。あのとき、インディーズのバンドをやってるミュージシャンの友達としゃべってたんですよ。その人が〈サブスクがあったらもうCDなんて全然売れないじゃん! もうどうにもならない!〉って話をしてて。特にインディでCDを作ってる人たちはそうなんですよね。すごく売れてる人たちはファンのみなさんが配信で聴いて、CDも買ってくれたりするんですけど」
吉田「CDが売れて、なおかつサブスクでも相当聴かれる人は、それなりのお金になるって話ですね」
川本「そう。でも、その友達が〈サブスクなんか将来に繋がらないし、あれのせいで音楽業界はもうダメだ〜!〉って言ってたのにすごい影響を受けて、調子に乗ってTwitterに書いちゃったんですよ。そしたら次の日、それが何百リツイートもされちゃって〈あ〜、やっちゃった!〉と(笑)」
吉田「ダハハハ! 〈川本真琴『サブスク考えた人は地獄に堕ちてほしい』に賛否両論〉とか、結構なニュースになってましたよ」
川本「私から離れて、ちょっとした社会問題になっちゃった。その発端が私で〈えっ、どうしよう?〉って。ラジオやテレビから〈取材させてください〉って依頼が結構きたんですよ。でもぶっちゃけ、サブスクのことはそんなに詳しく話せないんですよね」
吉田「使ってはいるわけですよね?」
川本「使ってます! 自分の曲も出してますし。なので依頼は断るしかないなと思って。専門的に語ってるYouTuberの方とかがいますが、私はそんな風に話せないですから」
吉田「だから、〈ちょっと言い過ぎました〉で終わらせたわけですね」
川本「一応謝っておこうかなって(笑)」
吉田「フフフ」
川本「あと私、3日ぐらい〈ヤバいな〉ってなってもすぐ忘れちゃうんですよね。Twitterもエンタメニュースもあまり見ないので。いろいろ言われて精神的にキツいなと思っても3日後にはそのことに飽きちゃってて、もういいやってなっちゃう(笑)。だから、私がどんな風に言われてたのかは知らないんですけど……」
吉田「そんなに悪くは言われてなかったですよ、一部の方は怒ってましたけども(笑)。なので何の問題もないです!」
川本「すみません。どなたかを怒らせちゃって……」
吉田「ダハハハ! サブスクって基本的に難しいものなんですよ。ボク、いろんなアーティストにインタビューしたときに聞くんです。〈サブスク、実際どうですか?〉って。そうすると、原盤権を持ってるごく一部の人たちはちゃんと稼げてるみたいなんですけど、そうじゃない人のほうが圧倒的に多いですね」
川本「そうですよね。私の場合、もちろんいい面もありますよ。海外の方が容易に聴けるのは大きいですし。あと、例えば20代とかの子が聴いてくれるのはやっぱサブスクの効果だと思うんですね。そういうチャンスがあるのは大きいです。プレイリストに入れてもらえると関連づけで聴いてもらえますし」
吉田「そういう恩恵はあるけれども……」
川本「ただ、もうCDの時代ではなくなってきてますよね」
吉田「そんなキツい状況についてタワレコで話すという(笑)」
川本「そうですね(笑)。でも現実的にそうじゃないですか」
吉田「もちろんそうです。実際、曲がサブスクかYouTubeにないと世の中に存在しないも同然ぐらいの時代になってると思うんですよ。なので、もちろん僕もものすごく便利に使っててプラスの面は大きいけれども、アーティスト側からしたら、曲をサブスクに出したはいいものの、まったくお金にならなくてびっくりした、という話をよく聞くのが現実ですね」
川本「周りの方々はどんなことをおっしゃってます?」
吉田「ホントにバラバラですよ。アイドルの方が昔のベスト盤をサブスクに出したら、当然権利は何も持ってないから、お金がまったく入らなくてびっくりしたと言ってました。歌唱印税で多少入ってくるのかもしれないですけど……」
川本「歌唱印税は全然ですね」
吉田「ですよね。だから権利をちゃんと持っておくことが大事なんだろうなって」
川本「そうですね。サブスクがあったほうがいろんな音楽を聴けるし、いいなっていう思いのほうがいまは勝っちゃってるかもしれないですね」
吉田「おっ! いまの川本さんのサブスク観としてはそんな結論?」
川本「はい」
吉田「〈地獄に堕ちろ〉モードではなくなった?」
川本「あれを書いたときは友達に影響されて書いちゃったんですけど、そこまで思ってなくて、ホント申し訳ないなって気持ちしかないです。ぶっちゃけ、ものすごくいろんな音楽が聴けますし、いいですよね、サブスク」
