ENJOY MUSIC CLUBのメンバーとしても知られる江本祐介。2016年の“ライトブルー”を筆頭にソロ名義でも爽やかなポップソングを世に出してきた彼ですが、2020年の夏頃から活動を止めていました。その理由を尋ねると……。
「やっぱりコロナが大きかったです。気持ちが外に向かなくなった。その期間に音楽と関係のない会社で働きはじめたんです。でも、そこで同僚の人とコミュニケーションできたのがよかった。社内に音楽好きなおじさんがいて、彼の影響でまた音楽も聴くようになって」。
加えて、近しかったミュージシャンの活動にも刺激を受けたそう。
「2023年に入って夏目(知幸)さんがSummer Eyeで『大吉』、(元・昆虫キッズの)高橋翔さんが『イシュ』を出したじゃないですか。どんなことをやっているんだろう?と聴いたら2作ともめちゃめちゃよくて。そこで、俺も何か作りたいなと思ったんです」。
そして完成したのが、2月に配信リリースされたファースト・アルバム『ありがとう』。作詞作曲はもちろん、すべての楽器の演奏/録音/ミックスまでをみずから担った本作は、モッズ・ロックなオープナー“アンドゥトロワ”、宅録ソウル“日曜”、フォーキーな“17mg”と、人懐っこいソングライティングと彩り豊かなアレンジが聴き手の心をウキウキさせてくれる。
「“アンドゥトロワ”は同僚の恋愛話から思い浮かんだ曲。“17mg”は僕の煙草への愛情ですね。タイトルは自分が吸っているハイライトのタール数」。
アルバムの後半には、ブラジリアン・リズムがゴキゲンな“xxx”、オアシス“Whatever”を想起させるバラード“じゃ、また”などを収録。
「“xxx”の〈あなたにいいことがいっぱい起きますように〉という歌詞は、その働いていた会社を辞めるときにもらった色紙に、そこまで仲良くなかった社員の女性が〈江本さんにいいことがいっぱい起きますように〉と書いてくれて。この言葉を使いたいなと思ったんです」。
さらに、自己肯定感を持てないときの心象を歌ったメロウな“i want to me”は本作『ありがとう』のなかでもとりわけエモーショナルな楽曲だ。
「この曲を作ったときは暗すぎるかなと思ったんですけど、入れてみました。そういう自分の暗いところや個人的なことを書けたのがアルバムを作ってよかったこと。自分自身を歌えたからか、いまは弾き語りのライヴをたくさんしたいと思っています。日本全国の小さな場所で歌いたいですね」。
江本祐介:ラップ・ユニット、ENJOY MUSIC CLUBの一員でもあるシンガー・ソングライター。2020年以降の活動休止期間を経て、このたびファースト・アルバム『ありがとう』を配信で発表したばかり。