
セッションで練り上げた曲たち
――今回、デモテープ的なものって作ったんですか?
玉置「作りましたけど、まともに作ったのは多分半分ぐらいで。残りはスタジオでみんなと構成を練った感じですね」
竹田「デモといっても、完成しきってないワンフレーズだけが送られてきたりとか、そういう感じでしたね。今までそういうのってあまりなかったんじゃないかな? 昔は全部のパートを作って送られてきたような。今回は、スタジオで試すみたいなのが多かったです」
――うん、スタジオで演奏しているところが目に浮かびますね。“うれいらずたのぼー”なんて、曲が終わったあとも延々とセッションしていそうな雰囲気がある。10分も20分もやっていそうな。
玉置「嬉しいですね、本当に。確かに、あの曲は唯一スタジオでゼロから作ってイチにした曲なので。実際、セッションで始まった曲なんですよね」
柳澤「ライブ、あの曲だけ1時間やろうよ(笑)」
玉置「いいね(笑)」

分業ではなく4人の演奏の絡み合いを目指して
――玉置さんから見た3人のプレイヤーとしての個性とか魅力ってどんなところでしょうか?
玉置「まず竹田は無骨なベースを弾く人。そういうところが好きでバンドに誘ったんです。好きな音楽もレッド・ツェッペリンとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかで、その情報が最初にドカーン、ガツーンときて(笑)。で、その割に結構器用なベースを今まで弾いていたんです。でも、今回はルート弾きも多いし、ベースが動くっていうよりは下で支えるみたいな感じになったと思っていますね」
竹田「ベース、今までのアルバムでいちばん簡単だった」
玉置「その、簡単って言っちゃうと……」
竹田「いや、簡単だから難しいんだよ。すごくシンプルだから、それはまた違う難しさがあって。フレーズだけの難易度で言ったら、そこまでではないけど」
――シンプルなぶん、ごまかしがきかないということですよね。剥き出しのものが出てしまう。ギターの加藤さんの個性については?
玉置「(加藤)成順は、これはもうみんな言っていることなんですけど、音のセンスが秀でていると思っていました。そのセンスにある意味頼り切ってきたというか。こっちはデモ上で音を作って、あとは彼が曲が良くなるように、帯域を含めてサウンドの調整みたいなことをやってくれていて」
――玉置さんと加藤さんはMIZというアコースティックユニットも組まれていますが、その活動が新作に還元されているところもある?
玉置「ありますね。MIZの録音の方がセンシティブといえばセンシティブで、いい音で録らないといい音源にならない。そこらへんはかなりシビアで、鍛えられたところはあると思います。今までの録音では、よくわからないつまみをいじっているみたいな感覚だったのが、もうちょい高音域がほしいんだという風に言葉で説明をできるようになってきたし」
加藤成順「まあだから、(MIZをやることで)軸ができて良かったよね。〈ギターの音を近くしたい〉とか〈明るくしたい〉ってなった時に、お互いやるべきことを確認していくうちに、答えが見えてくることがめちゃくちゃ多くなったし。何をしているか、すべきかっていうのがお互い体感としてわかってきたのが良かったと思いますね。それはライブでも活きてくるんじゃないかと思います」
――確かに、ツインギターの絡みが今まで以上に有機的だと思いました。折り重なったり離れたり交差したり、ふたつのギターの走り方を聴いているだけでもすごく面白い。で、ドラムの柳澤さんは引き出しが多くて、平面的になりがちなところをすごく立体的に見せるというか。
加藤「確かに!」
柳澤「お墨付き」

――じゃあ、柳澤さんの個性については僕から言わせてもらってもいいですか(笑)? 今回、Aメロが8ビートを叩いているからBメロもそういくだろうと思うと、フィルとかロールが入ってきたりして、ぱーっと景色が開ける感じがありますよね。
柳澤「元々そういうのが好きっていうのもありますね。例えば、はっぴいえんどの“暗闇坂むささび変化”っていう曲の松本隆さんのドラム。タムのフィルがダダダダっと入ることで、煙幕がまかれてむささびが忍術で変化するみたいな景色が見える。そういうのが好きですね。他に好きなドラマーだと、ポリスのスチュワート・コープランド。色々な音楽が混ざったドラムを叩くのがいいなって」
――彼はレゲエの裏打ちと8ビートを1曲の中で行ったり来たりしていますもんね。
柳澤「ああいうのは面白いですよね。憧れに近いですけど」
玉置「さっきおっしゃっていたギターの有機的な絡みが増えたっていうのは、すごく意識していたことで。要は、バッキングギターとリードギター、ベース、ドラムって綺麗に4つに分かれていると、もう音楽それ自体が分業の象徴になってしまうなと思って。もうちょっと各楽器がやっていることが、リズム的にもメロディ的にも絡み合うものでありたいっていう意志が今回は強かったんです。
今まではそれをベースだったりギターだったりをめちゃくちゃ動かしてやろうとしていて。でも、そうするとアイデアはいっぱい出るけどうるさくなっちゃう。竹田は竹田でレコーディングで疲弊しちゃったりしたし。バンドに誘った時は、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTみたいな、ダウンピッキングでずっと下向きながら弾いている感じだったのが、全然違ってきてしまった。
そこをもう少しフラットにして、それぞれのメンバーが得意なというか、ふさわしいプレイに落ち着きたいという空気を感じていて。それが今までといちばん違うのかなって今思ったんです。今回すごく早かったんですよ、レコーディングが終わるの。ベースのテイク数も少ないし」