吉田「ダハハハ! 素直に褒めた!」
川本「今回の新譜はまだサブスクで配信してないんですよね※」
吉田「時間差を設けようという感じなんですか?」
川本「ちょっとまだ考えてないですね」
吉田「正直、いまは新譜を買うモチベーションがそこと関係してきちゃってるんですよ。サブスクにあるからCDを買わなくていいやってことが結構あるので」
川本「私も洋楽のCDを探しにショップに来ることが減りましたね。そんな話をここ(タワーレコード)でしてるっていう(笑)」
吉田「ボクは以前は週2ペースでタワレコで目撃されてましたが、いまは月2回ぐらいしか来てないんですよね。それでも来てます! 月2で来てます! まだヘビーユーザーです!」
川本「みなさんもタワレコに来ましょう!」
吉田「来ましょう!」
川本「楽しいですよ、CDショップは! そうですよね?」
吉田「大好きな場所なのは間違いないです。CDショップと書店には頑張ってほしいんですよ」
川本「ホントですよね」

新作『ひかり』を料理に例えると?
吉田「そろそろ川本さんの新譜の話に移りましょうか」
川本「聴いていただけました?」
吉田「もちろん。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコみたいな空気感だなと思って。もしくはデーモン&ナオミのような感じもあって」
川本「そういう音楽は前から好きなんです。洋楽を聴いてて、そういうのやりたいなと思って作ったのが今回のアルバムです」
吉田「むちゃくちゃよかったですよ!」
川本「ありがとうございます! 今回のアルバムは海外のミュージシャンの方が演奏してることもあって、いままでと違うサウンドの作り方なんです。
あと自分の曲の作り方も変わりました。例えば1曲目がカツ丼、2曲目がハンバーグ弁当、みたいな感じで作ってくんじゃなくて、1曲目がポテトサラダ、2曲目が……なんでしょうね……え〜っと……焼き鳥とか、そういう感じ?」
吉田「……例え、下手ですよね(笑)」
川本「そうですか!?」
吉田「いままでよりも食べやすそうな順番にしたってことですか?」
川本「違うんです。前までは1曲聴いたら1曲でお腹いっぱいになるような曲を作ってたんです。でも今回はポテトサラダ、焼き鳥と……」
吉田「軽めのものから始まって」
川本「そう! 次がカルパッチョ、みたいな感じで」
吉田「居酒屋のお通しぐらいの感じから」
川本「そう。おばんざい系みたいな。……違うな! 違います! 違うこと言ってる! 全然違う! 違うんですよ〜!」
吉田「ダハハハ! コース料理的な話かと思ったんですけど」
川本「ちょっと待ってください……」
吉田「待ちます!」
川本「例えが悪かった!」
吉田「悪いと思います(笑)」
川本「もうちょっと……ヨーロッパ的なものなんですよ……ポトフとか!」
吉田「ダハハハ! ポトフ?」
川本「え~っと……向こうの料理って何があるんだろう? あっ、違うな〜? 違うかな?」
吉田「たぶん違うと思いますね(笑)」
川本「つまり……聴いてもらったらわかります!」
吉田「フフフ。説明を諦めちゃったけど、統一感はすごくありますよね」
川本「そうそう! だからポトフとかは違います」
吉田「いまの例えに統一感はなかったですからね(笑)」
川本「聴いてみてどうでした?」
吉田「いままでの作品とかなり違ってたので面白いなと思いました」
川本「そのいままでと違うところがどういう風に思われるかな〜?って心配だったんですよね。吉田さんは、音楽はいろんなものを聴かれるんですか?」
吉田「かなり偏ってますけど、川本さんの新譜みたいな路線のものも好きで聴くからツボでしたね」
川本「そうなんですね! 昔はパンクとかを聴いてたんですよね?」
吉田「それ、ボクのウィキペディアで学んだばっかりの情報じゃないですか!」
川本「フフフ。さっきウィキったんです(笑)」
吉田「ちなみに人生でいちばん聴いたのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドのサード(69年作『The Velvet Underground』)とニコのファースト(68年作『Chelsea Girl』)なんですよ」
