
〈マイケル・ジャクソンの妹〉という冠を脱ぎ捨て、80年代後半から90年代にかけてR&Bシーンを席巻し、黄金期を築いた才能がヴァージンと契約した5作目で、今年デラックス版で再発された。ジャム&ルイスとの前作『Rhythm Nation 1814』(89年)での力強いダンス路線やニュージャックスウィングへの取り組みを引き継ぎながら、90年代的洗練とスムーズさ、艶めかしくセクシーな表現を前面に押し出している。ヒットナンバー“That’s The Way Love Goes”を収録。同年には映画への初出演作にして2パックとの共演作「ポエティック・ジャスティス/愛するということ」も公開された。

銀杏BOYZの峯田和伸など、国内にファンが多いパワーポップバンドの2作目にして最終作。“Joining A Fan Club”や“New Mistake”を聴けばわかるとおり、ビートルズ(特にポール・マッカートニー)、ビーチ・ボーイズ、クイーンなどの遺産を受け継ぎ、これでもかと趣向を凝らしたロックオーケストラ的なアンサンブルとコーラスワークで魅せる。めくるめくジェリーフィッシュ流のパワーポップ世界には、圧倒されるばかり。ちなみに名プロデューサー、ジョン・ブライオンがギターでさりげなく参加。邦題は『こぼれたミルクに泣かないで』。

ケイシー、ジョジョ、ミスター・ダルヴィン、ディヴァンテ・スウィングからなる、90年代のR&Bを代表するカルテット。彼らのセカンドアルバムは、前作『Forever My Lady』(91年)での成功の勢いを駆った傑作。シルキーでセンシュアス、伸びやかかつディープな4声の重なり合いがひたすら心地よく陶酔的で、特にヒット曲“Cry For You”“Feenin’”などのミドルで映える。自ら曲を書きプロデュースしている点も重要だが、注目すべきはティンバランドとミッシー・エリオットの参加。2人の最初期の仕事だ。2022年に拡大版がリリースされた。

再評価著しいというか、今こそ聴くべき〈女のロック〉の傑作。ローリング・ストーンズの名盤をもじったタイトル(〈男村の流浪人〉)も痛快だが、ローファイでスカスカで粗野なロックアンサンブルに乗せて、女性主導のセックスや性欲を露骨に歌った歌詞が何よりも重要。PJハーヴェイと並んで〈オルタナクイーン〉とも呼ばれたが、彼女のぶっきらぼうな歌は女性の解放の歌でもあった。まずは“Never Said”や“Fuck And Run”を聴いてほしい。

不世出のシンガーが、3作目にして世界的な成功をものにした名作。超ハイトーンボイスとパワフルな中音域の歌唱の交差にぶっとばされる全米ナンバーワンヒット“Dreamlover”で、アルバムは開幕。続く“Hero”も大ヒット曲だが、こちらは名曲“Without You”と同様にマライアらしい見事なバラード。ちなみにハチロクのスロウジャム“Never Forget You”は、ベイビーフェイスが手がけている。30周年版のCDやレコードが2024年にリリースされることがアナウンスされたばかり。

カート・コバーンが共同プロデューサーを務めた、スラッジ/ドゥームメタルとグランジの結節点のような傑作。バズ・オズボーンの憎々しく絞り出すような歌、3人がのたうち回るような暗く重い演奏、暴力的に乾いた刺々しい音像、悪意に満ちたジャケットと、どれを取っても強烈極まりない。キッスの“Goin’ Blind”のカバーすら彼らの色に染め上げられており、まるでブラック・サバスの演奏のように聞こえる。来日公演の開催が控えており、現役にして多作家のベテランバンドに再び注目が集まっている。