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●鬼頭隆生

VARIOUS ARTISTS 『J-Jazz: Free And Modern Jazz Albums From Japan 1954-1988』 BBE(2024)

年々、音楽を思い入れたっぷりに解説・再評価するテキストの意義を痛感しており、まもなく没後10年となる中山康樹氏の著作ほか、多数の音楽関連書籍を入手しました。特にBBEによる日本産ジャズLPのアートワーク集「J-Jazz: Free And Modern Jazz Albums From Japan 1954-1988」は物質的・内容的に超重量級で、識者の〈マイベスト・Jジャズ・ランキング〉や日本産ジャズの神髄が詰まった編集盤も含め、偉業です。

 

●桑原シロー

Mei Semones 『かぶとむし』 Bayonet(2024)

バークリー・メソッドに基づく卓抜したギター演奏、ジャズやJ-Popなどさまざまなエッセンスが絡み合う滋味豊かなメロディー、不可思議な響きの日本語詞などが混じりあって生成されたハチミツ色のサウダージにガツンとヤラれてしまった。頼りなげな歌声が醸し出すゆるふわな浮遊感にはかのレッチリのフリーもゾッコンなのだそうだし、今後も影響範囲の拡大化が見込まれる。とにかく2025年リリース予定の初フル・アルバムが待ち遠しい。

 

●郡司和歌

COMPUMA 『horizons』 SOMETHING ABOUT(2024)

坂本慎太郎、asuka ando、Urban Volcano Soundなどポップ~クラブ界隈を賑わせるミドル世代のライヴや音源の熱量に感銘を受けた2024年。なかでもソロ・ライヴを筆頭にDJや悪魔の沼として各地のクラウドを熱狂させているCOMPUMAには、凛とした美学に多彩なイマジネーションを詰め込んだこのソロ2作目のリリースも含め、精力的な活動と湧き出る創造性に魅了されまくりでした。音楽への冷めやらぬ愛にリスペクト!

 

●狛犬

二丁目の魁カミングアウト 『Best As Yesterday』 GAY RECORDS(2024)

逆に偏狭な世の中になってきてるのが非常に不気味な気がしていますが、とはいえ音楽作品という意味では毎年のように良い作品が多くてとても良かったです。というか世に出ているものの平均点が上がったというか、もうどの作品もだいたい良いので、自分の好みもわからなくなってきつつあるなか、ストレートに心にくる曲と不意に出会えればいいなと思っていろいろ聴いているなかで2024年も大切な何曲かに出会うことができました。

 

●近藤真弥

Irene 『Like A Flower: 1st Mini Album』 SM(2024)

ウン・ドヒ『Blue Comedy』など、韓国のインディー・フォーク系作品に惹かれることが多かったです。もちろんK-Popにも良い作品が目立ちました。特に、今回選んだRed Velvetのアイリーンによるミニ・アルバムは、アマピアノといった現行の流行りに上手く応答したモダンなポップソング集で素晴らしい。マスメディアの基礎体力が年々落ちていることに危機感を抱きつつ、ポップ・カルチャーのおもしろさに今年も夢中でした。

 

●澤田大輔

谷村有美 『Believe In (2024 Remaster)』 ソニー(2024)

シティ・ポップ的な視点で国産ポップスを再発見&再評価するモードが、90年代前後に隆盛した所謂〈ガール・ポップ〉にも波及するなかで、このジャンルを代表する存在と目される谷村有美の初期作品群がリマスター復刻されたことは2024年の私的トピックのひとつでした。こちらの『Believe In』は87年にリリースされたデビュー作。彼女のヴォーカルが擁する透明感をアンサンブルにも適応させたかのような大村雅朗による編曲&サウンドが素晴らしい。ちなみに年明けにはフェイヴァリットな90年作『PRISM』のリイシューも控えております。

 

●田山雄士

フリージアン 『歌葬』 フリージアン(2024)

2024年末の所感としては、兵庫県知事選挙のカルトじみた異様さや止まる気配のない物価高など、何かとしんどい状況が長く続いているため、音楽をはじめとする娯楽全般に没頭しづらい人も多いのかもしれないということ。腐りそうになるときもありますが、そんな憂鬱をまっすぐな歌で撃ち抜いてくれたのは、奇しくも神戸発のフリージアンでした。俯いてばかりはいられません。顔を上げるきっかけが欲しいなら『歌葬』をぜひ。今後どこまで行けるのか、期待のロック・バンドです。

 

●土田真弓

2024年リリースのものだと、恐らくリピート率がいちばん高かったのがこの一枚。昔からオーケストラ+テクノな作品に目がないのですが、本作はその方向での久々のヒットでした。環境音も交えたオーガニックな質感ながら、しっかりとフロア仕様。じわじわと押し寄せる昂揚感がエモーショナルでたまらないです。あと、カリブーティコGOOD BYE APRILの最新作も良かった。今年は煌めきにあふれた音が気分だったみたいです。