連載

【ハマ・オカモトの自由時間 ~2nd Season~】第5回
THE METERS 『New Directions』

ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル~ファンクを自由に紹介する連載、第2章

【ハマ・オカモトの自由時間 ~2nd Season~】第5回THE METERS 『New Directions』

今回の課題盤

THE METERS New Directions (1977)

 「今回ね、ちょっとやらかしちゃったんですよ(笑)」

――やらかしちゃった? どうしました(笑)?

「盤を選んで、さっき電車に乗りながらどういうふうに喋ろうか考えてたんですよ。そしたら〈これ、喋ったことある気がするな……〉と(ニヤリ)」

――ハーッ! 出た!

「で、bounceを調べたら、だいぶ前に紹介してたんですよ(笑)。うっかりしてました」

――ちなみに何にしようと思ってたんですか?

スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『Fresh』です。2012年に取り上げてました

【参考音源】スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの73年作『Fresh』収録曲
“If You Want Me To Stay”

 

――あー、やりましたね(笑)。

「ウォー!と思いまして。で、今日たまたまなんですけど、この後に取材があって……これ知ってます? 通称8トラっていう……8トラック・プレイヤーというものです。これがいちばん見た目のいいNational製なんですが、僕これを色違いで3台持ってるんですよ。テープをこのプレイヤーにガシャン!と入れて聴く」

*65年に開発された、ステレオ録音された音楽を収めたテープを再生できるプレイヤー。70年代後半まで普及していた模様

【参考動画】ハマ氏所有のものと同タイプの8トラ・プレイヤー使い方映像

 

――ワー! こんなの初めて知りました! どこで手に入れたんですか?

「僕はMUROさんの本で初めて知って、ネット・オークションで買いました。テープはたま~にレコ屋に置いてますけど、これもネット・オークションで買うことが多いですね。ドクター・ジョンザ・フービートルズ……名盤系が多いんです」

 

 

――へぇ~、結構充実したラインナップだったんですね。

「もはや店に試聴機がないので、買って帰らないと聴けないんですよ。前にクリームのアルバムを買って家で聴いたらテープが伸び倒してて、この世の終わりみたいな音でした(笑)」

――ハハハ、そういうことも発生しますよね(笑)。実際に聴くというより蒐集して楽しむ感じ?

「うん、コレクターズ・アイテムですね。かつては車にカセットテープと並行して8トラも付いていたらしいんですけど……8トラについては調べてもほとんど情報が出てこないので、実際のところはよくわからないんです(苦笑)。で、まあたまたまこういうのも持ってきていたので、CDじゃないけどこのなかからミーターズ最後のオリジナル・アルバム『New Directions』を紹介しようかなと」

――ミーターズのカセットまであるとは! まあCDでも買えるので全然問題ないですよ。ミーターズはファースト・アルバム『The Meters』をbounce連載の初回に取り上げましたよね。

「そうですね。その後も何度か話に出ていたし、この間紹介したアラン・トゥーサンの作品でバック・バンドをやっていたのもミーターズでした。ちなみにここにあるドクター・ジョンの『In The Right Place』(73年)もミーターズが演奏しています」

 

 

――本当にこの連載ではよく名前が出てくるバンドなんですが、Mikikiではちゃんとハマくんから紹介したことがないので、また改めて……。

「同じ話を(笑)」

――ハハ(笑)。まあ同じことと言っても……作品が違いますから。

「『New Directions』もすごく好きなんですよ。また噂の70年代中期(笑)の作品で77年作です」

――おー(笑)。これはジャケがまたカッコイイですね。

「そうなんですよ。実は自分たちの作品でジャケットをパクろうとしてました(笑)。カッコイイですよね。で、改めてミーターズはざっくり言うと、ニューオーリンズを代表するバンドで、前にアラン・トゥーサンの回でも言いましたが、モータウンにおけるファンク・ブラザーズスタックスにおけるブッカー・T&ザ・MG’sに通じる、トゥーサンやドクター・ジョンといったかの地のアーティストの作品でバック・バンドとしても活躍していた人たちなんです。オリジナルでは、ベタベタなニューオーリンズ・サウンドというよりも、作品を重ねるごとにどんどん〈ポップ〉になっていった印象です」

