メタラーにして本職ジャズピアニスト、西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、マイク・ポートノイの復帰が話題になっているドリーム・シアターのニューアルバム『Parasomnia』について。結成40周年を迎えたプログレメタルのベテラン、その魅力に西山さんならではの視点で迫ります。 *Mikiki編集部

凄い作品がきました。
ドリーム・シアターの新作、『Parasomnia』です。
結成40周年にして、ドラマー、マイク・ポートノイの復帰作。
2月7日に発売ということで、メタルファンの皆さんはもうチェック済みかと思いますが、私はこの記事を書くために少し前から聴かせてもらっていたにもかかわらず、何を書こうか思考がまとまらなくて全然書けませんでした。
正直、こんな作品の音楽解析や解説をするなんて野暮の極みで、どこで拍子が変わったとか、過去の何を踏まえているとか、別に要らないと思うんです。
技術も音楽も成熟しきっていて、しかもポートノイという巨大熱源も再合流して、いやもう、そういう話は飛び越えてしまっている。技術や音楽の枝葉末節はただの手段であって、そこを突っ込んで採取することにはあまり意味を見出せず、もっと大きなビジョンについて、また複雑なテクニックを習得した先に描き出すものについて、ずっと思考を巡らせていました。
〈人はなぜ、難しい音楽を好んで聴くのだろう〉と、そんなことも考えていました。
高校の頃、なぜあんなに夢中でドリーム・シアターを聴いたのだろうと考えると、少なくとも私は、〈今、めっちゃ難しいものを聴いてるんだぜ!〉という、青い虚栄心みたいなものも駆動していたことは間違いありません。
〈プログレメタル〉、なんだか言葉の響きが格好良いじゃないですか。他の同級生とは違うんだぜって。普通の曲のように、コーラスを1番2番と繰り返さず、どんどん違う展開になる。イントロが異様に長い。それが格好良いんだぜって。
そして、調子に乗って本物のプログレに手を出し、キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』やイエスの『危機』なんかを聴くと、ガサガサしすぎて、なんだこれ?と、聴けなかったんですよ。何故そこでその時ラッシュを聴かなかったのか、ラッシュを聴いていたら人生が変わっていたかも!?
(マイク・ポートノイから辿るべきは、影響を受けたと公言しているカナダのプログレッシブロックバンド、ラッシュ。)
それはさておき、プログレクラシックを聴いて、〈私が好きだったのは、音楽の展開の難しさより重量感だったのかも〉とまたドリーム・シアターに戻り、その後、リキッド・テンション・エクスペリメントを聴き始めるんです。うーん、青春。
世の中には、〈難しい音楽が好き〉という人が、一定数いますね。
難しければ難しい方がいい。
音数が多いとか、滅茶苦茶速いというのとは、また違うんです。
拍子や調性が次々変わるのが良くて、ギミックが多いことにエクスタシーを感じる人たち。
私もそういう難しい音楽に振り回されたい人間の一人でもありますが、最近思うのは、ギミックが多いから好きなのではなくて、サスペンスが持続するから良いのだと、未知の音楽が次々やってくるぞ!という期待が持続するから、難しい音楽を聴きたいのかもしれない。
ギミックそのものではなくて、サスペンスと期待という、アドレナリン中毒なんですね。
ドリーム・シアターの音楽は、常に新しいパートに進み動いていくので、その音楽は〈常に途中〉であり、サスペンスの持続が強力です。
プログレだって、常に新しいパートに進み動いていくじゃないかと思いますが、ドリーム・シアターは何が違うのかと考えると、全然違うカットに進むわけではない、ということではないかと思います。
高校の頃に読んだインタビュー記事で、「違うアイデアを貼り合わせてみたりする」と言っているのを読んだ記憶がありますが、今、かつての名作『Images And Words』や『Awake』を聴いても、そこまで全く違うものが突然割り込んでくるような印象は持ちません。
次のカットはある程度予想できる展開なのですが、違うテクニックで次の景色を提示するということが多く、物語の流れはとても自然で、大きく広い一本道だと感じます。
