(左から)大江康太、濱口祐自、鮎川誠、ピーター・バラカン

今年で6回目を迎える、ピーター・バラカンがオーガナイズするフェス〈Peter Barakan’s LIVE MAGIC!〉が、10月19日(土)と20(日)に東京・恵比寿ガーデンプレイス ザ・ガーデンホール/ザ・ガーデンルームで、22日(火)に沖縄・琉球新報ホールで〈EXTRA〉公演が開催!

ここでは10月7日にタワーレコード渋谷店6階にて営業中のレコード・ショップ、パイドパイパーハウスで実施されたトーク・イヴェント〈LIVE MAGIC! 開催直前! SPECIAL TALK SHOW at Pied Piper House〉の模様をレポートする。登壇者は、パイドの店主・長門芳郎とピーター・バラカン、そして同フェスに出演する鮎川誠(シーナ&ロケッツ)、濱口祐自、大江康太(The Kota Oe Band)の5名。飛び入りゲストも登場した、出演アーティストの音源を聴きながらの音楽談義は必読! *Mikiki編集部

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長門芳郎「今日は、10月19日(土)と20(日)に出演されるお三方においでいただきました。年齢も出身も違うギタリストたちですね。濱口さんはこれまで全部出演されているんですよね?」

濱口祐自「ありがたいことに呼んでもらえて。感謝してます」

ピーター・バラカン「すべての回に出演しているアーティストは、濱口さん以外誰もいませんね。しかも、毎回土日の両日出演してくれている」

右端がパイドパイパーハウス店主・長門芳郎

長門「で、初登場となるのが、鮎川誠さんと大江康太さん」

バラカン「僕はどの楽器も好きですけど、〈LIVE MAGIC!〉の出演者にはギタリストが多くなってますね。これまでの5年間で個性的なギタリストをたくさん迎えているんですけど、今年も例に漏れず、といった感じです。でも、鮎川さんのようなオーソドックスなロックンロール・バンドの出演はあんまりなかったかもしれない」

鮎川誠「俺たちシーナ&ロケッツは、〈LIVE MAGIC!〉がいつか呼んでくれないかなぁ、と思ってたから、やった~!って気持ちで」

バラカン「すみません、遅くなりました(笑)」

鮎川「だからすごく嬉しいし、恵比寿のザ・ガーデンホールは素晴らしい会場で。自分たちの30周年のコンサート(2008年5月に開催された〈S&R HAPPY 30th ANNIVERSARY SPECIAL〉 )も(同会場で)やったんだけど、細野(晴臣)さんやら、(高橋)幸宏やら、内田裕也さんやら、それにチバユウスケ、サンハウスの菊(柴山俊之)、ウェスト・ロード・ブルース・バンドの永井“ホトケ”隆など、僕らとずっと友だちだったみんなゲストで来てくれて、それがすごく思い出に残っとる」

バラカン「今年40周年だったっけ?」

鮎川「41周年になっていて、11月が来ると42年目に突入です」

バラカン「すごいな」

鮎川「ただ好きなことをやってるだけのバンドですけど、とても幸せですね。好きなだけステージでギターを弾く、音を鳴らす。それが最初からしたかったことやったから」

バラカン「最近はお嬢さんがヴォーカルとることもあるの?」

鮎川「シーナは天国に行ってしまったけど、残った3人で5年やってます。ただ末娘のLUCYがときどき歌ってくれることもある。彼女には、〈今度の「LIVE MAGIC!」楽しそうやけ、おい、いっしょに歌おうぜ〉って言うたら、出てくれるって。ただ彼女をメンバーとして縛ることはできない。それにシーナはひとりしかいないし、2代目シーナ&ロケッツというのはないから。40年、ずっといっしょやったからね」

バラカン「そうかそうか。ところで濱口さんは最近レパートリーが増えている感じがあるけど」

濱口「ようけあるんやけどね。やっぱり飽きられんようにしよと思ってね。BBキングみたいに同じような必殺技で勝負するのもええんやろうけど、なるだけいろんなタイプの曲を弾きたい。ギターも毎回変えたりね。前は竹で作ったギター持って行ったこともあった。今度は缶カンを改造して〈カンジョー〉みたいなのを作ってみよかなと思っとるけど、めんどくさいしな、と迷っとるところで。とにかく意表を突くレパートリーにせなのう。

あとちょっとフェイク入れたりね。誰かのライヴ観に行っても、レコードと違うフェイク入れてくれたりすると、どえらい嬉しい。ああいうのがやっぱりライヴの醍醐味で、自分もつねにお客さんの気持ちになりながら演奏しよるんですけどね。ただ何をしゃべるかとかぜんぜん決めてないし、そこらへんは出たとこ勝負やの」

長門「濱口さんはギター弾く前からおもしろい(笑)」

濱口「そうですかね? フツーなんやけど(笑)」

バラカン「〈LIVE MAGIC!〉では、ミュージシャンたちが自発的にセッションを行うこともたびたびあるんです。こちらからけっして呼びかけはしないけど、やりたければいつでも大歓迎、って思っていて、わりといつも率先してやるのが濱口さんだったりする」