川本「そうなんですか!? じゃあ、私が今回出したアルバムには引っかかるところがあったという感じで大丈夫でしょうか?」
吉田「大丈夫です(笑)。ところで川本さんは、例えは昔から下手なんですか?」
川本「例えですか? 私、結構上手ですよ」
吉田「ほう(笑)! じゃあ、何かいま挑戦してみます?」
川本「いいですよ!」
吉田「それならサブスクを何かに例えてみてください」
川本「サブスクを(笑)!? え〜、何ですかね〜?」
吉田「便利だけど多少問題もあるかも、みたいなものというと……」
川本「……日本で言ったら名古屋みたいな感じですかね?」
吉田「全然わからないです(笑)」
川本「そうですか(笑)? 大阪と東京の間にあるけど、降りたら美味しいものがいっぱいある、みたいな……。フフフ」
吉田「ただの好きな街じゃないですか!」
川本「ただの好きな街ですね(笑)」
吉田「名古屋は地獄に堕ちなくていいですからね(笑)」
川本「そうですね。名古屋、大好きなので」

歌へのプレッシャーとコピバン活動の楽しみ
吉田「ちなみに川本さん、ほかの人に自分の曲をカバーされるのって、どう感じてますか? いろんな人が川本さんの曲を歌ってるじゃないですか。最近は中島愛さんが“1/2”をカバーしてて、それもよかったですけど」
川本「嬉しい限りです。どれもちゃんと聴いてます! 最近すごい可愛らしい“1/2”のカバーがあって。これ、知ってます? ミンティアさん」
吉田「いえ、まったく知らないですね。歌ってみた系の動画なんですね」
川本「これ、可愛んですよ〜! ボカロとかYOASOBIみたいな感じのサウンドで、可愛いな〜と思って。しっかりした企画力を感じて、ホントにいいなと思いました。このカバー、売れてほしいな(笑)」
吉田「カバーが売れたり動画の再生回数を稼いだりすれば、ちゃんと印税が入ってくるわけですからね(笑)。
今回はソニー時代の話もしましょうと言われていて、どれぐらい話せるんだろうってさっき控室でも言ってたんですけど、ご自身として当時の作品は好きなわけですよね? いろいろしんどいことが多かったから、こうやってインタビューで話そうとすると、そんなに話が転がらないようにも見えて」
川本「そうですね。ただソニー時代の曲は歌いにくいんですよ」
吉田「歌詞の言葉数が多いし」
川本「そう。自分で歌うのが大変なので人に歌ってほしい(笑)。みなさんが歌ってくれたら、それが一番いいんです」
吉田「若くて元気なときだったら全然歌えたけど、いまはもうちょっと落ち着いた音楽をやりたいってことですかね」
川本「そうですね。ボーカルってギターとかベースより体力を使うと最近思ったんですよ。私、実はコピバンを始めまして。私はギターなんです」
吉田「何のコピーをやってるんですか?」
川本「ユニコーンです」
吉田「おおっ! 昔好きだったのは知ってますけど、ホントに好きなんですね」
川本「はい。めっちゃ楽しいんですけど、ギターを弾くだけってこんなに楽なんだ!って思いました(笑)。
私は、体調が悪くてもギターは弾けるんです。でも歌って、体調が悪いだけで全然歌えなくて大変なんですよね。だから、“1/2”を歌うときはちょっとプレッシャーがあるんです。明日“1/2”を歌わなきゃいけないってときは体調を整えとかなきゃって。
私、練習も嫌いなんですけど、“1/2”を歌うってマラソンを毎日するとか、そういうのに近いんですよね」
吉田「基礎体力を作っておかなきゃいけないと」
川本「そうそう。最近のアルバムの曲は普通の日常生活をしてれば歌えるんです」
吉田「わざわざマラソンする必要はないと(笑)」
川本「ジムに通わなくていい、みたいな(笑)」
吉田「確かに川本さんの最近のアルバムはどれも自然体ですよね。そんなに練習が嫌いなんですか?」
川本「練習もプレッシャーがあるから嫌なんです」
吉田「コピバンの練習は楽しいんですよね?」
川本「コピーバンドの練習はできるんです」
吉田「コピバンのボーカルは誰がやってるんですか?」
川本「私は大学時代にロック研究会に入ってて、当時もユニコーンのコピーバンドをやってたんですけど、そのときのボーカルの子です」
吉田「川本さんは基本的にバンドが好きなんですよね」
川本「そうです。バンドを組むのがずっと夢でした」
吉田「そういうモチベーションの方がソロでデビューする時点で、いろいろ思うことはあっただろうなって」
