コラム

映画「アリア」ゴダールやデレク・ジャーマンら10人の名監督がオムニバス形式で描く〈映像時代のオペラ〉

©1987, 2008 Lightyear Entertainment, L. P. and Virgin Vision Ltd.

10人の名監督達が描くオペラのMTV―― 「アリア」(1987年)

 ゴダール、ニコラス・ローグ、ケン・ラッセル、デレク・ジャーマン等の10人の名監督達が、それぞれ一つのオペラの曲に基づく映像作品を撮った90分のオム二バス映画のリマスター版。ジョン・ハート、ティルダ・スウィントン、ブリジット・フォンダ等の名優が出演している。大部分はサイレント映画のようにセリフなしで音楽に合わせている。発表された80年代にはオペラのMTV作品と言われた。

『アリア』 シネマクガフィン(2020)

 特に印象的なのは、後半のいくつかの作品。フランク・ロッダムはデヴィッド・リンチやジム・ジャームッシュの撮影監督として有名だが、ここで見ることができるワグナーの「トリスタン」でもリンチの「ワイルド・アット・ハート」を思い起こす映像で、音楽に新しい解釈を与えている。ラッセルはチャイコフスキー、マーラー、ディリウス、リストの伝記映画で有名だ。音楽ファンだったら、きっと知っているだろう。それらの映画でも見られるイメージを期待通りの作品として提供している。ジャーマンのティルダ・スウィントンを中心とした映像も美しい。ゴダールのエロティックなリュリのバロック・オペラの解釈は古典的なオペラ・ファンにとって、〈うん?〉と思わせるかもしれない。しかし、21世紀では、このような演出がオペラ劇場で行っている時代となった。

 むしろ21世紀ヨーロッパのオペラ界では革新的な演出が多くなった。この作品が発表された1987年では、そうでもなかった。映画監督のベルトルッチは、自分の世代にとってはシネマが大学だったと語っていた 。シネマを通して人生や哲学のことを学んだ。世代が変わると共にオペラの演出も、こうした芸術的なシネマに影響されたものが多くなった。今では作品に新しい解釈を与えるものもあれば、やり過ぎと思わすのもある。近年見たものではワグナー、プッチーニ、ベルグの演出が面白い。ここで演出をしている監督の影響を感じさせるオペラも増えている。そう思いながら見ると、この作品の歴史的な重要さが伝わってくる。

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