変わらない音楽への愛と美意識

 ソロ・デビュー40周年を迎えた昨年、ファースト・ソロ・アルバム『Saravah!』を、ヴォーカルだけ新録したアルバム『saravah saravah!』を発表した高橋幸宏。40年前のサウンドと、現在の高橋の歌声が自然に融け合っていることに驚かされたが、そのリリースを記念して、11月24日に東京国際フォーラムで行われたコンサート「Saravah! 40th Anniversary Live」の模様を収録したライヴ・アルバムがCD+DVDとLP2枚組でリリースされた。

高橋幸宏 YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE2018 SARAVAH SARAVAH! Columbia (2019)

 このコンサートは『Saravah!』を全曲再現するという企画。オリジナルに参加しているのは当時のトップ・ミュージシャンだけに、再現するミュージシャンも精鋭揃いだ。佐橋佳幸、Dr.kyOn、林立夫、矢口博康、ゴンドウトモヒコなど、高橋が信頼するミュージシャンがバックをしっかりと固める。坂本龍一プロデュースのもとで緻密に作り上げたサウンドを、生でどこまで再現するかがこのコンサートの醍醐味だが、時にはオリジナルのマルチテープの音源も使いながら、プレイヤーが素晴らしい演奏を繰り広げた。

 例えば《ラ・ローザ》では、マルチに録音された、松木恒彦、大村憲治のギターと佐橋が時を越えた共演を披露。また、ライヴ中にビデオレターで登場した坂本が「もう弾けない」と告白した難曲《エラスティック・ダミー》の見事な再現にも息を呑むが、この曲では高橋と林のツインドラムも聴きどころだ。そして、コンサートのラスト・ナンバー《プレゼント》では細野晴臣が参加して、味わい深い演奏を聴かせてくれる。そんななか、40年前と変わらないキーで、深みを増した歌声を披露する高橋のシンガーとしての魅力もたっぷり味わえる。さらにアンコールでは《四月の魚》《ルック・オブ・ラブ》など高橋が敬愛するるフランシス・レイやバート・バカラックにオマージュを捧げた曲や、アルバム未収録曲 《MAJI》を演奏するなど、趣向を凝らした選曲もファンには嬉しいところ。40年という時を経てもブレない高橋の美意識、そして、音楽への愛情が詰まった作品だ。