川本「私、最初は〈バンドがいいな〜、バンドをやりたい!〉って言ってたんですよ。だけど〈川本はソロのほうがいいと思う〉と当時のディレクターさんが言って」
吉田「そういう大人の意見もわかるんですよね。ソロでもじゅうぶん戦える人だろうというのは」
川本「でも、やっぱバンドやってる人たちが羨ましいですよ」
吉田「それこそユニコーンは結構な揉め方をして解散して、二度と再結成しないぐらいのことを言ってたのが、いまは仲良くやってたりするじゃないですか」
川本「仕事でバンドをやるって大変かもしれませんね。いまはプライベートでバンドを楽しくやって、本業はソロだけどそれはそれでいいかなと」
吉田「ホントにストレスなく活動されてるのが伝わってきますね」
川本「でもプレッシャーはあるんですよ」
吉田「ちゃんと売らなければ、みたいな?」
川本「じゃなくて、歌に対してのプレッシャーがすごいあって、結構悩んでます。ボーカル教室に通えばいいのかな?って思ってるんですけど」
吉田「えっ、いまから!?」
川本「歌に対しては思いがあるというか、真剣さがあるのでプレッシャーが大きいんです。カラオケに行くのも嫌なぐらいなんですよね。いま私の中でそれが大きな問題なんです」
吉田「いま川本さんがボーカル教室に来たら驚きますよ(笑)」
川本「一般の方が行くボーカル教室には行かないですよ(笑)」
吉田「前より歌えなくなってきたとか、そういうのを感じてるんですか?」
川本「やっぱ体力的な問題は大きいですね。私、タバコを吸うので声が出にくいときがあって。タバコのせいじゃないかもしれないんですけど。ボーカルの先生は〈自分で歌が苦手って思っちゃってるから声が出にくいんじゃないか〉と言ってましたね」
吉田「精神的なものだと。ボク、『BAND LIFE』※ってベテランのバンドマンのインタビュー集を前に出したんです。未だに元気だなって感じた人の特徴が、日常的にランニングとかをやってることだったんですよね。やっぱ体力作りってデカいんだなって」
川本「自信もあるんでしょうね。毎日やってるぞっていう。やっぱ声って自信や気持ちがいちばん反映されやすいと思うんです。でも昨日サニーデイ・サービスのドキュメンタリー映画(『ドキュメント サニーデイ・サービス』)を見て、曽我部(恵一)さんが〈技術とかじゃなくて熱い気持ちがあればそれだけでいいんだ〉と言ってたんです。それで〈そうだな!〉と思って、やる気が戻りました。昨日戻ったんです(笑)」
吉田「川本さん、意外と自信ないんですね」
川本「レコーディングを通して、なかなか思うようにいかなかったときもあったんですよ」
吉田「今回のアルバムのレコーディングで?」
川本「そうです。歌ってみてキーが高すぎて歌えなかったり、何時間も歌ってると声が出なくなっちゃったり。それで〈あ〜!〉って思うことが多くて。それでもどうにかスケジュールの中で終わらせなきゃいけないので、のど飴を舐めて頑張るとか工夫して焦りながらやりました。そういうことが続いたのでアルバム制作が終わったとき〈あ〜、歌って大変だな〜……〉って」
吉田「ソニー時代は、めちゃくちゃ忙しくても歌は大丈夫だったんですか?」
川本「全然大丈夫だったんです。むしろ曲と詞を書くのがもう辛すぎて、大変すぎて。期日を守らなきゃいけなかったので、急いで書かなきゃいけなくて大変なんです。事務的な作業だったら寝ずにやれば済むと思うんですけど、アイデアを何時まで出せっていうのは難しいですよね」
吉田「しかも〈これぐらい売れるものを〉というハードルもあったわけですよね」
川本「そうそう。それが大変すぎて、歌うときは天国みたいな感じでした。やっと歌える〜!みたいな。こんな楽しい仕事なんてない、ぐらいの感じでしたね。曲と詞を作ることより歌うことが簡単すぎて、こんな楽しいことだったらやり続けたいなって」

テレビやラジオでの噛み合わない(?)トーク
吉田「そういう感じで歌番組とかにも出てたんでしょうね。これは2016年のインタビューでも聞いたんですけど、ボク、『HEY!HEY!HEY!』に出たときのダウンタウンと会話が噛み合ってない動画が好きで昨日もまた見ちゃって。あと爆笑問題と話が噛み合ってないTBSラジオ『日曜サンデー』も※」
川本「フフフ。噛み合ってなかったですか?」
吉田「噛み合ってなかったですよ! 太田(光)さんが明らかに困ってました!」
