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マリア・シュナイダーは僕にとって神様

――最初に買ったジャズのアルバムは?

「確か中3のときにカール・フォンタナのCD『The Great Fontana』を買いました」

――アル・コーンがサックスで参加している作品ですね。

「そうです。中高生の頃は速いパッセージを吹くとか、高い音を出すとか、そっちのほうに関心が向かっていました。自分もカール・フォンタナのように速く吹きたいと思って、真似しようとしたけど全然できなくて。

でも最近は、〈トロンボーンって音色だよな〉と強く実感しているところです。トロンボーンの中低音は人の声にとても似ていると思いますし、今回の『Flip the Switch』の収録曲でも“Ampil”、“Lux”、“Fallen Snow”、“Neverland”などはトロンボーンの音色でしか出せない世界観だと思いますので、テーマを吹くときはいつも緊張します。いい音で吹けているかな、と」

――中高生の頃はどんなレパートリーを演奏していたのでしょうか?

「ブラスアンサンブルでは、カウント・ベイシー、グレン・ミラー、ゴードン・グッドウィンのビッグ・ファット・バンドなどの曲がレパートリーの中心でした」

――そこからマリア・シュナイダーの音楽世界に魅了されて……?

「はい。だんだんとマリアに代表される今のニューヨークのビッグバンドが気になってきて、次はそっちをやりたいと思い、慶應義塾大学に進学しました。当時マリアの曲などをやっていたライト(慶應ライトミュージックソサエティ)に入って、コンテンポラリーをやりたかったからです」

――マリアのどんなところに魅力を感じたんですか?

「それまで演奏していたビッグバンドの曲は、〈疾走感があってかっこいい〉とか、〈迫力がすごい〉とか、そういうものだったのですが、マリアの楽曲には情景や人物のバックグラウンドが感じられたんです。〈この人はこういう人生を生きてきたんだな〉とか〈自然が好きなんだな〉とか、リスナーとして聴いているだけでそれが伝わってきたし、演者として譜面に向き合ったときにも大きな発見がある。

たとえばスウィングジャズだと、テーマがあって、全員でトゥッティ(総奏)を吹いて、みたいな曲が多いけれど、マリアの曲は1人1人の演奏がフレーズの一部になっていて……。マリアの曲をバンドの一員として吹いているだけでは、自分ではあまりよくわからなくて、〈ここは何のパートだろう?〉と感じます。なので1人で練習していると何もつかめないのですが、20人ぐらいのビッグバンドで音を出すと〈自分はこの役割だったんだ〉とわかってくる。譜面を読んで演奏していくにつれて発見が増えるというか、噛めば噛むほど味がするというか。それがすごく楽しくて、大学4年間はコンテンポラリーなビッグバンドサウンドを追求していました」

――そして、池本さんのアンサンブルislesは2024年に〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇〉でマリアと共演なさいます。語り草となるステージでした。

「本人の指揮でマリアの曲を演奏したのは、多分ニューヨークのマリア・シュナイダー・オーケストラとislesだけだと思います。僕にとってマリアは神様なので、本当に嬉しくて、これで死んでも悔いはないと思いました(笑)」

――KOBEjazz.jpに掲載されていたインタビューで「楽しい感じを出せれば、聞いている人も楽しいし、音楽もイキイキする」とおっしゃっていましたが、こう考えるようになったのは?

「大学の頃からずっと考えています。〈YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST〉に4年連続で出たんですが、大会となるとみんな緊張するけど、僕だけはずっと笑顔でした。〈大会、楽しい〉みたいな感じで(笑)、審査員の方にも、〈トロンボーンの方がずっと笑顔だったのが印象的でした〉というコメントをいただいたりして。

楽しむことを昔から大事にしていますし、作曲するうえでも、今回のアルバムを録音したクインテットの演奏でも、聴いている人を飽きさせないことを大事にしています。曲をどう展開させるのか、意外性をどう出すのかということを一番気にかけています」