紙芝居で言うと、「桃太郎」の紙芝居に、突然「猿蟹合戦」が割り込んでくるような、大きな飛躍をしているわけではない。ドリーム・シアターの音楽は、紙芝居の枚数を経るほどに、絵の書き込みが増え、トンデモテクニックが飛び出し、立体的に景色が広がっていく。このマクロな視点と物語の紡ぎ方、大きなビジョンはその名の通り〈ドリーム・シアター〉なんですね。
こんなに、バンド名を音楽で体現しきっているバンド、無いですよね。
音数とか、ギミック至上主義ではないから、この地位を築いてきていることは間違いないです。ドリームを見せるシアター、今回はパラソムニア=悪夢ですが(笑)。
今作は何度も聴き、昔好きだった作品や、マイク・マンジーニ参加時の作品も聴き返しました。
一時ギネス記録もお持ちだったマンジーニさんには本当に申し訳ないですけど、今作『Parasomnia』は、ポートノイが戻ってきて収まるべきところに収まり、まさに〈マイク・ポートノイ王の帰還〉とも呼ぶべき、圧倒的王者の風格があります。1曲目のイントロのタム回しの音で寒気がしました。ポートノイが帰ってきた……!
マイク・マンジーニもとても素晴らしいドラマーだと思うのですが、バンドのストーリーテリングを押し上げるドラミング、また、音楽にマジックを起こす力が、ちょっと半端ないんですポートノイは。
ジャズのビッグバンドで、例えばトランペットセクションがガツーンとフォルテで吹く前に入れるドラムのフィルインのことを、〈呼び込み〉と呼んだりするのですが、その呼び込みのフィルインが良ければ、トランペットセクションが思い切って吹くことができ、バンドが爆上がりするんですね。ドラマーが、バンド全体を動かす大事な大事な要になるんです。
そのような〈呼び込み〉に当たる部分は、ロックでもメタルでも沢山ありますが、ジャズミュージシャンとして聴いていると、ポートノイのフィルインには、強力な〈呼び込み〉のパワーを感じます。良いドラマーはバンド全体のサウンドを変えてしまう。
勿論、マンジーニも超人的だったんですけども、ポートノイはもはや化け物です(笑)。
ドリーム・シアターは、メタルというジャンルの中で、圧倒的スタイリスト。フォロワーのバンドやオマージュ曲は、沢山あります。
私の好きなものでいうと、BABYMETALの“Tales of The Destinies”と“THE ONE”はその系統ですが(この収録アルバム『METAL RESISTANCE』自体が、メタルのサブジャンルを巡るアルバムでした)、“THE ONE”の方がオマージュ成分を強く感じます。“Tales of The Destinies”はギミックが沢山繋がっているけれど散発的なのに比べ、“THE ONE”はストーリーが一本道でぶれない中、難しいリフや手数を有機的に沢山練り込んでいる。ギミックの数の問題ではなく、大局的なストーリー作りの方に、ドリーム・シアターを感じます。
前回のドリーム・シアター回の時にも書きましたが、私の世代ではドリーム・シアターからジャズにたどり着いた人、本当に沢山いると思います。
初めて難しい音楽に触れ、そのサスペンスにライドする快感を教えてくれたのが、ドリーム・シアター。おそらく、今初めてこのアルバムを聴く若い人も、同じような快感を得ることができるんじゃないでしょうか。
新譜の内容について全然触れていませんが、これは文章で補助線を引くのも野暮。
ぜひ通して聴いて、思考を巡らせてみてはいかがでしょうか。
RELEASE INFORMATION
■DREAM THEATER

リリース日:2025年2月7日(金)世界同時発売
■ジャパン・リミテッド・エディション(CD+Blu-ray)
品番:SICP 31492~3
価格:5,800円(税込)
[完全生産限定盤/日本独自企画]
・高品質Blu-spec CD2仕様
・全曲映像(ヴィジュアライザー)、ドルビーアトモス/ハイレゾ5.1ch/ハイレゾ・ステレオ音源収録のBlu-ray付
・解説:伊藤政則 特別寄稿:岸博幸
・歌詞・対訳付
・デジパック仕様/24pブックレット
■通常盤(CD)
品番:SICP 31494
価格:2,750円(税込)
