
音楽で会話する即興の醍醐味
北村「あと沙良ちゃんはピアニストとしても本当に憧れの存在で、ライブの即興もすごくかっこよくて」
和久井「即興をするときは基本的に頭の中は空っぽにしてるから、どういう感じでやってるかは思い出せないんですけど(笑)、でもそのときどういう音楽を聴いてるかはすごく出るなと思ってて。
あとは即興と言ってもいろんなパターンがあって、誰かと一緒にやると結構アプローチが変わったりしますね。〈この人とやるんだったらこういう音楽ができそうだから、こういうのをちょっとふっかけてみよう〉とか。アグレッシブになったり、静かになったり、その時々で違うんですけど、誰かとやるときはめっちゃ相手の演奏を聴いて、そこからつまんで自分で広げて、みたいなことが多いかな」
北村「その拾うポイントもめちゃめちゃすごいし、瞬発力もすごいし、相手もそれに影響されていく、みたいなことは晴れ豆のライブを見ててもすごく感じて、かっこいいなって」
和久井「その速度が一番速いのは晴れ豆の梅井・SAROとのセッションかもしれない。梅井が〈めっちゃ速い卓球をしてるみたいな感じ〉と言ってて、〈確かにな〉って(笑)」
北村「でもその中で3人が合うときが来るんですよ」
和久井「そう、それでお客さんがめっちゃ湧くことがあって、それが即興の醍醐味というか。段取りが決まってないのにバシッと合ってしまう、会話ができてる喜びがありますね」
――じゃあ、今度は和久井さんと北村さんでrpmでツインキーセッションやりますか。
和久井「それはめちゃくちゃやりたいです(笑)」

和久井沙良の原点から最新モードまで
――2人の今年の活動を振り返ると、まず和久井さんはアルバムが出て、その後にツアーがありました。僕は初日のduoでのライブを見に行かせてもらったんですけど、ツアーやduoのライブの手応えを話していただけますか。
和久井「私のライブは不思議とお客さんのボルテージがめっちゃ高いんです。毎回自分のライブではすごくナーバスになったり、緊張したりするんですけど、お客さんが盛り上げてくれて、duoの日はとにかく多幸感あふれるライブだったなって。奏者全員が光を放ってたし、そういう場所にいられてすごく幸せだなって感じた1日でした。ゲストの方々の熱量もすごかったし、音源とはまた全然違うアレンジになって、やっぱりこれがライブをやる意義だなというのにも改めて気づけたし。
その後に名古屋と大阪を初めて自分のバンドで回ったんですけど、待っててくれる人がたくさんいて、本当にいいツアーができたなと思います」
――音源だと打ち込みの曲がライブだと生演奏に置き換わって、そこでまた熱量が吹き込まれたり、それこそ即興の要素もあったりするから、それにお客さんも巻き込まれていって、どんどん熱が高まりますよね。
和久井「自分のライブは余白があるというか、自由にしていい場所が半分ぐらいあって、事前に決まってる場所のほうが少ないんですけど、そのやり方はずっと続けていきたいと思いますね」
――北村さんは和久井さんのバンド編成のライブは見たことがありますか?
北村「COTTON CLUBで見たことがあります」
和久井「初めてトリオ編成のライブをした日ですね」
北村「そのときはまだファーストアルバム(『Time Won’t Stop』)のリリースよりも前で、聴いたことがない曲ばっかりやってたけど……本当にぶち上がりました(笑)。もっとジャズ寄りなのかなと思ってたんですけど、すごくロックなところもあったり、ちゃんとぶち上がるポイントがあったりする、そういうライブができるのはめっちゃかっこいいなって。そのとき“Calming Influence”を初めてやってて、やば!ってなりました」
和久井「当時はまだPecoriさんとも出会ってなくて、ラップも入ってないバージョンだったんですけど、あのCOTTON CLUBのライブは自分のソロの原点ですね」
――いろんなゲストボーカルを呼んだり、広げていくための土台がそこで築かれた。
和久井「そうですね。当時は社会に出てそんなに時間が経ってなかったので、知り合いも少なくて、自分がビビッときた人に〈お願い!〉と言って、一緒にやってもらって。それこそドラムの俊ちゃん(上原俊亮)だったり、ベースの奏ちゃん(森光奏太)だったり、ermhoiさんだったり、数少ない友達を頼りに自分の作品を作っていた時期なので、そこからどんどん広がって、今に繋がってると思うと、すごく感慨深いです」