濱口「僕は気が合ったら、〈ちょっと(セッション)せえへん?〉って声かけるんですよ。楽屋ではけっこうギターを弾きよるんでね。ロバート・エリス(2017年に出演)っていうカッコええ、ちょっとラスヴェガスふうな人おったやろ?」

バラカン「あぁ、格好がラスヴェガスっぽいってことね」

濱口「そうそう。彼が“Deep River Blues”を知っていたから、ドック・ワトソンふうに弾いたりしたの。そんなん今年もやりたいなと思ってね」

バラカン「ぜひぜひ。大江さんはこの3人のなかでははるかに若い(笑)。今年で30歳か。でもバンド歴はけっこう長いですよね?」

大江康太「メンバーがいろいろ変わったりはしてますけど、10年以上やっているのかな」

バラカン「ずっとジャム・バンド・スタイルの音楽をやっている?」

大江「そうですね。それがやっぱりいちばん好きなので。そもそもジャム・バンドって、ブルーズ、ソウル、ジャズ、ワールド・ミュージックなどいろんな音楽がごった煮になっていますが、それらの要素を少しづつかいつまみながらバンドを続けてきた、といった感じですね」

バラカン「この若さなのに自分が生まれる前の音楽をたくさん聴いてきているわけですけど、そちらの道にどっぷり進む大きなきっかけはありました?」

大江「きっかけとなったのはクリームの音楽との出会いだったんですよ」

バラカン「ドラムスのジンジャー・ベイカーが昨日(10月6日)亡くなりましたね」

大江「そうですね。入り口となったのは、現役時代だった60年代ではなく、2005年の再結成ライヴの音源でした。そのライヴ・アルバムに強い印象を受けて、エリック・クラプトンだったり、ブルーズを聴くきっかけができたんです」

バラカン「鮎川さんもクリームは聴いた?」

鮎川「ものすごい聴いた。“Strange Brew”が入ったアルバム(67年発表の2作目『Disraeli Gears』/邦題〈カラフル・クリーム〉)を誰かが持っとって、しばらくしてからファースト・アルバム(66年作『Fresh Cream』)を聴いたのかな。ちょうど3作目の『Wheels Of Fire』が出た頃、僕は博多でバンド活動を始めたばかりだった。

クラプトンの存在を強く認識したのはヤードバーズのとき。シングル“For Your Love”のB面のインスト(“Got To Hurry”)を何回も何回も聴いた。その後、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンIIとヤードバーズがヨーロッパ・ツアーしたアルバム、クラウダディ・クラブでのライヴ音源とかもよく聴いた。彼はいろいろ教えてくれたね」

バラカン「濱口さんはエリック・クラプトンを聴いていた?」

濱口「あんまり聴いてないのう。クラプトンは好きやけどね、ギター上手やから。そもそも戦前ブルーズに行ってしもうたからね。ミシシッピ・ジョン・ハートが好きになって、あのスタイルを一生懸命練習してたかな。白人ロック系はあんまり通ってない。リトル・フィートとライ・クーダーは通りまくったけどね」

バラカン「ここにいる3人とも、ブルーズが何らかのべースになっているよね?」

鮎川「ビートルズやストーンズのあとは、みんなブルーズって感じやったね。ジミヘンがみんなをビックリさせたんよ。ブルーズの演奏とエレキの(音の)デカさとでね。で、フーの影響受けて、ギター蹴ったり壊したりしてね。66、67、68年はめちゃくちゃやったんよね」

バラカン「あれももう50年前ですよ」

鮎川「こないだトーク・ショーですごいボックス・セットが出たビートルズの『Abbey Road』について喋ったけど、地球レヴェルでとんでもない存在なんだなと思って。その2、3年前からロック・シーンではすごいことが起きていて、アメリカではボブ・ディランがポール・バターフィールド・ブルーズ・バンドのメンバーをバックにエレキの音で新しい音楽をやり始めたり、すごいエキサイティングな時代だね」

バラカン「もはや50年前のことだから、いま50歳の人はその時代のことを当然知らない。ちょうどもうじき公開になる『イエスタデイ』って映画があるんです。ビートルズの音楽が抹消されてしまった世界という設定なんだけど、実際のところ、いまの若い人のなかには名前は知っているけどどんな音楽をやっていたのか知らない、って人も多くて、不思議な世の中だなと感じる。で、大江さんはクリームをきっかけに過去の音楽をどんどん聴くようになりました?」

大江「そうですね。僕らの時代は小学生のときすでにインターネットがあったから、時間軸というのがもはやあまり意味を持たなくなっていて。掘れば掘るだけ情報が湧き出てくる環境なので、あとは自分でどこまで掘っていくか、ってことにかかっていて。そういう技術の恩恵に与かりながら、知識を深めていきましたね」

バラカン「〈LIVE MAGIC!〉に来て自分の耳で確かめていただきたいんですけど、大江さんのバンドはビックリするほどいい演奏をするんです。ああいう渋い感じのジャム・バンド系の音楽をやっていて、それ一本で生活していくのはかなりきつい?」

大江「このご時世難しいでしょうね。でもなんとかギリギリそれだけで生活できてます」

バラカン「そうか。いまの日本は残念ながらそういう状況ですけど、〈LIVE MAGIC!〉の2日間で本当にいろんなタイプの音楽と出会うことができます」