(左から)あゆな、りさ

このたび初作品集となる『森が好きe.p.』をリリースするデュオ、リリィ・シュリンプ。どこか懐かしい響きを湛えたフォーキーチューンから溌溂としたギターロックナンバーまで収めたこの1枚の特徴を成しているのは、〈りさ〉と〈あゆな〉が紡ぐたおやかなボーカルハーモニーだ。

歌の端々からいかにも親密な様子が伝わってくるその声の主たちの関係をじっくり探るべく今回ふたりの元に馳せ参じたわけだが、性格がぜんぜん異なるのに絶妙なコンビネーションを発揮しながらここまでさまざまな物事に対処してきたこのコンビのユニークさが垣間見えるようなインタビューになったと思う。

なおメインソングライターであるりさは、かつてSUGARCLIPというバンドのフロントパーソンを務めた谷内りさとして広く知られる存在でもあるが、リリィ・シュリンプ始動に至るまで音楽活動を長らく休止していたという経緯がある。そんなSUGARCLIPの音源を1枚にまとめたファーストフルアルバム『SUGARCLIP』も同時リリースされるとのことなので、併せてお話を伺った。

リリィ・シュリンプ 『森が好きe.p.』 miobell(2025)

 

ユニットで活動するつもりじゃなかった――リリィ・シュリンプ結成秘話

――『森が好きe.p.』がどのように出来上がったのか。そのストーリーをお話しいただきたいのですが。

りさ「活動がスタートしたのは2024年の9月。私は2020年から音楽活動を休止していて、現在は会社員として働いているんですね。

で、昨年あゆながライブイベントの企画を自身で始めた頃、ちょっと出演してみない?って誘いがあったんです。私としては、ひさしぶりに人前で歌うのも楽しいかな、って気持ちで出演してみたんですが、その次もぜひ、ということですぐに2回目の出演が決まってしまって。

そのあと、島根県匹見町に住んでいる友人が運営しているキャンプ場で行うイベントへの出演依頼があり、出るんだったらふたりで出ようよ、という話になったんだよね?」

あゆな「ふたりで出演することが決まった。やるんだったら、りさが作った“森が好き”が前々から好きだったから〈せっかくだし、あの曲やらない?〉って提案したんです」

りさ「その際、ユニット名は?って訊かれたんだけど……」

あゆな「特に決めてなかった」

りさ「なんとなく可愛い単語を探してつけたのが〈リリィ・シュリンプ〉。ただ実際は私が体調不良になって、ライブはあゆながひとりで参加することになったんですけどね(笑)。でもそれがきっかけでユニットとして動き出すわけです。だから最初からユニットで活動しようと考えていたわけじゃなかった」

――ほとんど成り行きで動き始めた感じだったんですね。

りさ「あと、あちゃん(あゆな)がめちゃくちゃSNS運用に長けていて、やろうと決めたらInstagramとXとYouTubeを一気に開設しちゃって、ライブイベントの映像などをバンバン発信し出したんです。それもあって、たった1か月ほどの期間に活動に向けて動き出していったって感じ」

――あゆなさんの勢いがハンパなかったと。

あゆな「なぜそうしたかと言いますと、谷内りさが活動休止した空白の5年間、再開を待ち望んでいた方がすごくたくさんいて、私もそのうちのひとりだったんです。もう一度ステージで歌っている姿を観たい、って気持ちからイベント出演を依頼したところもありました。

それに、りさちゃんがまた歌い出すことに注目する方たちが、私の思っている以上にいて、次はいつ観られるんですか?っていう期待混じりのお言葉をたくさんもらったんです。私のように“森が好き”のファンも数多くいて、あの曲をまた聴きたい、ってラブコールがたくさんあったことも影響している」

りさ「ここからEPへと至る話になるんですが、ライブで使えるものがないかと過去の自作曲を漁っていたんですね。それで懐かしい映像とかが出てきたので、それをSNSで発信していたら、それをたまたま黒須さん(miobell recordsの黒須誠)が見てくれていて。そのタイミングで、共通の知り合いのイベントで偶然再会を果たしたときに、SNSにあげてる音楽いいね、ぜひ形にできない?ってお声がけいただいたんです。ちょうどユニットを組んで1、2か月経ったぐらいの頃だったし、あちゃんに相談して、じゃあ、いっしょにやってみようか?って話になりました」