自由度を増したサウンドによって、より鮮やかに色付いた少年の冒険物語――二人がブランクペーパーに描きはじめた新しい地図とは?
「二人での音楽活動を始めて、原点に立ち戻った感じがありますね」(上野啓示、ヴォーカル/ギター)。
サポート・メンバーの力を借りず、二人で回った昨年のツアーが大きな転換点だったのだと、いまにして思う。カミナリグモが鳴らす音楽の最大の特徴である、空想と現実の間を心地良く漂うような物語性にフォーカスした、シアトリカルなステージ。それはみずから〈二人の作品としてのデビュー作〉と語る、2年4か月ぶりのオリジナル作品『続きのブランクペーパー』への布石だった。
「ghomaちゃん(成瀬篤志、キーボード)が足元でトラックをオン/オフして、僕は照明の切り替えを足元でやって。ステージ・セット、照明、音響、全部連動させて、来てくれた人がより楽曲の世界観に浸ってもらえるようにしたいと思ってました。そういうやり方が向いてる二人だと思うんですよ」(上野)。
「音楽をやる前に距離が近くなるというか。お客さんも〈そういうことがしたいんだな〉ってわかってくれたんですよね」(ghoma)。
そんな経験を経て完成した新作は、すでにライヴでお馴染みの“ブランクペーパー”を核とするコンセプト作。生演奏+打ち込みのトラックを駆使したカラフルな音色のポップ・アルバムでありつつ、これまで以上に言葉の力がダイレクトに伝わる6曲入りだ。
「“ブランクペーパー”は、二人でやっていく意志を固めた時期に書いた曲です。〈真っ白な紙に地図を書いていこう〉というテーマは、二人の新しいテーマソングとしてぴったりじゃないかと思ったのと、これから春になると、そういう気持ちになる人も多いと思うので、季節感もしっくりきて。書きながら、とても感動的な気分になってました」(上野)。
「いろんなイマジネーションが散りばめられた音になってると思います。“サバイバルナイフ”には力強いロックな部分もあって、“Pale Purple Sky”みたいなチップ・チューンもあるし、いろんな音の可能性をうまく積み込むことができました」(ghoma)。
そして、聴き終えたあとの心にじんわりと広がるのは、少年が主人公の冒険青春ドラマを観たようなワクワク感。明るい光に導かれ、カミナリグモの新たな一歩はここから始まる。
「自分たちの未来に向けて、いままでにない良いイメージがあるんですよ。自分たちなりのやり方で、このままやっていけばいいと思うし、これから世界がもっと広がっていくような気がすごくしています」(上野)。