ポスト・パンクからブリット・ポップ、そして現在――50年近くに及ぶパルプのヒストリーをプレイバック!!
〈ブリット・ポップ〉の象徴的な存在として(望まずとも)語られるパルプだが、知られているように相当な遅咲きで、その始まりは78年まで遡る。シェフィールドに住む15歳のジャーヴィス・コッカーが友人らと結成し、ジョン・ピールの番組で演奏するなど一部で話題となるが、83年のファースト・アルバム『It』は商業的に失敗。87年の2作目『Freaks』でも状況は変わらなかったが、前後にラッセル・シニア(ギター)、キャンディダ・ドイル(キーボード)、ニック・バンクス(ドラムス)、スティーヴ・マッキー(ベース)が加入。黄金期のラインナップが揃った。アシッド・ハウスの影響も色濃い92年の3作目『Separations』を経て、アイランドへと移籍。94年の4作目『His ‘N’ Hers』が全英9位、翌年の『Different Class』がNo. 1を記録と、ついにブレイクを果たした。なお、この時期にファンクラブの会長だったマーク・ウェバーがギタリストとして加入している。ニューウェイヴとディスコにオペラ音楽をまぶした軽妙なサウンドの上で、階級や恋愛とセックス、ドラッグ……英国社会でのさまざまな局面における権力構図を炙り出す知的なポップソングが賛辞を集め、さらに長身細見のスーツ・スタイルに黒縁の眼鏡をかけたジャーヴィスは、この時代のポップ・アイコンとなった。ところが98年の『This Is Hardcore』はそうした状況への疲弊を反映したダウナーな作風になり、制作前にラッセルが脱退。スコット・ウォーカーをプロデューサーに迎えた2001年の『We Love Life』を発表した翌年、バンドは解散する。
その後、ジャーヴィスはソロ活動を始め、2006年の『Jarvis』、スティーヴ・アルビニを迎えたパンキッシュな2009年作『Further Complication』を発表。2011年にパルプは1度目の再結成を行い、多くのフェスなどに出演したのち、2013年に再離散した。ソロに戻ったジャーヴィスは、チリー・ゴンザレスとクラシック音楽を志向した『Room 29』(2017年)、エレクトロ・ポップ的なジャーヴ・イズ名義での『Beyond The Pale』(2020年)、フレンチ・ポップのカヴァー盤『Chansons D’Ennui Tip-Top』(2021年)などコンスタントにリリースを続け、文筆家や俳優としても成功している。ジャーヴィス以外のメンバーでは、スティーヴ・マッキーがM.I.A.やロング・ブロンディーズ、パーマ・バイオレッツなどのプロデューサーとして活躍していたが、闘病の末2023年に亡くなった。
左から、パルプの92年作『Separations』(Fire)、94年作『His ‘N’ Hers』、95年作『Different Class』、98年作『This Is Hardcore』、2001年作『We Love Life』(すべてIsland)、ジャーヴィス・コッカーの2006年作『Jarvis』、2009年作『Further Complication』(共にRough Trade)、チリー・ゴンザレスとの2017年のコラボ作『Room 29』(Deutsche Grammophon)、ジャーヴ・イズ名義での2020年作『Beyond The Pale』(Rough Trade)、2021年作『Chansons D’Ennui Tip-Top』(ABKCO)、ロング・ブロンディーズの2006年作『Someone To Drive You Home』(Rough Trade)