
共通点が多いドリアン・コンセプトによる緻密なリミックス
――新プロジェクト〈Concordia〉では、yumaさんのシングル“Concordia”のほか、3人のミュージシャンによるリミックス、さらにミュージックビデオも制作しています。リミックスを出すことにしたのはなぜですか?
剣持「リミックスは僕から相談しました。CM音楽もそうですが、音楽そのものが評価されたとして、そのままリリースするだけで聴いてもらえるかというと、必ずしもそうではない。〈今僕らがやるとこういうことができる〉ときちんと表現したかったんです。
その前提で、こういう機会でもなければ依頼することもなさそうなリミキサーにお願いして、よりよいものに仕上げようと思ったことがきっかけでした。リミキサーの選定については、2人で話し合いましたが、基本的最終的にはyumaさんに委ねました」
yuma「面白いことをやってくれそうな人を考えて、自然に決まっていきました。
ドリアン・コンセプトは昔から好きだったので、メールを送ってみたんです。そしたら案外、共通点が多いことがわかって。初めてビデオ通話したときに、話して数分でお互い〈あれっ?〉ってなった。たとえば、僕は妻がアメリカのミネソタ出身なんですけど、ドリアン・コンセプトも父親がミネソタ出身らしく、実家が車で30分ぐらいの距離なんです。それに、ドリアン・コンセプトと僕は歳が一緒で、子供の年齢まで一緒。で、彼が僕の曲を聴いてくれて、構造が似ているものがあるよねって話したり。すごい盛り上がった(笑)。彼は気に入ったものしかリミックス仕事は受けないみたいなんですが、今回受けてくれて光栄でしたね」
――特に好きだったドリアン・コンセプトの作品はありますか?
yuma「『Joined Ends』(2014年)に収録されている“Draft Culture”が彼の音楽を聞き始めたきっかけです。アルバムとしては『The Nature Of Imitation』(2018年)が一番好きで。
そういう話も本人にしたんですが、上がってきたリミックスを聴いたら、最近のドリアン・コンセプトだけではなく、そのあたりのバイブスも感じたんです。だからいちファンとして嬉しかった。最新のドリアン・コンセプトも感じさせつつ、僕が初めて聞いたときに感動したその頃の要素もあるので、面白いリミックスだなと」
剣持「僕もyumaさんとドリアン・コンセプトは似てるなと思っていたんです。音楽的な価値観とか。だから彼がyumaさんの曲にどうアプローチするんだろうと興味津々だったんですが、出来上がったのを聴いて、逆に2人の違いがわかったというか。
yumaさんの“Concordia”は、ピアノや木管みたいに楽器として昔から使われているものでオーケストレーションにアプローチしている。けれどドリアン・コンセプトはサウンドデザインで考える人なんだなと感じました。音作りの緻密さがyumaさんと別の意味で際立っている。そもそもデモ音源の時点で明らかに音像のクオリティが高くて」
yuma「ディテールがすごすぎましたね。初めてですよ、あそこまでのクオリティは。素材が自分の曲だから、僕にしかわからない部分もあるんですけど、やっぱりディテールが世界トップレベルだと思いました。なんとなく配置した音が一つもない。1個1個の音に意味がある。すごく手がかかっていると思います」

同志・坂東祐大の遊び心あふれる異質なアプローチ
――坂東祐大さんのリミックスはいかがでしょうか?
yuma「坂東くんは〈同志〉と感じているんですよ(笑)」
剣持「わかります。坂東さんも劇伴をやっていらっしゃることが多いですけど、坂東さんもyumaさんも映像音楽とはまた別のものを持っているなと感じます」
yuma「坂東くんも僕もきっと〈劇伴作家〉ではないですよね。坂東くんにとってメインの表現の場所は現代音楽だと思います。でも、著名なアーティストのプロデュースやアレンジをしたり、広告音楽もたまに作ったり。僕もユゲで広告音楽をたくさん作ってきて、自分が魅力を感じるアーティストのアレンジを手伝ったり、『NotAnArtist』や今回の“Concordia”を出したりと、自分の作品も残したいと思っています。一つのところに囚われず、それでいて今まで聴いたことのないものを作りたいというところで、共感できるんです。
坂東くんと初めて会ったのは2年ぐらい前。でも共通の知り合いがたくさんいて、出会った瞬間から〈同志〉だと感じました」
剣持「最初にオーダーしたのは坂東さんでした。実は僕がリミックスを最初に聴いているんですが、お願いしてから4日ぐらいで上がってきた(笑)。ただ、完成形ではないということで、その時点ではyumaさんに聴かせなかったんです。
その後、4カ月ぐらい経って完成したんですが、第一印象は〈yumaさんをリスペクトしているから成り立つリミックスだ〉ということでした。非常に異質なリミックスだと思います。かなり手を加えているし、拍子のアプローチも面白い。yumaさんと坂東さんの関係性がなかったら絶対にできないリミックスだなと。愛があるからこそこんなふうにできるんだなと」
yuma「その通りだと思います。リミックスを頼んであの音が届くとは思わないですよね。フレーズは変えていないけど、組み立て方と展開の違いで、あそこまで別のものになるのはさすがだと思いました。
でも、音のテクスチャーは坂東くんだなというのは一聴して感じました。坂東くんの音楽には独特の手触り感があるんです。僕にはないチャーミングな遊び心があるというか」
剣持「インテリジェントですよね。アプローチの仕方が、現代音楽がしっかり下地にある人だとわかるというか」