デビュー50周年を記念したこのアルバムは、ロジャー・ウォーターズニック・ケイヴが楽曲を提供/共作し、ゲストにブライアン・イーノポーティスヘッドエイドリアンらを迎えた、豪華メンツによる濃密なモニュメント。それにしても半世紀をロックに捧げた主役の存在感が凄まじい。ハスキーどころでは済まされないヤサグレ魔女の如きヴォーカルは、瞬時に聴き手の脳髄を痺れさせる禁断の呪法のように蟲惑的だ。

 

シンプルに力溢れる音楽というのか、キャリア50年にして積み上げた風格なのだろうか、ただ聴き惚れるばかりだ。何も変らないとも言えるし、50年を経た歌声に今の彼女の声の新しさを感じることも、できるだろう。イギリスの美輪明宏、といってもこちらはロックだが、マリアンヌ・フェイスフルの新譜がリリースされた。ロジャー・ウォーターズニック・ケイヴらが新曲を提供し、いつもと少し違ったリキミ具合が新鮮だが、大男を泣かせてしまう慈愛に満ちた歌声に変らぬ彼女の、そしてロックという音楽の太さを感じる素晴らしい仕上がり。いつか日本の青空の下で彼女の音楽に膝間づいてみたい。