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百々徹と試行錯誤して作った2作目『I Wish You Love』
――2枚目は2017年の『I Wish You Love』です。
「最初のアルバムのリリース後にいちど帰国し、英語の発音の重要さを思い知らされて学校に通い、講師としてのライセンスを取って教えたり、音楽学校のMI JAPAN大阪校で歌の講師を経験したりしました。その後、改めてニューヨークに拠点を移したときに作ったのが『I Wish You Love』です」
――プロデュースはピアニストの百々徹さんですね。
「最初にニューヨークにいたときに、現地の『よみタイム』という日本語メディアに〈世界に羽ばたく日本人〉として載せていただく機会があったのですが、そこに敦賀明子さんや百々さんも掲載されていたんです。それで百々さんに興味を持ってライブを観に行ったりして〈素敵なピアニストだな〉〈次にアルバムを作るときは百々さんにお願いしたいな〉と思っていたんですよね」
――それで10年後に改めて声をかけたという……。
「2014年にニューヨークに再び住み始めた際にFacebookで〈ご挨拶させていただきたいです〉とメッセージを送って、彼がボーカリストと一緒に出ているライブを観たら、“Love For Sale”などのアレンジがとても素晴らしかったんです。
それで後日、百々さんがミュージカルのお仕事でお忙しいなか合間を縫って話を聞いてもらって思いを伝え、音源も送って、彼も〈僕でよければ手伝います〉と言ってくださいました。試行錯誤して作り上げたのが『I Wish You Love』です」
――行動力の勝利ですね。
「当時はカーリン・アリソンに師事していて、彼女が〈アルバムのタイトルはどうするの?〉と気にかけてくれた際に思いついたのが〈I Wish You Love〉でした。カーリンはそのタイトルをすごく褒めてくれましたね。
2000年に初めてアメリカに来たときにぶつかったのが英語の発音という壁でした。そこで発音を個人レッスンで見てくださったフィービー・オガミという先生とはずっとご縁があって、百々さんとレコーディングしたときはわざわざニューヨークに来てくださったんです。本当にたくさんの方に力を貸していただきました」
――アルバムはディスクユニオンを通してのリリースです。
「はい。ご担当の方から〈プロモーションもしっかりやって売っていきましょう!〉と言われて全国ツアーを行い、台湾にも行き、ニューヨークでファイナルを迎えました。
そんな中、『スイングジャーナル』の編集長だった評論家の児山紀芳さんが気に入ってくださってラジオに呼んでくださったり、〈Ricoちゃんのスキャット、なかなか良いよ〉とか〈百々くんのピアノも大好きだから、ニューヨークに戻ったらよろしく伝えてね〉などと声をかけてくれました。児山さんが紹介してくださったおかげで、CDの売上もかなり上がったと思います。本当に感謝しかありません」
力強い演奏なのに歌いやすいアート・ヒラハラのピアノ
――そして本作の制作につながっていくわけですね。今回はアート・ヒラハラさんのプロデュースです。
「まだコロナ禍がやってくる前なのですが、リチャード・ボナの〈Bonafied〉というクラブでツアーファイナルを行ったときに、百々さんが都合により出られなくなってしまったことがあったんです。
アートさんのことは、知り合いのシンガー、エリカ・マツオさんと一緒に演奏しているのをよく聴いていて、とても素敵なピアノを弾く方だなと思っていたので、エリカさんを通じてダメもとでコンタクトしてみたんです。そうしたらラッキーにも空いていてOKをもらって。
それでやってみたら、本当に素晴らしかったんです。ダイナミックに出るところはしっかり出るんだけど、全然歌の邪魔にならないので非常に歌いやすいというか。それで次のアルバムはアートさんと一緒に作ろう!と決めました。
コロナ禍がやってきてしまって日本人が締め出され、私も帰国したり、時間が経ってしまいましたが、昨年からプロジェクトをスタートさせて、お互いにインターネットを通じて連絡を取り合い、彼がステイシー・ケントのバンドで来日したときにリハーサルを行ったりして、そして今年の2月にニューヨークに渡ってレコーディングを行いました」