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覚悟と決意を込めた“ストレンジ カメレオン”、絶望と希望を歌う“ハイブリッド レインボウ”

失意の底で山中は誓う。もう誰の言うことも聞かない。売れることなど考えず、やりたい音楽だけをやる。バンド人生が終わってしまうかもしれないという覚悟を持って、真鍋と佐藤にその旨を打ち明けたところ、2人は即答で想いを受け入れ、「元からお前の好きなようにやればよかったんだよ」と返したのだった。

築いてきたスタイルをかなぐり捨てるというメンバーの主張は、レコード会社に当然の如く反対されるも、強行突破でリリースへと漕ぎ着ける。不退転の決意を込めたその作品こそが、ピロウズにとっていちばん大切な曲と言っていい“ストレンジ カメレオン”だ。

すべての悲しみを包み込むようなサウンドに乗せ、嘘のない感情が生々しく滲む。サビの〈君といるのが好きで あとはほとんど嫌いで/まわりの色に馴染まない 出来損ないのカメレオン〉には、メインストリームでうまくいかなかった自分たちの孤独と葛藤が。〈優しい歌を唄いたい 拍手は一人分でいいのさ/それは君の事だよ〉には、この音楽を支持してくれる人がいると信じたい気概が。最終行の〈君と出会えて良かったな/Bye Bye 僕はStrange Chameleon〉には、これでダメだったら辞めるというシリアスな胸中が。

まさに背水の陣で放った“ストレンジ カメレオン”だが、長くて暗い曲だから売れないというレコード会社の否定的な見解に反し、多くのリスナーの心を打ち、この時点までで最大のシングルヒットを記録。メンバーの結束も強まり、バンドのターニングポイントになった。ついに風向きが変わり始め、スランプを抜けたピロウズは第3期へと移行する。

the pillows 『Please Mr.Lostman』 キング(1997)

“ストレンジ カメレオン”のあとも“Swanky Street”“TRIP DANCER”と追い風を感じさせるリリースは続き、それらを収めた5thアルバム『Please Mr.Lostman』が完成。メンバーが〈音楽業界への遺書〉と語った同作以降、ピロウズは本格的な黄金期に突入し、思い描いていたバンド像をじわじわと確立させていく。躍進に弾みをつける会心の一撃となった、永遠に色あせない代表曲“ハイブリッド レインボウ”についても触れたい。

報われない苦難の日々が綴られた歌詞、静と動の対比がドラマティックな展開に心揺さぶられるなか、何よりグッとくるのはサビの爆発力だ。逆境を乗り越えた末に初めて見た虹、その情景を確かめるように〈Can you feel?〉と熱く叫ぶ、従来の楽曲では聴けなかった山中のシャウトが新鮮。負けじと激しく掻き鳴らす真鍋の轟音ギター、エネルギー渦巻くロックサウンドを引き立てる佐藤の剛柔兼ね備えたドラムも最高で、3人の信頼関係がグルーヴに美しく刻まれ、この上ないバンドソングが誕生した。

〈きっとまだ/限界なんてこんなもんじゃない〉〈ここは途中なんだって信じたい〉〈昨日まで選ばれなかった僕らでも/明日を持ってる〉――ピロウズの生きざまを反映させた、絶望と希望が入り混じったこの歌唱に、いったいどれだけの人が救われてきたのか。今後も不屈の闘志を蘇らせてくれる名曲として、“ハイブリッド レインボウ”は残り続けることだろう。

“ハイブリッド レインボウ”が収録された6thアルバム『LITTLE BUSTERS』の頃には、ライブの動員も増えるなど、少しずつ軌道に乗っていったピロウズ。絶好調だった1999年には、結成10周年に浸ることもなく、7thアルバム『RUNNERS HIGH』、8thアルバム『HAPPY BIVOUAC』と2枚の傑作をリリースし、低迷した時期があったのが信じられないほど、バンドを完全に立て直す。

また“LITTLE BUSTERS”にちなんで、メンバーはファンを〈バスターズ〉と呼ぶように。併せて〈バスター君〉という愛らしいマスコットキャラクターが生まれた。近年はミュージシャンやアイドルが当たり前に付けるファンネームだが、ピロウズが使い始めたタイミングはとても早い。こういった親しみやすさも、快進撃の一端を担ったのではないか。

the pillows 『LITTLE BUSTERS』 キング(1998)