坂本龍一が目指した〈曇りのない音〉を体験しよう　上映作品の持ち味を高い解像度で味わえる109シネマズプレミアム新宿

【わたしが知らない坂本龍一】109シネマズプレミアム新宿

坂本龍一が音響監修した映画館
坂本龍一ゆかりの地、新宿で〈曇りのない音〉を

　2023年4月に開業した〈東急歌舞伎町タワー〉。ホテルとさまざまなエンタテインメントの複合施設であるこの東急歌舞伎町タワーの9、10階にあるのが、質の高い劇場体験を約束する映画館〈109シネマズプレミアム新宿〉だ。ゆったりとしたプレミアムシートを全面的に採用した8つのシアター、鑑賞者専用のラウンジとウェルカム・コンセッション（ポップコーンと各種ソフトドリンクをインクルードで提供）など、鑑賞前から鑑賞後までプレミアムな時間を味わうことができる109シネマズプレミアム新宿の大きな特色といえば、坂本龍一が全シアターの音響監修を務めたことだろう。

　109シネマズのいくつかは〈SAION（サイオン）〉と呼ばれるオリジナルのプレミアム・ピュアサウンドシステムを導入しているが、坂本龍一音響監修の109シネマズプレミアム新宿では新たに〈SAION -SR EDITION-〉という、さらなる高みを目指したサウンドシステムを取り入れている。スクリーン背後にセットアップされた3ウェイ・メイン・スピーカーとサブウーハー・システム、そして同軸2ウェイ・サラウンドスピーカー・システムを、英〈Linea Research〉の最高品質パワーアンプで駆動。電源やスピーカー・ケーブルも手抜かりなく整え、迫力と繊細さを両立させている。

　わたしはこの劇場でワン・オートリックス・ポイント・ネヴァー「アゲイン」（2023）の先行試聴会、高橋幸宏が2018年に行った「サラヴァ!」（1978）の再現コンサートの模様を収録した「YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE 2018 SARAVAH SARAVAH!」（2024）、そして坂本龍一の最後のピアノ・ソロ・コンサートを収めた長篇コンサート映画「Ryuichi Sakamoto | Opus」（2024）を体験しているのだが、先鋭的なエレクトロニック・ミュージック、バンド・サウンド、そしてピアノの独奏と振り幅の広い内容だったにもかかわらず、それぞれのサウンドの持ち味を高い解像度で味わうことができたのには驚いた。なかでも「Opus」はピアノそのものの音に加えて、ペダルを踏む／離す音もしっかり聴き取ることができて、実にインティメイトな空気を感じたものだ。

　映画音楽も多数手がけてきた坂本龍一は、著書「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」（新潮社刊）で、「レヴェナント：蘇りし者」（2015）に触れつつ、俳優のセリフと音響効果、音楽という3種類の音を時間や場面に従い細かく調整するサウンド・デザイナー（この作品ではマーティン・ヘルナンデス）にもっと光を当てるべきだ、と記している。おそらくこうした思いも含めて、109シネマズプレミアム新宿で〈曇りのない音〉を目指したのではと予想されるのだが、はたしてその目論見は見事現実のものとなった。

　監修者の坂本龍一がいまはもういないことは悲しい限りだが、109シネマズプレミアム新宿での鑑賞のあと、都立新宿高校時代に氏が毎日ジャズ喫茶や映画館を行き来し徘徊していた新宿の街に繰り出すのも、ここでの映画体験をより思い出深いものにしてくれそうである。

MOVIE INFORMATION
Ryuichi Sakamoto Premium Collection
「Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014」

2025年1月3日（金）の全国公開に先駆けて、2024年12月20日（金）より先行公開決定!

■上映作品／上映期間
「Ryuichi Sakamoto | Opus」：2024年12月20日（金）～2025年3月27日（木）
「Ryuichi Sakamoto | Playing the Orchestra 2014」：2024年12月20日（金）～2025年3月27日（木）
「戦場のメリークリスマス」35mmフィルム：2024年12月20日（金）～2025年1月2日（木）
「ラストエンペラー劇場公開版 4K レストア」：2025年1月3日（金）～2025年1月16日（木）
「怪物」：2025年1月17日（金）～2025年1月30日（木）
「トニー滝谷」35mmフィルム：2025年1月31日（金）～2025年2月13日（木）
「ブンミおじさんの森」：2025年2月14日（金）～2025年2月27日（木）
「MEMORIA メモリア」：2025年2月28日（金）～2025年3月13日（木）