
女性という生き物の内に渦巻く多面性
――そしてラストの“未成年”は10代の頃に書いた曲だとのことですが、tricotやほかのユニットでも形にしてなかったんですね。
「そうですね。10代の時に作った曲とか、もはやこっぱずかしかったんですけど、やっとそれを他人事のように歌えるぐらいの年齢になったというか、人からもらった曲を歌うぐらいの感じで歌えるようになった、自分から離れてくれた感じはあったので、俯瞰していい曲やなって思えました。〈これ10代の子が作ったんや、いい曲やな〉ぐらいの感じで歌えたので(笑)。今だったら入れてもいいかなって思いました」
――今の中嶋さんの視点から10代の中嶋さんの曲をプロデューサー的に見られるようになった?
「〈この曲いいじゃない〉みたいな感じで(笑)。せっかくなので10代の頃から知ってるキダ(モティフォ)さんにギターを弾いてもらいたいなっていうアイデアが最初にあって。ピアノも入れたかったので、どうせだったら女性がいいなと思って、普段から親交があった西野恵未さんにお願いして、このアルバムの中で唯一美しい音を入れてくれた感じですね(笑)」
――この曲は女性のチームで録音していることが自然な気がします。
「歌詞がドンって聴こえちゃう曲にどうしてもなるし、バンドの曲でも打ち込みのトラック系でもなかったので、ピアノとギターだけの曲ってなった時に歌詞にちゃんと共感してくれたり、共感はできひんけど言ってることは分かってくれたりする人に演奏してもらう方がいいかなって。気持ちが乗っかった演奏の方がいいと思いました」
――中嶋さんが比較的淡々と歌っていて、出し切らない感情がキダさんのギターに乗ってるようでグッときます。
「3人とも別々の軸にいながら同時に歩いてるような感じがすごく気に入ってますね」
――歌は平熱な感じなのに実は狂気が渦巻いてるっていう。
「そうですね。でも女性ってそんな感じっていうか、表面上、淡々としてる感じを出すけど内側でいろんなものが渦巻いてたりする日もあれば、心がすっごい美しい日もあるっていうか。そういう多面性みたいなのが一気に聴ける曲にはなった気がします」
――20代で録音してたら、もっと直接的な曲になってそう。
「そうですね。10代で音源にしてたらアコギの弾き語りとかでまとまっちゃってたんじゃないかなって思うんです。けど、やっぱ35歳になって、自分のいろんな面とか友達のいろんな面とかを知ったりすると、女性ってアコギと歌だけでまとまるような生物じゃなくなるっていうか(笑)。これを表現するには3人は必要やなって」