自身のフィーリングとイマジネーションを手掛かりにしてネクスト・レヴェル・チャーリーが爆誕! ハイパーポップな5年ぶりの新作は100年聴いても大丈夫!

ポップとオッドの折衷

 ポップソングを歌うポップスターだけど、みずから破壊を仕掛ける困ったちゃんというのが時折顔を覗かせる。グライムスやブルック・キャンディもそうだし、本稿の主役チャーリーXCXもまさにそう。その気になれば素直な売れ線ヒット・ソングを作れるはずなのに、あえてそこを外して、あの手この手でウィアードな音作りを仕掛けてくる。ならDIYなインディーでもいいようものだが、あくまでもポップ・シーンで勝負する、というのが彼女たちにとっては重要なのだ。ポップ・シーンのド真ん中で、ちょっぴり視点をズラして、アッと驚く大胆な偏屈サウンドをやってのける。5年ぶりにオリジナル・アルバム『Charli』を発表したチャーリーXCXは、いつもそんなポップ・アートを思わせるポップとオッドの折衷を繰り広げてきた。

CHARLI XCX 『Charli』 Asylum/Atlantic UK/ワーナー(2019)

 思えば登場した頃から、一筋縄ではいかないオーラを放っていた彼女。ソングライターとしてアイコナ・ポップに提供&客演した“I Love It”(2012年)、フィーチャーされて大ヒットしたイギー・アゼリアの“Fancy”(2014年)、映画「きっと、星のせいじゃない。」のサウンドトラックから火が点いた自身名義の“Boom Clap”(2014年)などなど、立て続けに桁外れのビッグ・ヒットを飛ばしてポップ・シーンの最前線に躍り出たのはいまから5年ほど前。アイドル然とした姿には収まりきらないイメージは手強そうだったし、決してカメラに向かってニッコリなんてことしなかった。

 2014年のセカンド・アルバム『Sucker』は、コートニー・ラヴとブリトニー・スピアーズを同等に愛する彼女が、そんなパンクなポップ愛をぶちまけてみせた作品。が、いまにして思えば、そのアルバムはアンセム調がやたら多くて、〈ちょっぴり肩に力が入りすぎていたかな〉と本人もやや反省気味だ。

 その後は、もっと自分らしいサウンドはないものかと試行錯誤を重ねることとなり、さまざまなアーティストとの共演や楽曲提供を重ねるなかで、ポップ・シーンの裏番長的な存在感を増していったのが、この5年間の彼女の歩みだろうか。多くの同業アーティストたちから多大な信頼を勝ち取り、確実にポップ・カルチャー・マップに爪痕を残してきた。

 なかでもよく知られているのが、セレーナ・ゴメスに提供した“Same Old Love”(2015年)、フレンチ・モンタナも交えてデヴィッド・ゲッタ&アフロ・ジャックと共演した“Dirty Sexy Money”(2017年)、カーディBやビービー・レクサと共演したリタ・オラの“Girls”(2018年)あたりだろうか。その“Girls”と対を成すかのような“Boys”(ラウヴと共作)では、チャーリー・プースからディプロ、ONE OK ROCKのTakaまでが出演するMVを制作し、みずから監督。交友関係の広さを窺わせてくれた。その他、ムラ・マサ、ムー、アルマ、カミラ・カベロ、トーヴ・ロー、アルーナジョージなどなど、ラッパー並みに多くの客演・共作を重ねてきた彼女だが、意外なところではブロンディのアルバム『Pollinator』(2017年)への参加、BTSとの“Dream Glow”(2019年)なんてのも記憶に新しい。そして、そのなかでもっとも大きな収穫だったと思われるのが、新進気鋭のプロデューサー、ソフィーとAG・クック(ロンドンのレーベル、PCミュージックの創設者でもある)との出会いだろう。特にAGは、2017年にチャーリーが発表したミックステープ『Number 1 Angel』や『Pop 2』に深く関わり、どちらも絶賛された。新作『Charli』では彼女と共にエグゼクティヴ・プロデューサーの大役を担っている。