川本「え~、そうだったかな~?」
吉田「曲を作ってるときと比べたら、ああいうテレビやラジオ出演は楽しくやれてるんですか?」
川本「めっちゃ楽しいです!」
吉田「面白い会話ができてる、みたいな」
川本「いや、面白い会話ができてるとはまったく思ってなかったんですけど(笑)。テレビの現場は照明とか音響さんとかいろんな人がいっぱいいて、見たことない知らない世界だから楽しいですよ」
吉田「『日曜サンデー』でのトークは噛み合ってるって感覚だったんですか? 太田さんが川本さんのことをデビュー当時から大好きだったと言ってましたけど」
川本「そうですね。すごくいいバイブレーションだった気が……(笑)」
吉田「ダハハハ! ポジティブ(笑)」
川本「えっ、違います?」
吉田「違いましたよ(笑)!」
川本「え~?」
吉田「かなり困り果ててましたよ」
川本「このままずっと一緒にやってける、ぐらいの感じでしたよ(笑)」
地元で感じる孤独
吉田「ソニー時代が大変だった話はよくされてますけど、孤独感や曲作りのプレッシャーが大きかったんですか?」
川本「孤独っていうか……でもそうですね。20代でいきなり一人で東京に来たら孤独ですよね。とはいえ、そこまで孤独って感じではなかったですよ」
吉田「そうですか? 新宿御苑で孤独を感じてたってエピソードがあるじゃないですか※」
川本「でもどっちかと言ったら、孤独だなって思ったのはソニーを辞めたあと、その先が何も決まってなくて、どうしようかな?ってなってたときです」
吉田「7年ぐらいレコーディングをしてたという※」
川本「そうです。家でずっと〈自分はどういう音楽をやっていこうか?〉って考えて毎日が過ぎてってました。あの時代は相談する人もいなくて、孤独だなって思ってましたね。あと最近、夜の7時ぐらいになると孤独だなって思いますけど」
吉田「それはまたどうして?」
川本「なりません?」
吉田「子どもの頃の原体験が関係してるとか? 加護亜依さんが〈夕方になるとさびしくなる〉と言ってて、その理由はシングルマザーのお母さんが夕方になると化粧をして夜の仕事に行くから、そのぐらいの時間になるといまも涙が出てくるって話でした」
川本「私はそういうわけじゃないんです。昼間って仕事したり、私はお昼ご飯が大好きなのでお昼ご飯食べたりで楽しめるんですけど、夜7時ぐらいには連絡系の仕事も終わりにして、どうしようかな?ってなる時間帯じゃないですか。そのときに孤独だなって思うんです。
東京ではそうじゃないんですよ。地元の福井に帰ってるときに思うんです。東京には友達がたくさんいるんですけど福井には友達がいなさすぎて、それでバンドを始めたんです」
吉田「そういうことだったんですね!」
川本「孤独感をどうにかしなきゃと思って。でも東京ってさびしくないんですよね」
吉田「みんな深夜まで起きてたりするし、一人じゃない感じがしますからね」
川本「例えば、こういうタワレコみたいなお店も遅くまでやってるじゃないですか。だから深夜でも一人でふらっと行ける場所が東京は多いんですよ。だけど田舎だとコメダ珈琲かスターバックスぐらいしかなくて」
恋の腹いせ
吉田「どうでもいいことを聞いてもいいですか? ある時期からTwitterで〈彼氏ができました〉とか〈別れました〉という赤裸々な報告をするようになったじゃないですか」
川本「めっちゃプライベートですね(笑)」
吉田「あれはまたどうして?っていう(笑)」
川本「あれは私が若干発狂気味になってたときだったので……(笑)」
吉田「そういうことなんですね(笑)」
川本「はい。書かないでいいことを書いてたっていう。あれってニュースになってました?」
吉田「いや、知らないです。〈川本真琴に新恋人が!〉みたいな?」
川本「(観客に)ニュースになってなかった? 知らないか。……みんな何とも言えない顔になってる(笑)」
吉田「ダハハハ!」
川本「あれは……恋沙汰です!」
吉田「フフフ。で、そろそろお時間みたいですね」
川本「あれ? めっちゃ早い!」
吉田「もうちょっと話しますか?」
川本「何にも話してない!」
吉田「もうちょっと新譜の話もしておきますか(笑)」
川本「ちょっと待って! まだ枕の部分っていうか、何にも話してなくてヤバくないですか? ソニー時代の話も全然してない(笑)」
