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山中さわおの書く曲に胸打たれる理由

山中さわおのソングライティングに関して、もう少し掘り下げてみたい。真っ先に伝わる魅力はなんと言っても、どこまでも瑞々しいメロディ。“I think I can”“ターミナル・ヘヴンズ・ロック”のように、再生した瞬間から楽しくなれる曲がピロウズにはたくさんある。

じっくりと曲を聴いてみれば、まだエゴのコントロールができていない思春期のナイーブな少年の姿が歌詞の中に見えてくるはず。〈皆いったいどんなシステムで/感情をコントロールしてるんだ〉と叫ぶ“Blues Drive Monster”、〈自分勝手で大人気なくて/気分次第で迷ってばかり/タチが悪いのはそんな時も/間違った事を認めない〉と内省する“確かめに行こう”など、山中の歌に憂鬱や孤独の色が濃いのは、10代から20代にかけての人格形成期にいろいろなことが思いどおりにならなかったという彼自身の経験が大きい。

ただ、憂鬱や孤独に酔いしれる感じはまったくない。むしろ、山中の書く曲には〈なりたい自分になりたい〉という願望ゆえの葛藤が描かれており、そうやって前を向くマインドが“Funny Bunny”の耳に残るサビ〈キミの夢が叶うのは/誰かのおかげじゃないぜ〉に繋がっている。“その未来は今”“No Surrender”“About A Rock‘n’Roll Band”なども、背中を押してくれるメッセージが好印象。

やりたくないことはしない。プライドは譲らない。絶対に媚びない。第1期~第2期の失敗を通して学んだ己を貫く姿勢も、歌詞にはたびたび登場。〈全てが変わっても/僕は変わらない〉と宣言した“Fool on the planet”、〈審査員は自分自身の他に/誰もいらない〉のフレーズが清々しい“New Animal”をはじめ、どの曲にも山中の生きざまや信念がダイレクトに表れていて、そこを認識するとピロウズの説得力はさらに増す。

時代や業界に流されなかったからこそ、流行の音楽とは異なる輝きを獲得できた。ピロウズほど正直に活動し続けたロックバンドは思い浮かばない。気難しく見えてしまうくらいに生真面目で、捻くれているようでまっすぐ、不器用だけど誠実。コンポーザー・山中さわおのそういった人間性が愛すべきポイントで、唯一無二のポジションを築くことになった要因のひとつと言える。

“Ladybird girl”“パトリシア”といったラブソング、ささくれ立った英語詞曲、胸躍るインストを含め、楽曲は非常にバラエティ豊か。感受性が強くて人間くさい山中の作風は、ロックの持つ爆発力や反骨精神と相性が良く、鬱屈した気分に寄り添ってくれる、人生の道標になってくれる、これは自分の歌だと思える曲が多いのも特徴だ。

the pillows 『Fool on the planet』 キング(2001)

 

サウンド面に見る揺るぎない個性

ピロウズといえば、サウンドのポップな響きもインパクト大。爆音が轟く“ハイブリッド レインボウ”のサビ、“アナザーモーニング”“LAST DINOSAUR”“Sad Sad Kiddie”に代表される、ファズギターの歪みをトレードマークに、程よい脱力感とユーモアを湛えた“Ride on shooting star”、ツインギターのアンサンブルを貪欲に追求した“サード アイ”“ノンフィクション”など、創意工夫に富んだナンバーは枚挙にいとまがない。

ザ・ストーン・ローゼズ、ライド、ザ・スミス、オアシス、ブラーなど、もともとはUKロックからの影響が濃かったピロウズ。山中の好みも変わってきて、第3期ではUSオルタナ的なサウンドへとシフトチェンジしていく。ピクシーズ、ザ・ブリーダーズ、ザット・ドッグ、ベックなどからヒントを得たアプローチが増え、キム・ディールの名をそのまま冠した“Kim deal”という曲もあったりと、あえてリファレンスを隠さないスタンスが痛快だった。

憧れた質感を積極的に取り入れ、サウンドの差別化に成功。そこに強烈な自我の薫る歌と詞が絶妙な塩梅で掛け合わされた結果、ピロウズは〈オルタナティブでポップ〉というバンドの個性を揺るぎないものにした。