・高品質Blu-spec CD2仕様
・解説:伊藤政則 特別寄稿:岸博幸
・歌詞・対訳付
・初回のみデジパック仕様/24pブックレット
TRACKLIST
CD / Blu-ray
1. In The Arms Of Morpheus
2. Night Terror
3. A Broken Man
4. Dead Asleep
5. Midnight Messiah
6. Are We Dreaming?
7. Bend The Clock
8. The Shadow Man Incident
<Blu-ray収録内容>
・アルバム全曲の映像(ヴィジュアライザー)
・オーディオ・セレクト(3フォーマット)[48/24 Dolby Atmos][48/24 DTS-HD Master Audio 5.1][96/24 LPCM Stereo]
EU輸入盤
■Limited Deluxe Box-Set(2LP+2CD+Blu-ray+封入特典付ボックスセット)
品番:1980283246-1
価格:24,517円(税込)
[完全生産限定盤]
・2LP:180gダーク・グリーン・ヴァイナル(別絵柄ジャケット)
・CD1:アルバム CD2:インストゥルメンタル
・Blu-ray:日本盤Blu-rayと同内容
・68pブックレット/60×60cmポスター/ドリーム・キャッチャー・キーリング/スリープ・ジャーナル/スリープ・マスク
・手書きのシリアル・ナンバー入り証明書
・全世界3,500セット限定生産
■Limited Deluxe Artbook(2CD+Blu-rayアートブック)
品番:1980284372-2
価格:8,790円(税込)
[完全生産限定盤]
・CD1:アルバム CD2:インストゥルメンタル
・Blu-ray:日本盤Blu-rayと同内容
・68pブックレット
■Ultra Clear Vinyl
品番:1980284376-1
価格:6,890円(税込)
[完全生産限定盤]
・2LP:180gウルトラクリア盤
・12p LPブックレット
・初回入荷分のみ日本制作〈帯〉付
■Black Vinyl
品番:1980284375-1
価格:6,290円(税込)
[完全生産限定盤]
・2LP:180gブラック盤
・12p LPブックレット
・初回入荷分のみ日本制作〈帯〉付
■CD
品番:1980284373-2
価格:2,690円(税込)
・デジパック仕様/24pブックレット
アルバム特設サイト:otonano PORTAL特設サイト【ドリーム・シアター】『パラソムニア』https://www.110107.com/dream_theater_parasomnia/
LIVE INFORMATION
■西山 瞳
西山瞳 × maiko tour
2025年2月14日(金)愛知・名古屋 Mr.Kenny’s
開場/開演:18:00/1st 19:30/2nd 21:00 ※2セット、入替なし
出演:西山瞳(ピアノ)、maiko(バイオリン)
予約/当日:4,000円/4,500円
住所:愛知県名古屋市中区金山5-1-5 満ビル2F
TEL:052-881-1555
オフィシャルサイト:https://www.mrkennys.com/(ウェブサイトよりご予約可能)
2025年2月18日(火)東京・三鷹 Natural
開演:19:30 ※2セット
出演:牧山純子(バイオリン)、西山瞳(ピアノ)
ミュージックチャージ:4,000円
TEL:0422-56-8291
オフィシャルサイト:https://musicsalon-natural.jp/
2025年2月22日(土)東京・池袋 Apple Jump
開場/開演:13:00/13:30 ※2セット、入替なし
出演:西山瞳トリオ 西山瞳(ピアノ)、西嶋徹(ベース)、則武諒(ドラムス)
チャージ:3,500円
TEL:03-5950-0689
オフィシャルサイト:https://applejump.net/
plays 井上淑彦
2025年2月23日(日)東京・小岩 COCHI
開演:20:00 ※2セット
出演:西山瞳(ピアノ)、佐藤芳明(アコーディオン)
ミュージックチャージ:3,000円
TEL:03-3671-1288
オフィシャルサイト:http://www.jazz-cochi.com/
★詳細やその他のライブについては西山瞳のオフィシャルサイトへ
RELEASE INFORMATION
西山瞳率いるメタルカバープロジェクトNHORHMの1stと2ndアルバムがリマスタリング&紙ジャケ仕様にてリリース!!