吉田「それなりに当時の話はちょこちょこ差し挟みはしましたけど。今回アナログボックスが出ましたが、ご自身の過去の作品が常に振り返られて評価され続けてることに関してはどういう思いがあるんですか? 川本さんの音楽ってずっと根強く評価をされ続けてるわけじゃないですか」
川本「いや〜、ありがたい限りですね」
吉田「それって自分のことで考えるとどういうことなのかな?って考えるんですよ。自分の昔の作品が文庫になって新たな収入がある、みたいなレベルの話でもないだろうし」
川本「吉田さんって本を出されてるんでしたっけ?」
吉田「いろいろ出してます(笑)」
川本「その中で〈これはすごい評価された〉っていう一冊はあるんですか?」
吉田「ありますね」
川本「あるんですね。それを〈いまもこれはいい、最高だ〉って言ってもらえてる感じですね」
吉田「なるほど。嬉しいけど、それだけじゃないんだよな〜って気持ちがあるってことですかねか?」
川本「それはありますね。でも、楽しんでもらえてるのはいいことですから。やっぱり、いまの私の音楽も聴いてほしいなって思いはあります。そういうのって吉田さん、どうですか? 吉田さんはいまも文章を書いてらっしゃいますよね?」
吉田「もちろん(笑)。いろいろ書いてますよ!」
川本「やっぱ新作を褒めてほしいですか?」
吉田「新作を褒められると嬉しいですよね。よく言うんですけど、ボクの仕事だと無料で読めるメディアに発表したものの反響がすごくデカいんです。ネットとかラジオとか無料で見れる配信とかだと感想がものすごくたくさん来るんですけど、有料の雑誌の記事だと途端に反響が少なくなる。なので、そういうものをいまもわざわざ買って読んでくれてる人がいると嬉しいですよね」
川本「なるほどー。でも、それはしょうがないかもしれないですね」
吉田「そうなんですよ。出版不況とかも全部重なってることなので。10年ぐらい前の自分のツイートを見返すと、週刊誌でやった仕事でも反響がすごく大きかったんです。でも、いまは単純に人が雑誌を読まなくなってるなって」
川本「音楽雑誌ですか? どういう雑誌?」
吉田「音楽雑誌はそんなにやってないんです。いま書いてるのは『BUBKA』とかですね」
川本「結構あれですね、文芸系の……」
吉田「ダハハハ! 『BUBKA』は文芸誌ではないですよ(笑)!」
川本「あっ、違うんですか!?」
吉田「『BUBKA』はかつてスキャンダル雑誌で、いまはアイドル雑誌に近いですね。そして、さっきからずっと〈お時間です〉って指示がスタッフから出てます(笑)」
川本「あれっ? もう時間? こうやって何回もお会いして人となりを知って、身近にお話を聞いてる吉田さんの文章だと、知らない人の文章を雑誌で読むような一般的な感覚では読めない気がします」
吉田「……えっと、これが締めでいいんですか?」
川本「えっ? 締め(笑)? ちょっと待って〜! 何も話せてない気がする! あの、さっきの恋愛の話で……」
吉田「その話、まだいきます!?」
川本「アハハハ!」
吉田「聞きますよ! どうぞ!」
川本「あれは好きな人がいて、その人とうまくいくと思ったんだけど、うまくいかなかったんです。それで私、めっちゃ腹が立って、もうダメだ!ってなってた3日後ぐらいに前から仲のよかった人が現れて、その人と付き合うことになったんですよ。それで腹いせに書いたんです。アハハハ!」
吉田「ダハハハ! なるほど! もう私は新たな楽しみを見つけたぞって言いたかったと」
川本「そう……(笑いすぎて話せなくなる)」
吉田「謎が解けました!」
川本「そういうことです(笑)!」
RELEASE INFORMATION
■CD
リリース日:2023年7月19日(水)
品番:MYRD154
価格:3,300円(税込)
スリップケース仕様
TRACKLIST
1. アロエ
2. April locking down
3. 風を待ってる湖
4. GEDATSU in love
5. universe
6. カートコバーンと両想いになりたいガール
7. 街の本屋さん
8. 転校生になれたら
9. ワールドエンド・ガールフレンド
10. MOTHER

■LP(完全限定プレス盤)
リリース日:2023年8月23日(水)
品番:MYRD155
価格:4,323円(税込)
TRACKLIST
Side A
1. アロエ
2. April locking down
3. 風を待ってる湖
