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映画作家・勝新太郎が追求したリアル

 待望の初DVD化である。本作は、近年、幾つかのテレビのバラエティ番組で〈笑い〉と〈畏怖〉をもって取り上げられ話題にもなったので、ご存知の方も多いかもしれない。製作・(一部を除き)監督・主演が勝新太郎。脚本はない。ひたすらリアルを追求する。出演者たちは、その場の勝の指示で演じる。または、指示すら出されず、ぶっつけ本番のアドリブでその場に対応していく。刑事同士のセリフは小声で、アフレコを使わず同録で撮られているため、多くのセリフが視聴者には聞き取れない。説明を嫌うショットの連続がさらに話の分かり辛さに拍車をかける。テレビの〈分かりやすさ〉から最も遠い場所で作られた本作の視聴率は回を重ねるごとにどんどん下がっていき、1クール(13話)で終了となってしまう。普通にこの話を聞けば、ワンマンの独りよがりとして終わってしまうだろう。しかし、そこは映画作家・勝新太郎なのである。映画監督として近年再評価の兆しをみせているが、中でも最も先鋭的であるのが本作だろう。実際、石橋蓮司や緒形拳、原田美枝子、小池朝雄、川谷拓三といった名優たちの顔は、テレビドラマはおろか映画でも見たことがないものだ。あわせて、森田富士郎の即興的なカメラの画の新鮮さ。こんな映画、否、ドラマ見たことない、とだけはひとまず断言していい。

勝新太郎 『警視-K DVD-BOX』 ピカンテサーカス(2014)

 実際、勝新の考えるリアルに対する追求が、どこまで方法論として有効か?という問いは残る。だが、そのような方法論すら吹き飛ばす作品の凄みこそ勝新であるのも事実である。だから、例えば勝新の娘役で本当の娘・奥村真粧美が出演し、別れた妻役で中村玉緒が出演するというリアルさを、どう扱っていいのか困ってしまうのもまた勝新であるということである。〈勝新〉の前では〈傑作〉という評価など取るに足りぬものでしかないという現実。世界は残酷で面白い。

 最後にニュース! DVD化に際し、なんと〈日本語台詞字幕〉が入るという! ……笑ってもいい。それが勝新という唯一無二の存在なのだ! 完璧!