NakamuraEmi & MASSAN × BASHIRYのエネルギーに触発されて
――今年3月には〈XinU presents Collective〉という自主企画のプチフェスもありました。あれはどういったところから?
「リリースタイミングとかではないけど、何か面白いライブをやりたいなって思ったときに、自分の好きな人たちをお招きして一緒に何かやれたらリスナーさん含めて輪が広がるんじゃないかって話をして。広い意味でのミュージックコレクティブというか、カルチャーみたなものになるといいなと思って始めました。それですぐに〈じゃあ、誰呼ぶ?〉って話になって、私の好きな人をピックアップしたんです」
――ぷにぷに電機とHIMI、さらにはDJも2人いて。
「自分がナマで聴きたい人たちに出ていただいて、私のわがままを叶える日みたいになりました(笑)。外では私の衣装を担当してくれているスタイリストさんやよく行く古着屋さんにフリーマーケットをしてもらったり、知り合いのお店にワインや軽食の飲食ブースを出店してもらったり、大学時代を過ごした桐生のクラフトビール屋さんにも出店してもらったり、お店を全部で7店舗も出して。本当に楽しい1日でした。またやりたいし、みんなに〈出たい!〉って思ってもらえるものにジワジワとなっていったらいいですね」
――あとは最近だとNakamuraEmiさんのアルバム『KICKS』(2024年)に1曲参加していましたよね。“Hello Hello”。あれはどういった経緯で?
「1月にEmiさんとMASSAN × BASHIRYさんがクラブチッタで〈迎春〉というライブをやっているんですけど、今年はそこにもう1組誰か入れようってことになったらしくて。私がMASSAN × BASHIRYさんと何度かライブをやったことがあったので、〈XinUがいいんじゃない?〉と名前を挙げてくださったようなんです。EmiさんはEmiさんで、インスタで私の弾き語り動画を偶然見てフォローしてくださっていたみたいで。
それでEmiさんチームとMASSAN × BASHIRYさんが途中まで作っていた曲のブリッジをつける際、その部分の作詞作曲をやってほしいと声をかけてくださったんです。その曲はライブで披露するために作ったものなんですけど、ライブでやったあと、XinU入りのバージョンでレコーディングしようって話になったらしくて」
――自分以外の誰かのレコーディングに参加するというのは……。
「初めてでした。いつもは松下さんのスタジオに行って納得いくまで思う存分歌うわけですけど、そうやってほかのスタジオに出向くこと自体が初めてだったし。しかもEmiさんとMASSAN × BASHIRYさんはライブみたいな録り方をするんですよ。3回くらい通して歌って、アドリブのところは〈せーの〉でやって、〈OK! よかったね!〉なんて感じでサクサク進むんです。もう、そのエネルギーがすごくて。何度もやり直したりしないで、一回でキメにいく。だから私も〈やってやる!〉みたいな感じで臨んで、ライブで歌っているときの自分を思い出しながら歌いました。みんなのエネルギーに触発されて、いつもは出ないような声が出た」
一緒に揺れよう
――では、ニューEP『XinU EP #03』の話をしましょう。フルアルバムをリリースしたあと、けっこう早くから準備にとりかかっていたんですよね。
「はい。ロンドンから帰ってきたくらいから本格的に作り始めました」
――作り始める段階で、ある程度のイメージはあったんですか?
「ライブもいっぱいやって楽しくなってきてたし、ロンドンのバーやパブでみんなが自由に楽しんで踊ったりしているのを目の当たりにしたこともあって、今度のEPはみんなと楽しさを共有できるものにしたいと思っていたんです。シリアスに内面を伝えるのではなく、単純に楽しんだり揺れたりできる曲も書いてみようと。それが出発点でした。ちょっとダンサブルな曲も入れたいな、と」
――聴いた印象として、前の2作のEPよりも明るいなと思いました。曇りの日や夜に聴くより、夏のよく晴れた日に聴くのに向いていそうな曲が多い。
「そうですね。明るいとか、前向きとか、そういうことを意識してのスタートでした」
――ロンドンで数曲のアイデアを固めたと話していましたが、そうやって普段と環境を変えながらの制作だったことが明るさに繋がったところもあったのでは?
「それはありますね。冬には松下さんと庄司さん(庄司陽太。ギタリスト)と3人で、相模湖で作曲合宿みたいなこともやったんですよ。2日間スタジオを借りることができて、そこでも何曲かのアイデアを固めました。緑が見えて開放的だし、SNSとかも一旦止めて音楽に集中して。3人でゴハン食べて、また曲を作って、みたいな。環境を変えるのも大事ですね。“触れる唇”はそこでできた曲なんです」
――ズバリ、このEPのテーマは?
「さっき言ったみたいに、みんなで楽しんだり揺れたりできる曲を書いてみようというのが自分のなかのテーマでした。〈一緒に踊ろう〉とまではいかなくても、一緒に揺れることができたらいいなと。だからツアーのコンセプトも〈一緒に揺れよう〉になったんです」
――〈揺れる〉というワードが好きですよね。
「確かに。いろんな曲の歌詞に出てくる(笑)。踊れないので、せめて揺れたいという気持ちの表れなんでしょうね」
いいムードを作ってくれるedblのプロデュース
――ここから1曲ずつ聞いていきますね。まず“いつか消えても”。これって昨年11月のWWW公演で初披露した曲ですよね。
「そうです」
――edblとの共作曲で、ギターとプログラミングとプロデュースも彼が担当しています。
「ロンドンで会ったときに、〈こんな感じでどう?〉みたいに進めてくれて。〈じゃあ、試しに歌を録ってみようか〉ってなって、私が鼻歌でざっくり歌ったら、〈ナーイス!!〉とか言って(笑)。エドは進め方が上手いんですよ。〈僕たち、ナイスコンビネーションだね!〉とか言いながら、いいムードを作ってくれる。
その日は天気がよくて、古き良き建物の彼のお部屋も日当たりがよくて、気持ちのいい空気がそのままこの曲のサウンドに反映されたように思います」
――明るめの曲調だけど、歌詞は決して明るいだけではない。
「1番ではうまくいきそうなんだけど、2番でどんでん返しがあって切ない感じになるというのをやってみたくて。サウンドがひたすら気持ちいいから、歌詞も気持ちいいものにしようかとも思ったんですけど、やっぱりどうしても切ないところを入れたくなったんです」
――〈真夜中に揺れる天井に/秘密塗り重ねては〉といったところなど、ムードとしてほどよくセンシュアルでもある。
「“罠”もそうでしたけど、そういうムードを漂わせるのが好きなんだと自分で思います」