音楽の記事が中心のMikikiですが、作家や写真家、映像作家、漫画家、演劇関係者など関わってもらう方は多種多様。そこで、音楽関係以外の表現者のみなさんが好きな音楽は?という興味からスタートさせたのが連載〈My Favorite Songs〉です。毎回、1人の選曲者が設定したテーマと、それにもとづく3曲以上の選曲を記事化。〈あの人がこの音楽を好きだったんだ〉という発見や、音楽とほかのカルチャーのクロスオーバーを楽しんでもらえたら幸いです。第3回は、クリエイティブ団体・老若男女未来学園の劇作や演出などを担当する森悟さんが登場。 *Mikiki編集部

★連載〈My Favorite Songs〉の記事一覧はこちら


 

選曲によせて

こんにちは。はじめまして。
老若男女未来学園という団体で演劇をやっています、森悟と申します。

今回私は〈もう解散してしまったアーティストの名曲〉というテーマでオススメの3曲を選んでみました。

演劇は一回きりの芸術であり、映像アーカイブの手法が確立されてきた昨今でも、生の観劇体験には代えがたい魅力があります。
音楽も同じように、音源や映像はいつまでも残るけど、解散してしまったアーティストの生のパフォーマンスはもう二度と味わうことができません。

でも私たちは、収録された公演の映像や解散したアーティストのCD音源から、当時の熱狂をすこしでも感じ取ろうと目を凝らし、耳を澄ませます。
そんなふうに聴いてみてほしい3曲です。

 

ゆらゆら帝国 ”恋がしたい”
(2003年作『ゆらゆら帝国のめまい』収録

ゆらゆら帝国 『ゆらゆら帝国のめまい』 ユニバーサル/ミディ(2003)

ゆらゆら帝国については私があえて何かを語るまでもないと思います。私が知る頃にはすでに解散して、伝説になっていました。

数ある名曲の中でも、女性ボーカルが入ってなんとも艶めかしい魅力が醸し出されているこの曲が私はいちばん好きです。この女性が何者なのかはあんまり詳しくないので知りません。だれか教えてください!

 

sora tob sakana ”広告の街”
(2016年作『sora tob sakana』収録曲

sora tob sakana 『sora tob sakana』 FUJIYAMA PROJECT JAPAN(2016)

とにかく解散や脱退が多いことで知られるアイドル業界ですが、2020年のsora tob sakana解散の衝撃はかなり大きなものだったと聞いています。私は解散してから聴き始めたのでよく分かりません。

音楽プロデューサーの照井順政氏によるポストロックのサウンドを基調とした実験性豊かな楽曲に、余計な媚びのない無垢な歌声が絶妙なバランスで乗っかって、唯一無二の音楽性を生み出しています。すごい!

 

the pillows “LITTLE BUSTERS”
(1998年作『LITTLE BUSTERS』収録曲)

the pillows 『LITTLE BUSTERS』 キング(1998)

今回紹介する中で、唯一生で聴いたことのある曲です。というのも、the pillowsが解散を発表したのはつい最近、2025年2月のこと。もちろん驚いたし、悲しくもありましたが、事前告知なしの突然の解散発表はめちゃくちゃクールでいいなと思いました。 

大学生になったばかりの頃、初めて自分でチケットを取って見に行ったライブがthe pillowsのライブでした。ダイアモンドホールでこの曲のイントロを聴いた瞬間の感動を今でも覚えています。そういう演劇をつくれたら最高だ!

 


INFORMATION
老若男女未来学園
演劇(    )公演
『もういい、俺は死後評価されるタイプの芸術家で』

■公演日程
2025年6月7日(土)・8日(日)
7日(土)13:00/16:00/19:00
8日(日)12:00/15:00/18:00
*受付・開場は開演の30分前
*上演時間40分程度(予定)

■会場
SCOOL
〒181-0013
東京都三鷹市下連雀3丁目33-6
三京ユニオンビル5F
(JR中央・総武線三鷹駅より徒歩5分)

■料金
2,500円(予約・当日共通)

■チケット取り扱い
R7ticket
https://r7ticket.jp/mouii2025

■出演者
掛橋浩美
相根優貴
森悟

■スタッフ
コンセプト設計:老若男女未来学園技術部
作・演出:森悟
音楽・サウンドデザイン・音響:nekami
照明:うめだ
エンジニアリング:まこぼうず
舞台監督・プロダクトデザイン:山田碩人
サポート:小藤琴

スーパーバイザー:金内健樹(盛夏火)

協力:盛夏火
主催:老若男女未来学園

■お問合せ
老若男女未来学園 制作部
MAIL:ronyaku4444@gmail.com

この公演は、私たちが第15回せんがわ劇場演劇コンクールで上演する演目を、2週間後、全く異なるSCOOLという会場で再び上演しようという試みです。
また、本作は2018年に名古屋で上演した作品を、実に6年半の時を経てリメイクするものでもあります。
2018年→2025年の私たちを取り巻く社会の変化を感じながら創作し、せんがわ劇場→SCOOLの空間の変化を感じながら上演を行うことで、この時代、この場所ならではの作品となることを目指します。

タイトルに示されているのは「前向きな諦め」の姿勢です。
2018年の初演時、私たちは自身の感知し得ない死後の世界に希望をもつことで、現状への悲観を和らげ、心を楽にする生き方を作品のテーマとして掲げていました。
しかし、そんな「諦観」は2025年の今でも有効といえるのでしょうか。自身の精神の安定のために現状から目を背ける(認める)という行為は、様々な問題を抱える現代の社会構造に加担することになるのではないでしょうか。

2025年の私たちの価値観でこのタイトルを再解釈し、技術部で策定するコンセプトに基づいた演出手法により表現します。
ぜひお友達やご家族、職場の同僚の皆さまと一緒にご来場ください。

 


PROFILE: 老若男女未来学園

演劇を中心とした幅広い芸術分野での活動を画策するクリエイティブ団体。2017年、名古屋にて旗揚げ。日常にユーモアをねじ込むスタイルを広く人々に提案し実践してもらうことで、めちゃくちゃおもしろい世の中の実現をめざしている。作家や俳優の他、メディアアーティスト、プロダクトデザイナーなど多様なメンバーが在籍。かながわパフォーミングアーツアワード2024オーディエンス賞受賞、第15回せんがわ劇場演劇コンクール出場。
HP:https://ronyaku.com/
X:https://x.com/ronyaku4444
Instagram:https://www.instagram.com/ronyaku44/