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ムーンチャイルドのアンバー・ナヴランが豪華メンバーを迎えた新ユニット! 『Catpack』

 LAのフューチャー・ソウル、ビヨンド・ジャズ・シーンにおいて年々確固たる地位を築き、ロバート・グラスパーはじめ著名ミュージシャン達から絶大な支持を受けるユニット〈ムーンチャイルド〉。そのヴォーカリストであるアンバー・ナヴランが、新たなユニットを結成し新譜をリリースするというニュースが飛び込んできた。気になるのはそこにジョインするメンバーだが、それもまたLAミュージック・シーンにおいてその動向が常に注目される重要人物2名である。

 1人はジェイコブ・マン。彼名義のビッグバンド〈ジェイコブ・マン・ビッグ・バンド〉を主宰し、KNOWERのサポートやそのベーシストでもあるサム・ウィルクスとの共作アルバムをリリースするなど、LAで引っ張りだこの作編曲&ピアニストである。

 そしてもう1人。ドクター・ドレー、レイラ・ハサウェイらの作品に参加し、プロデューサーとしてジャスティン・ビーバーの『Changes』にてグラミー賞ノミネートも果たしたフィル・ボードロー。なんとも豪華な顔ぶれだ。

CATPACK 『Catpack』 Tru Thoughts(2024)

 この作品を作るきっかけは数年前のコロナ禍に遡る。それぞれが自宅で過ごしていたときに、アンバーがジェイコブに共作を申し出たことに端を発する。Eメールで音源を交換しながら作曲を続ける中で、その輪はフィルにも広がり、コロナ明けには3人で集まり楽曲制作が加速したらしい。

 ループを中心にグルーヴするこの手のサウンドはとかくクール一辺倒になりがちだが、一聴してわかるアンバーのシルキーな声、上質なソウル・R&Bマナーを持ち合わせるフィルの歌唱、そして3人それぞれが息を吹き込む管楽器奏者であることがこのユニットに体温を与えている。

 コードやコーラス・ワークはかなり高度であり複雑だが、無駄を極力削いだリズム・トラックやゲーム的なパッド・サウンド、バンド名の由来ともなった猫の鳴き声を模したシンセ・サウンドなどがとてもキュートでポップ。その音楽には実験性や遊び心に満ち溢れている。そしてほとんどの曲が2~3分とコンパクトで冗長さは一切ない。アルバム1枚をサラッと聴けてしまうが、聴けば聴くほどその造詣の深さとアーティスト同士の有機的なやり取りが目に浮かんでくる。テクノロジーを消化した現代のジャズやソウルの質感を持ちつつ、その肌触りは涼風のように心地よい。ある意味、〈人力とデジタルがもっとも近い距離で共存しているサウンド〉と言えるかもしれない。