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まだ生きているかぎり

 また、メンバーの4人に加えて、ツアー・メンバーでもあるベースのアンドリュー・マッキニー、ヴァイオリンのエマ・スミス、パーカッションのアダム・ベッツら、本号表紙にも登場しているミュージシャン5人も全面的に貢献。パルプ・サウンドを特徴づけてきた壮麗なストリングスは、今回、弦楽四重奏のエリジアン・コレクティヴが担っており、チェリストのローラ・ムーディはいくつかの楽曲でアレンジも手掛けた。時流のアンビエント・ジャズを思わせる優美な“Farmer’s Market”、DNA配列の数字を読み上げるコーラスが緊迫感をもたらす“My Sex”などは、ポップソングの定型から逸脱する展開が敷かれており、モダンな実験性が耳を引く。さらに、チリー・ゴンザレスがジャージー・クラブ的なリズムの導入を提案したらしい(が、スロウなテンポでまったく別物に仕上がっている)“Slow Jam”は、そのゴンザレスやエールと共作を続けてきた、ジャーヴィスのソロでの作風とも重なる。

 パルプの元ツアー・ギタリストで、現在はシンガー・ソングライターとして高く評価されているリチャード・ハーレイの作曲で、かのブライアン・イーノ一家がコーラスを加えたホーリーなバラード“A Sunset”で終える『More』は、パルプやジャーヴィスのキャリアを通じた盟友が多く集っており、その面では集大成的な作品でもある。楽曲が作られた時期も、パルプの98年作『This Is Harcore』の頃から最近まで、幅広いタームを包括しているようだ。若い頃の盲目的な片想い、夫婦喧嘩のあとの最低な気持ち、親離れしていく息子に感じる寂寥……歌詞のヴェクトルはさまざまで、いずれもジャーヴィスらしい悲哀やおかしみで色付けられているが、人間への眼差しはいつになく深い慈しみを湛えている。

 当然、スティーヴ・マッキーが亡くなったことも大きな影響を与えているようで、〈僕らがまだ生きているかぎりは〉と、パルプとしての創作に向かったそうだ。本作のステイトメントで、ジャーヴィスは〈このアルバムを、スティーヴ・マッキーに捧げる。これが、俺たちにできる最高の作品だ〉と綴る。95年の『Different Class』のように時代の金字塔ではないかもしれない。それでも、『More』はバンドの歴史と現在を肯定する、パルプにとってもっとも大切な作品になったことは間違いない。

左から、ジャーヴ・イズ名義での2022年のサントラ『This Is Going To Hurt』(Rough Trade)、リチャード・ハーレイの2024年作『In This City They Call You Love』(BMG Rights)

ジェイムズ・フォードがプロデュースした近年の作品を一部紹介。
左から、ブラック・カントリー・ニュー・ロードの2025年作『Forever Howlong』(Ninja Tune)、フォンテインズDCの2024年作『Romance』(XL)、ラスト・ディナー・パーティーの2024年作『Prelude To Ecstasy』(Island)