4. GEDATSU in love
5. universe
Side B
1. カートコバーンと両想いになりたいガール
2. 街の本屋さん
3. 転校生になれたら
4. ワールドエンド・ガールフレンド
5. MOTHER

■カセットテープ
リリース日:2023年8月23日(水)
品番:MYRD156
価格:2,585円(税込)
TRACKLIST
Side A
1. アロエ
2. April locking down
3. 風を待ってる湖
4. GEDATSU in love
5. universe
Side B
1. カートコバーンと両想いになりたいガール
2. 街の本屋さん
3. 転校生になれたら
4. ワールドエンド・ガールフレンド
5. MOTHER
■配信
リリース日:2023年9月20日
配信リンク:https://diskunion.lnk.to/myrd154full
■Musician Credit
Vocal & chorus:Makoto Kawamoto 川本真琴
Drums, harmonium, xylophone & toy-piano:Markus Acher マークス・アーハー
Banjo:Alex Haas アレックス・ハース
Viola:Evi Keglmaier エフィ・ケーグルマイヤー
Trombone:Mathias Götz マティアス・ゲッツ
Sousaphone:Micha Acher ミヒャ・アーハー
Electric guitar:Ueno Takashi 植野隆司
写真:佐内正史
リリース日:2023年6月21日(水)
品番:MYRD153
フォーマット:7inch/先行配信
価格:2,200円(税込)
配信リンク:https://diskunion.lnk.to/myrd153
TRACKLIST
Side A: universe
Side B: Savannah
■“universe”
Vocal:Makoto Kawamoto 川本真琴
Drums:Markus Acher マークス・アーハー
Banjo:Alex Haas アレックス・ハース
Viola:Evi Keglmaier エフィ・ケーグルマイヤー
Trombone:Mathias Götz マティアス・ゲッツ
Sousaphone:Micha Acher ミヒャ・アーハー
Electric guitar:Takashi Ueno 植野隆司
Recorded & mixed at In our house Studio, in Munich
Feb 2023, by Nicolas Sierig ニコラス・ジーリグ
Vocal Recorded at Tsubame Studio, Tokyo, by Yui Kimijima 君島結
■“Savannah”
川本真琴:vocal, guitar
Recorded in 2012
写真:西原伸也
リリース日:2023年6月21日(水)
品番:MHKL-71~79
仕様:7インチレコード × 6枚+10インチレコード × 3枚
価格:18,000円(税込)
完全生産限定盤/数量限定
TRACKLIST
Disc 1 “愛の才能”“早退”
Disc 2 “DNA”“LOVE & LUNA”
Disc 3 “1/2”“1”
Disc 4 “桜”“ドーナッツのリング”
Disc 5 “ピカピカ”“ハート”
Disc 6 “微熱”“月の缶”
Disc 7 “FRAGILE”“トラブルバス”
Disc 8 “ギミーシェルター (alternative single version)”“Re-FRAGILE (remixed by Stan Katayama)”“ギミーシェルター (remixed by ∈Y∋)”
Disc 9 “ブロッサム”“ALPHABET WEEKS”“OCTOPUS THEATER (STAN’S LONELY HEARTS HAMMOCK VERSION)”
PROFILE: 川本真琴
96年、ソニーよりシングル“愛の才能”でメジャーデビュー。2000年代初めよりプライベートオフィスを設立しメジャー/インディーにとらわれない活動を続けている。2019年には9年ぶり、4作目となるオリジナルフルアルバム『新しい友達』をリリース。






