「結局は幸福な映画と不幸な映画があるのだと思うー幸福な出会いと不幸な出会いがあるように」と本は始まる。1968年5月という日付がジャン・リュック・ゴダールの映画と著者山田宏一の出会いを幸福な季節と不幸な季節に分けたと冒頭に記す。このゴダール映画にまつわる言説を集めたアンソロジーは、1959年の「勝手にしやがれ」から始まり1967年公開の「ウィークエンド」で不意に終わる。ゴダールの即興的な撮影、ジャンプカットという編集はあらゆる表現の時間、空間のイメージに影響を与えた。その受容と反発、作家の変容を映画史に辿るこの本はヌーベル・ヴァーグの季節を生きた著者の「ゴダールの映画史」ならぬ「ゴダールの映画誌」だ。