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細井徳太郎
©️野村健太郎

生のトークやセッションをぶつけること、全部含めて〈映画〉と言いたい

――お2人の出会いは?

河合「私は七尾旅人さんの映像を12年ぐらい撮り続けているんですけど、七尾さんが〈徳ちゃんは素晴らしいよ〉と推していたのがきっかけです。

最初に観たライブはアルバム『魚_魚』のレコ発。渋谷WWWのステージの上に、徳ちゃんがこれまでに関わってきた、幅広いジャンルの10人以上のミュージシャンが勢揃いしていて、その人間としての〈徳〉に惹かれました。

ジャズ箱出身かつ、歌ものやインプロもできるマルチプレイヤーでありながら、心はパンク。そこも魅力だと思いました」

細井「僕は、七尾さんのバンドでも活躍されている瀬尾高志さんに『兵士A』を薦められて、そこで河合監督の名前を知りました」

――9月7日から開催されるイベントのうち、12日と13日にお2人がキュレーションしたパフォーマーの方が出演されますね。

河合「2023年の年末に新宿PIT INNで開催された大友良英さんの年末企画を細井徳太郎がキュレーションしているのを見て、ステージとか関係なく、物販スペースまで使って音を出していて、〈こういうことがやりたかったんだよ!〉と思って、〈イベントを一緒にやりたい〉とオファーしました」

細井「初めは僕が全体的に手掛けるということでオファーをいただきました。ライブの構想について話し合いを進めていく中で河合監督のアイデアやストーリーがたくさん溢れて出ていったので、〈これをどんどん形にして行こう〉という話が出て、2人でキュレーションすることになりました。その上で、演奏者の方を選んでいきました」

河合「〈この作品はライブ映像だけど、私はあえて映画と言いたい〉、そこから始まった企画なんです。それをやり遂げるためには、〈ライブ映画とはなんぞや〉と自問自答してきた私が、生のトークだったり、セッションだったりをぶつけることによって、全部含めて〈映画〉と言いたい、というコンセプトがあります。なので、今回の新宿K’s cinemaさんでの上映に限らず、全てイベント付きでやる予定です。

やっぱり私は〈生〉が一番好きなんです。ちゃんと会場に足を運んで、目撃する方が好きなのに、何故か自分がカメラを回している。で、その映像を観ると、絶対その瞬間の空気って映ってないんですよ。その自問自答を今回のこのプロジェクトでぶちまけてしまおう、と」

――なるほど。

河合「まず、9月12日は、女性視点の朗読をやります。映画は男性3人が絶叫している内容で、『平家物語』も、武将たちの争いの物語だと思われがちなんですが、時代に翻弄された女性たちの苦悩を描いた作品でもある。その上でパッと閃いたのが、青柳いづみという、私が人生で一番尊敬している俳優の視点の起用でした。青柳さんには、『平家物語』の女性人物の視点と、ZAZEN BOYSが戦争で苦しんだ1945年の人々のことを歌った楽曲“永遠少女”の歌詞を読んでもらいます。

山本達久は私、宮坂遼太郎は徳ちゃんがセレクトしました。2人には、事前に上映するライブ映像という平面のものに対して、ライブ自体が立体的なものであることを証明するために建物自体を鳴らしてもらいます」

細井「今回は、演出ありきでミュージシャンがついてくるのではなく、河合監督のストーリーがあった中で僕が〈これはどうかな〉と話をして、そこからもっと監督のアイデアが膨らんで違うストーリーが生まれて、また僕が〈この人を入れるのはどうかな〉と提案して……というラリーを繰り返して、キュレーションしていきました。

この日は〈映画館を鳴らす〉というテーマがあります。

『平家物語』や“永遠少女”で綴られた戦時下には、琵琶法師をはじめとする語らう者がいた。そういった人たちが何かを語っている時に、例えば家屋や寺社仏閣の中にいたとします。今にも武士が攻め入らんとする声や逃げる人々の足音、風の音、建物は戦火の音に包まれていく。聴衆はきっとそんな想像をしながら『平家物語』を傾聴したのだと思います。

そういった聴衆が想像したであろう音を音楽的に表現するために、宮坂さんはシアターに散りばめられたパーカッションを演奏し、山本さんはドラムを使わないで映画館を〈楽器として〉鳴らします。お客さん側の体験としても、立体的な物語を感じることができるようなライブになるんじゃないかな。

僕個人としては、諸々の風景であったりとか、事象としての大きいものであったりをエレキギターと朗読で作っていけたらと思っています」

河合「9月13日は、館内を完全暗転させて、平清盛が物の怪たちに祟られて絶命する場面を表現します。私はここ数年で一番魅了されているダンサーの小暮香帆さんに、清盛が戦に勝つために犠牲にした平家の亡霊役を演じてもらいます。お客さんには、小暮さんが踊っている瞬間の手の動きで生まれた風だったり、空気感だったり、異常な圧迫感を感じてもらいたい」

細井「玉川鈴さんは浪曲の三味線を弾く曲師、辻祐さんは普段は和太鼓を主に演奏していますがこの日は樽太鼓を演奏してくれます。亡霊を下ろすというか、どれだけ実際の演奏の中で引き出せるかということを考えた時に、やっぱり歴史があって、当時の音を再現できる和楽器を使って、観にきてくれる人によりリアルに体験してほしいなと思い、この2人を選びました。

映画自体は肉体的な作品ですが、この日は僕を含む全員がアンプラグドな演奏をして、同じ楽器を持ちながらも全然違うアプローチをしていけたらなという気持ちもあります」

河合「徳ちゃんには一つだけ、〈徳ちゃんの“エンガワ”をやりたい〉とリクエストしました。これは私が一番大好きな曲で、〈『平家物語』のあの世と現世の境界線を作れないかな〉と思った時に、〈この曲を、あの世に向かって歌ってほしいな〉とお願いしました」

細井「“エンガワ”は、亡くなった祖父母について歌った曲です。現世で起きて今も胸の中にある祖父母との思い出を、想いとして祖父母が暮らしていた風景に流し込みました。今生きている僕が彼岸にいる2人に向けて手紙を書くように、繋がっていてほしいと願いを込めるように作曲しました。

今回のコンセプトで、河合監督がこの曲を選んでくれたことは、僕にとっても嬉しいです」