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マルチすぎる北村蕗の活躍と新世代の音楽家たち

――北村さんは今年ダンスミュージックに特化したEPが出ていて、恵比寿BATICAでショーケースライブがありました。1時間ぐらいのライブなのかな、みたいなイメージで見に行ったら、1人でガッツリ2時間やって、しかもその中でいろんなスタイルでパフォーマンスをしていて、すごいなと改めて思ったんですけど、ご本人としてはいかがでしたか?

北村「東京に来てからの初めてのワンマンで、それまで自分がやってきた音楽とやりたい要素を全部詰め込んだライブでした。テクノセットではEPに入ってる曲を全部DJ的に繋げてやってみたり、その一方で弾き語りもやったり。あのライブをやって、これからもこういうことを続けていきたいとすごく思いました」

――フルートも吹いてましたね(笑)。

北村「吹きました(笑)。でもあの日やったことだけに留まらず、他のジャンルももっとやってみたいし、バンドもやってみたいです。1人でやりつつも、いろんな人と音を出せるようにもなりたいなとすごく思います」

――今年は草田一駿くんとコラボをした2曲がリリースされてますね。

北村「去年の12月にBLUE NOTE PLACEで、草田くんがチェロの利倉(央次朗)さんとバイオリンの大谷(舞)さんと3人でやってるトリオプロジェクトのライブがあって、それにボーカルで呼んでいただいて。そのとき“amaranthus”をやったんですけど、せっかくだから新しい曲も作りたいなと思って、それで作ったのが“栞”です。自分のとはまた違ったアレンジを聴くのもすごく面白いし、それに反応して歌う時間がすごく楽しかったです」

――草田くんもすごくいい音楽家ですよね。

北村「そうですね。本当に丁寧に音を出して、素晴らしいなと」

和久井「めっちゃ綺麗な曲を書きますよね」

――和久井さんも草田くんとは繋がりがありますか?

和久井「月見ル(青山・月見ル君想フ)で2台ピアノで演奏したり、ライブでたまたま会ったり、セッションに来てくれたり、結構繋がりはありますね」

――ほぼ同世代だと思うし、草田くんの曲もかなりプログレッシブだったりして、通じる部分を感じます。今の20代前半から中盤には本当にいいプレイヤーや作曲家が多いなと。

和久井「確かに。梅井もそうだし、草田くんもそうだし、蕗ちゃんもそうだし。でもそれぞれが全然違う方向を向いてる気もしてて」

――わかります。共通する部分もあるんだけど、ちゃんとそれぞれのカラーがありますよね。

和久井「それがすごく楽しいなと思います」

北村「みんな何でもできちゃうのに、なおかつそれらを同じ熱量とか同じ速度でできるのがすごいなと思います」

――それこそ和久井さんのduoのライブの最後にゲスト出演した中村佳穂さんだったり、CRCK/LCKSやモノンクルを見て、〈自由にやっていいんだ〉って感じたところからスタートしてる人たちが現在20代前半のミュージシャンで、その自由な空気が今はより拡張されてる感じがします。

和久井「確かに、1本の道だけを極めなくちゃ、みたいな先入観を上の世代の人たちが取っ払ってくれたというか。できるならやっちゃえばいいじゃん、周りのことは気にせずに作品を作れるし、リリースもできるし、ライブもできるんだよって、そういうステージを作っていただいたのはすごく感じますね」

 

和久井沙良の新曲“Patterns”での試行錯誤と挑戦

――和久井さんは新曲“Patterns”のリリースが決まっています※。一緒に聴きましょうか。

※編集部注 “Patterns”は2024年11月13日にリリースされた

(“Patterns”が流れ終えて)

北村「めっちゃかっこいい。トラックメイクとバンドが一緒に共存してるのがすごく面白いですね」

和久井「結構大変な作業でした(笑)。最初は自分1人で打ち込みで作って、それにmimikoに仮歌を入れてもらって、素材を切り取って、自分でメロディーを作ったり、組み合わせたりして一旦デモを完成させて、打ち込みの部分を生に差し替える作業をするんですけど、最初は思った音像にならなくて。それは自分としては初めての経験でした。

今まではバンドありきで曲を作って、それを差し替える感じだったので、セカンドの“行間”だったり、ファーストの“Maze”や“tietie”だったりは割と難なく行けたんですけど、今回はちょっとごちゃっとしちゃったんですよ。なので、ドラムをキックだけ打ち込みにしたり、EQでかなり削ったり、ベースもサビだけシンベ(シンセベース)をレイヤーしたり、レコーディングの後の作業にものすごく時間をかけたんです。結果的には自分でも納得のいく仕上がりになりました」

――レコーディングにはduoのときと同じメンバーに加えて、庵原良司さんがサックスとフルートで参加していますが、音色はかなり加工されてますよね。

和久井「サックスは、当初はがっつり吹いてもらったんですけど、庵原さんから電話があって〈実際どう?〉という話をしたんです。言われてみれば生のサウンドが浮きすぎてしまう感じがして、最終的にAbleton Liveを使ってオートチューンをかけてみたり、逆再生にしてみたり、コーラスと混ぜてみたり、そういう加工をいろいろ施して、なじませて今の形になりました。あのとき庵原さんが電話してくれなかったらそのままリリースしていたかもしれなくて、そういった話をしてアイデアが生まれるのも奏者のゲストを呼ぶ面白さかなと思いました。なので本当に感謝してますね。

今まで打ち込みや加工をする作業は割と任せていたんですけど、今回は試行錯誤して、自分なりにできた実感もあって。それが世に出るのは少し緊張しますけど、自分の中の壁はまた1個越えられたのかなって」

――ダンスミュージック的な熱量がすごく感じられる曲でもありますよね。今年の和久井さんの活動で言うとAdoさんのサポートで国立競技場でやったり、ワールドツアーをやったり、そこで感じた熱量が曲に還元されているような印象も受けました。

和久井「自分はライブがすごく好きなので、いつもライブを想定して曲は書いてるんですけど、サポートでいろんな国のいろんな会場でライブをして、度胸がついたというか、安心してライブができる人間に変わりましたね。前は物を投げられたり、ブーイングが来たりしたらどうしようとか、そういうことばっかり考えて、メンバーに慰めてもらってたんですけど(笑)、ライブはみんな楽しみに来てる場所なんだなって、改めて気づかされました。いろんな経験ができてよかったなと思いますね」