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菅野よう子マジック、ここにあり! キャリアと名品の数々を振り返る

 80年代にバンド〈てつ100%〉のキーボーディストとしてメジャー・デビュー、89年に解散して以降は主にCMソング/広告音楽の分野で職業作家として活動していた菅野よう子。その名前が広く知られるようになったのは、間違いなくアニメ音楽における活躍がきっかけだ。「カウボーイビバップ」以降であれば、「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズでの4つ打ちを積極的に取り入れたサイバー・パンクなサウンド、「マクロスF」(2008年)に登場する銀河の歌姫たちに書き贈った名曲の数々は必聴。また、渡辺監督とふたたび手を組んだ「坂道のアポロン」(2012年)では、類家心平(トランペット)や石若駿(ドラムス)らを迎え、ジャズの演奏を通じて心を通わせ合う高校生たちの物語を彩った。

 アーティストへの楽曲提供/プロデュース業も90年代から行っており、今井美樹の95年作『Love of My Life』では、布袋寅泰と半分ずつ分け合う形でサウンド・プロデュースを担当。また、溝口肇と共同で劇伴を手掛けたアニメ「天空のエスカフローネ」(96年)の主役に抜擢された声優・坂本真綾の音楽活動をプロデュース。同アニメのオープニング曲“約束はいらない”から傑作として名高い2003年のアルバム『少年アリス』までの全作品を手掛けた。Crystal Kayのデビュー曲“Eternal Memories”(99年)も菅野の仕事だ(もともとはCMソングだった)。

 近年は東日本大震災のチャリティー・ソング“花は咲く”(2012年)や、連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年)、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017年)といった実写作品の仕事が目立っていたが、2023年、Adoが歌うTVアニメ「SPY×FAMILY Season 2」のオープニング・テーマ“クラクラ”を、菅野よう子×SEATBELTS名義で編曲(作詞・作曲はmeiyo)。エネルギッシュなブラス・サウンドは「カウボーイビバップ」からの流れを汲むものなので、ぜひ併せてチェックしてほしい。 *北野 創

菅野よう子による2011年のサントラ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+」(FlyingDog)、2008年の編集盤『マクロスF VOCAL COLLECTION 娘たま♀1』(FlyingDog)、菅野よう子による2012年のサントラ『坂道のアポロン』(エピック) 、坂本真綾の2003年作『少年アリス』(FlyingDog)、菅野よう子による2017年のサントラ「NHK大河ドラマ おんな城主 直虎 音楽虎の巻」(ソニー)