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高機能BGMとしてYouTubeから世界へ拡散

柴崎「その意味でシティポップブームがあったことは大きいと思いますし、インターネットの影響力はやはり大きいですよね。カシオペアの『MINT JAMS』が数年前からYouTubeでめちゃくちゃ再生されてきたとか、そういう状況が生まれていた。

自分がフュージョンのリバイバルを認識したのもシティポップの流れで、2010年代後半、YouTubeで竹内まりやの“プラスティック・ラヴ”がやたらレコメンドされていたのとほぼ同じ時期だったと記憶しています。“プラスティック・ラヴ”の動画の下に『MINT JAMS』が出ていたんですね。あの当時、シティポップを新しい感覚で聴けるようになったからこそ、フュージョンも〈歌のないシティポップ〉として聴ける感覚になったわけです。

実際、ヴェイパーウェイヴやフューチャーファンクでサンプリングされ、YouTubeなどのプラットフォーム上でもオリジナル音源が浸透し、という流れもシティポップ復権の過程とほぼ同じですし」

――YouTubeなどで日本のフュージョンが広く聴かれるようになったのはここ数年でしょうか?

柴崎「そうでしょうね。当初一部のミレニアル世代の間で角松敏生さんの『SEA IS A LADY』や堀井勝美PROJECTなどが人気を集めていたり、オタクたちは面白さに気づいていた。もちろん、いま言ったようにヴェイパーウェイヴという連動的な現象もあった。そういう流れでインターネットネイティブの感性にフュージョンが浸透していったんだと思います。

菊池ひみこさんなど、プロパーのファン以外や下の世代に知られていなかった音楽家の作品が突如リバイバルしたのは、いかにもネット文化的な意外性があって面白いですね。菊池ひみこさんの『FLYING BEAGLE』は、おそらくジャケのインパクトが大きかったのも要因の一つで、『MINT JAMS』にしろ高中のベスト盤『ALL OF ME』にしろ、ジャケの魅力やキャッチーさが大きくてサムネイル文化と相性がよかったわけです。

フュージョンというのは、先ほど話した楽器演奏文化と結びついているという意味で、もちろんハードリスニングもできる音楽ですが、BGM性も抜群に高いから作業用音楽としてかけっぱなしにすることに適していて、流している間にいつの間にか好きになっちゃう、という回路がある気もします」

栗本「インストのローファイヒップホップと同じ感覚で聴けるんですよね。YouTubeにある外国人のコメントによく〈Chill〉というキーワードが出てくるのは、まさにBGM感覚で聴かれている証拠ですね。あとDJが注目したのは、レコードが安かったからというのもあると思います」

柴崎「そうですね。レアグルーヴは元々安価なレコードの発掘から発展してきたわけですから。ニューエイジリバイバルも同じで、フュージョンもその意味でブルーオーシャンだった」

 

ゲーム文化との意外な好相性

柴崎「あと、ビデオゲーム文化との相性のよさも大きいんじゃないかなと。海外のゲームファンって、妙に日本のフュージョンが好きな人が多いんです。近藤浩治さんが作った『スーパーマリオ』の音楽にTHE SQUARE(現T-SQUARE)の“SISTER MARIAN”のフレーズと瓜二つのものがあったりするんですが、それを海外ゲームファンが熱っぽく解説する動画もアップされています。

他にも、例えばレースゲーム『グランツーリスモ』の音楽をT-SQUAREの安藤正容さんが作曲していたり、実際にゲーム音楽をフュージョン系のミュージシャンが作っていることもたくさんありますし。ミレニアル世代のゲーマーがなぜジャパニーズフュージョンにハマりがちかというと、シティポップとアニメの関係性と同じく、きっと幼少期に刷り込まれていたからで、ノスタルジーも関係しているんですよね」

――わかります。私が子どもの頃に好きだったプレイステーションのRPG「アークザラッド」も作曲が安藤さんで、フレーズが複雑だったり変拍子を多用していたり、サウンドトラックが面白いんです。

柴崎「ミレニアル世代以降の海外フュージョンファンの母体にはアニメなどジャパニーズカルチャーが好きな人たちがいると思うので、ビデオゲーム文化とのリンクも自然に感じます。このコンピの続編があるとしたら、ゲームサントラから選曲してみるのも面白いかもしれませんね」