【参考音源】ミーターズが参加したドクター・ジョンの73年作『In The Right Place』収録曲
“Right Place Wrong Time”

 

――ほう。そもそもミーターズはフリーレッド・ホット・チリ・ペッパーズ)経由で知ったんですよね。

「そうですね。フリーがインタヴューで〈自分を構成したブラック・ミュージック〉みたいなお題でPファンクニューオーリンズ・ファンクの話をしていて、とりあえずそこで紹介されていたものを全部メモって聴いたなかにミーターズがあったというのと、それとほぼ同時に、当時音楽をいろいろ教えてくれていた方から〈ミーターズは聴いておいたほうがいいよ〉と言われたんです――ちょっと話が逸れますけど、〈ジャム・セッション〉や〈セッション〉って言葉がよく使われますよね、〈ライヴではゲストと見事なセッションが繰り広げられ……〉みたいな。でもそれはセッションじゃなくて〈共演〉じゃないですか、リハもしてるし」

――本来の意味とは違うと。

「そうです。本来はなんのルールもなしにコード進行だけ決めて、リズムが鳴ったらどう展開していくかわからない……というのがジャム・セッション。当時、自分の周りの大人たちがそういったセッションをしているのをよく見てたんですけど、どうやったらあんなことができるのかわからなかったんです。でもそれは単純に音楽を聴いている量の問題だし、まずはお手本というかセッションをするにあたってヒントになるものを聴くのがいいと思うよと言われて。それで最初に参考にしたのがミーターズのファーストに入ってる、Cのリフ一発で延々と展開していく“Cissy Strut”」

【参考音源】ミーターズの69年作『The Meters』収録曲“Cissy Strut”

 

「この曲のリフは難しくないし独特の黒いノリがあるので、まずは“Cissy Strut”をコピーして上手く身体に入ったら、最初はそのリフで始めつつCの展開で延々ジャムる、ということをやろうよと言われたんです。それで『The Meters』を聴いて、異常にカッコイイなと思った。“Cissy Strut”はインストで初めて好きになった曲なんですよ」

――へぇ~。じゃあ本当にいまのハマくんの礎を作ったのがミーターズなんですね。

「インストとブラック・ミュージック、両方の扉を開いてくれました。うちのバンドにはそこまでインストの音楽にのめり込んだメンバーはいないんですけど、その頃から僕ひとりだけtoeLITEといったインストのポスト・ロックを聴くようになって、ライヴを観に行ったりしてましたね」

【参考動画】toeの2012年作『the book about my idle plot on a vague anxiety』収録曲“孤独の発明”

 

「ミーターズの初作から3作はインスト中心で、メジャーに移籍してからは歌が入ったり、バラードを作るようになったんです。ニューオーリンズ周りのアーティストのバックをやるようになってからは、そこで得たものをバンドの音に反映しているのかなという感じもありますね。どの作品もカッコイイ。ハイハットが異常にデカいデビュー作も好きだし、このラスト作『New Directions』は凄いバンドになったんだな……と感じるアルバム。普通に、イイ曲だな~(しみじみ)という曲がいっぱいあるんです(笑)」

――ハハハ(笑)。

「ミーターズのなかでいちばん良曲だと思うのが、このアルバムに入ってる“Be My Lady”。こんなバラードなのにベースにワウがかかっているという」

【参考音源】ミーターズの77年作『New Directions』収録曲“Be My Lady”

 

――聴き心地がおもしろい! すごくイイ曲ですね。

「メロディーもいまっぽい感じですよね。R・ケリーあたりが歌ってても良さそうだなと思いました。ヴォーカルもどんどん良くなっていくんですよ。こんなのを平気で放り込んでくる。で、1曲目がこれ」

【参考動画】ミーターズの77年作『New Directions』収録曲“No More Okey Doke”