リリース日:2024年12月4日(水)
品番:APLS1510R
価格:2,750円(税込)
TRACKLIST(曲名 / オリジナルアーティスト)
1. In the Dead of Night / U.K.
2. Walk / Pantera
3. Man On the Silver Mountain / Rainbow
4. Skin Oʼ My Teeth / Megadeth
5. Fear of the Dark / Iron Maden
6. Upper Levels / ANGRA
7. 悪夢の輪舞曲 / BABYMETAL
8. Demonʼs Eye / Deep Purple
9. The Halfway to Babylon / 西山瞳
10. Green-Tinted Sixties Mind / Mr. Big
■メンバー
西山瞳 piano
織原良次 fretless bass
橋本学 drums
■ゲストミュージシャン
小田朋美 vocal track 4
馬場孝喜 a. guitar track 5
市原ひかり trumpet track 8
橋爪亮督 sax track 10

リリース日:2024年12月4日(水)
品番:APLS1612R
価格:2,750円(税込)
TRACKLIST(曲名 / オリジナルアーティスト)
1. Kings Of Metal / Manowar
2. Speed / Loudness
3. All Over The Nations / Helloween
4. Decadence Dance / Extreme
5. Beyond The Realms Of Death / Judas Priest
6. Iron Man / Black Sabbath
7. Mystery Of Babylon / 西山瞳
8. Over The Hills And Far Away / Gary Moore
9. The Gift Of Music / Dream Theater
10. THE ONE -Live Version- / BABYMETAL (Bonus Track)
■メンバー
西山瞳 piano
織原良次 fretless bass
橋本学 drums
■ゲストミュージシャン
田中充 trumpet track 4
宮崎隆睦 a. sax track 4
橋爪亮督 t. sax track 4
池田雅明 trombone track 4
冠徹弥(from THE 冠)vocal track 4

リリース日:2024年10月2日(水)
品番:MT-13
価格:3,190円(税込)
TRACKLIST(全曲 西山瞳作曲)
1. Echo エコー
2. West World ウエスト・ワールド
3. Ants アンツ
4. Arrakis アラキス
5. Raindrops レインドロップス
6. Cobalt Blue コバルト・ブルー
7. River リバー
■メンバー
西山瞳 ピアノ、作曲 Hitomi Nishiyama piano, compose
西嶋徹 ベース Toru Nishijima bass
則武諒 ドラムス Ryo Noritake drums
鈴木孝紀 クラリネット Takanori Suzuki clarinet (except 5)
橋爪亮督 テナーサクソフォン、フルート Ryosuke Hashizume tenor saxophone, flute (except 5)
maiko バイオリン maiko violin (except 5)
2023年7月12-14日 群馬県高崎市TAGO STUDIO TAKASAKIにて録音
録音・ミックス・マスタリング:松下真也(Piccolo Audio Works)
FAZIOLI F278使用 ピアノ技術:越智晃(Fazioli Japan Co., Ltd.)
写真:和田高広(ライトアンドプレイス湿板写真館)
PROFILE: 西山 瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。