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ヒップホップ、ラテンポップのアーティストに影響を与えた日本のアニメ/アニメ文化

だが、少なくとも現在、特に2020年代を迎えてからはそういったムードが薄れつつあるように感じる。その要因については、Crunchyroll(アニメ中心の米ストリーミングサービス)のような視聴手段の台頭や、パンデミックによる巣ごもり需要の増加などさまざまだが、ミーガンやリル・ウージー・ヴァートといったヒップホップシーンの先頭を走り、ジェンダー規範を解体してきたアーティストたちが積極的にアニメへの愛情を語り続け、ライフスタイルやファッション、作品などにその影響を反映し続けてきたことも大きく関係しているだろう。

また、日本のアニメ文化は、ラテンアメリカ圏においても大きな影響を与えている。1960年代から「鉄腕アトム」などのアニメがテレビで放送されていたメキシコはもちろん、1990年代後半から2000年代前半にかけて「新世紀エヴァンゲリオン」「カウボーイビバップ」「serial experiments lain」「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」といった作品を放送していたLocomotion(ラテンアメリカを中心としたケーブルチャンネル)などの影響によって、ラテンアメリカにおいてもアニメ文化がユースカルチャーとして浸透していった。

それは結果として、レゲトンなどのラテンアメリカをルーツとした音楽におけるアニメの影響や、アーティストの日本文化への関心を強めていった。「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の美術監督を務めた小倉宏昌によるイラストを自身のアルバム『DATA』のアートワークに採用したタイニー(Tainy)、アーティスト名に〈巫女〉を使ったヤング・ミコ(最新作『att.』には“tamagotchi”という曲も収録されている)、腕に「NARUTO」や「るろうに剣心」のタトゥーを入れているラウ・アレハンドロなど、特に最近はその影響をさまざまな形で見ることができる。ちなみに、彼らはまさに1990年代後半から2000年代に多感な時期を過ごした世代だ。

近年のメインストリームにおけるラテンポップの存在感の大きさを踏まえれば、こうした動きがヒップホップと同様に、音楽シーン全体のムードにも影響を与えていると考えても不思議ではない。

興味深いのは、“Mamushi”のMVの制作を担当したPUSH Japan(2020年創業、本社は2014年に上海にて創立)は、昨年のラウ・アレハンドロ“QUÉ RICO CH**NGAMOS”やロザリア“TUYA”といったレゲトンアーティストによる日本撮影のMVを制作してきた確かな実績を持っているということだ。ミーガン側もこれらのMVを参照していたであろうことはもちろん、こうしたクリエイティブ面での環境が整い始めているということ自体もまた、現在の状況を生んだ要因の一つであると考えることができる(そのほか、円安によって以前よりも気軽に日本へ渡航できるようになったことも大きい)。

このように、ヒップホップやラテンポップにおける自身のルーツとしての日本への愛情表現が、メインストリームの動きと重なり合ったことによって〈日本文化を表現に取り入れることがクールである〉という、ある種の共通認識のようなものが少しずつ音楽シーン全体に醸成されていったのではないだろうか。