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ノーコンプでクリップしちゃってるドリーマー

――たとえばトッド・ラングレンとか、エミット・ローズとか、1970年代に宅録をやっていた人たちってめちゃくちゃ恵まれた環境にあったわけじゃなく、手持ちの機材を使って自分ひとりで突き詰めて生まれる限界ギリギリのバラエティみたいな精神があった。そこは確実に通じてると思います。

田中「個人の趣味性を突き詰めるみたいな、もっと夢を持つべきだと最近は思うようになってきてます。やっぱり昭和を生きてきた人たちって今もめちゃくちゃ夢を見てるなと思うんです」

――よくもわるくも、ですけどね(笑)。

田中「それこそ自分が好きな人間椅子の和嶋(慎治)さんもそうですし、自分が今使ってるアンプをモディファイしてくれてる秋間さん(秋間経夫/マルコシアス・バンプ)としゃべってると、まるで少年のようで。夢見てるな、って思います。逆に同世代に立ち返ると全然面白くない。秋間さんたちとしゃべってるほうが気持ちが楽だし、自分が若くなったように思える」

――本当はすごく年上の人たちなのに。

田中「若い人たちって、よく言えば現実を見据えていて、夢を見すぎないように自分にコンプをかけているようなところがある気がするんです。でも、自分が憧れる上の世代の人たちは、そこがまるでノーコンプだし、なんならめちゃクリップしちゃってるんです(笑)。

最近、ジミー桜井さんという方のドキュメンタリー映画(『MR. JIMMY ミスター・ジミー レッド・ツェッペリンに全てを捧げた男』2025年公開)を見させてもらったんですが、誤解を恐れずに要約するとジミーさんって、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが好きすぎて、〈ジミー・ペイジになる!〉って言ってる方なんです。コピバンの域はとっくに超えていて、〈ツェッペリンは伝統芸能だからそれを継承する〉と宣言しているような日本人で。もともと存在は知ってたんですけど、その映画を見たら、完全に秋間さんと同じタイプの人に思えました。実際にライブをジミー・ペイジが見に来たり、今はジョン・ボーナムの息子と一緒にバンドをやったりもしてるみたいで、そこまで行ったら最高ですよね」

――それは最高(笑)。

田中「人からどう見られようがいっさい気にせず、自分のやりたいことをやる。そこにものすごく憧れるように最近なりました。自分もサラリーマンをやってた頃は、同世代の若者的な悟りもあったんですが、最近はそっちとは真逆なほうに来てる気がします。もっと夢にぶっこむべき、みたいな」

 

こちとら趣味性全開

――それは家主が多くの人に聴かれるようになってきた実感が後押ししてくれてる部分もある?

田中「音楽を好きなように続けさせてくれてる環境がある、ということはめちゃデカイと思ってます。広がっていくかどうかは特に気にはしてないんですけど、聴いてくれてる人が増えてきたことは多少自覚するようになりました。〈自分は公に音源を出していい人間なんだ〉という証明のようにも思えるし。

たとえば技術が下手でも、いい音楽特有の深さや聴きごたえ、みたいなものがあると思うんです。でも、近年は音源をリリースできるハードルが下がったのか、その深さを感じない人、悪い意味で本来のアマチュアがすごくいっぱいいる気がします。あくまでアマチュアである自分が音源を出し続けられているのは、そこと比べて、それ相応のクオリティを担保できているからなのかな、という気持ちも多少はあります。

リスナーの質みたいな話にもなっておこがましいんですけど、家主がわりと最近いろんな人の目に触れるようになってきた反面、ライトな層やフェスに行くような若い層も増えてきたという感覚がある。でも、自分の音楽を聴いてもらう上では、エミット・ローズやアイドル・レースが共通言語としてあってほしいというのも正直な気持ちで(笑)。もし家主というバンドがライトな層の窓口になれていたとすれば、そこから自分のソロまで聴き込めた人は、〈ホント音楽好きなんだねえ〉みたいな。あえて上から言えば〈ここまでついて来られるかな?〉みたいな感覚もあるかもしれないです。こちとら趣味性全開ですし、リスナーを神様みたいに考えるのも違う気がするし。元来のシネフィル的な性格の悪さが高じて今に至っているので」

――でも、〈田中ヤコブ〉という引っ掛かりを感じるからこそ、家主からソロに入ってくる人たちも多いですしね。

田中「そこを入り口に、秋間さんのようなドリーマーになってほしいですね(笑)。

大衆的な観点からすると自分なんてアングラだと思うんです。でも、大衆的な感覚の人が聴いてもある程度わかるものを作りたいという気持ちがある。仮にトー横キッズが聴いても、テンションとか時間帯によってはちょっと聴けるぞ、みたいな(笑)。露悪的なものに振らない、アート的なものに逃げない、みたいな部分は自分には大事なんです」