 

「iPhoneで聴いてもドラムとベースがデカイ(笑)」

――フフ(笑)、でもそこが醍醐味だと思います。個人的にはそうあってほしい。

「リズム楽器をやってるボーイズ&ガールズはぜひ聴いてほしいバンドです、やはり――と言うのは簡単なんですけど、やっぱり楽器を始めたばかりの人にいきなりミーターズって言ってもおそらく難しいと思うんですよね……。実はこの間、母校のブラスバンド部にサプライズでコーチをしに行ったんです。そこではアース・ウィンド&ファイアの“September”を練習していて、みんな上手いじゃんと思ったんですけど、やっぱりブラック・ミュージック特有の〈裏〉の取り方が難しいみたいなんですよね」

【参考動画】アース・ウィンド&ファイアの78年のシングル“September”

 

――あ~、なるほど。日本人が自然に身につかない感覚ですしね……。

「裏の取り方然り、どこを強調するか、どこで遊べるか、といったことですね。でもそれはこういう音楽をたくさん聴くことによって引き出しが出来ていくと思うから、いいなと思ったら早いうちに聴いておくといいんですよ」

――ベース、ドラムをやってる人は特に。

「そうですね。聴き方も変わりますし。リズム隊にとってブラック・ミュージックはすごく重要で、そもそもリズムが大事だと考えられている音楽だから単純に(リズム隊の)音がデカイんですよ」

――そこは大事ですね。

「わかりやすいなと思って。難しいんだけどわかりやすい。まあ黒人/白人とで分けて聴いてるわけじゃないだろうし、そんなことを気にする必要もないけど、とにかく楽しんでやれればいいねという話をしてきました。この連載では聴いておいて損はないものしか紹介してないから、〈騙されたと思ってでも〉聴いてみてほしいです(笑)」

――うんうん。

「ちょっと脱線しちゃいましたが、とにかくミーターズは僕にとって分岐点になったバンドで、デビューしてこの5年間、いろんなところで紹介してきたくらいお手本的な存在です」

――ちなみに、ハマくんがミーターズのアルバムでいちばん好きなのはどれですか?

「アルバムで言ったらこれ(『New Directions』)かも! ファーストももちろん好きなんですけど、あの作品は言ってみれば〈一音だけ変えました〉みたいな曲ばっかりで(笑)、黒い演奏とはこれだ!という教科書みたいな作品。でもミーターズの凄いところは音像、出音がずっと変わらないところ。〈どれを聴いてもミーターズ〉っていう感じが好きなんですよ」

――記名性があるということでしょうか。

「そうですね。誰かのバック・バンドをやるにしても、〈ミーターズ〉っていうブランドでその人の作品にプレミアを付けられる音ですよね。日本だったら井上堯之バンドとか、ドラマーですけどスティーヴ・ジョーダンのように〈名前を背負った音〉を鳴らせるところが魅力だと思います」

【参考動画】スティーヴ・ジョーダンが参加しているジョン・メイヤー・トリオの2005年のシングル
“Who Did You Think I Was”

 

PROFILE:ハマ・オカモト


OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『Let It V』も大好評のなか、奥田民生RIP SLYMEらを招いたコラボ・アルバム『VXV』(ARIOLA JAPAN)も絶賛リリース中! 12月3日(水)は大阪・umeda AKASOで、5日(金)は東京・恵比寿LIQUIDROOMにて、盟友・黒猫チェルシーとの合体バンドによるイヴェント〈ミュージックヒストリーグレイテストゴールデン☆ヒッツラボセミナーゼミナール研究所〉を昨年に引き続き開催! 両者が所属するSMAの40周年をお祝いするスペシャル・ヴァージョンになるとのこと、どんな催しになるのか楽しみですね! そのほか最新情報は、OKAMOTO'SのオフィシャルサイトへGo!

【参考動画】OKAMOTO'Sの2014年作『VXV』収録、奥田民生とのコラボ曲“答えはMaybe”

 

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