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聴き手の道しるべになれたら

 我流のポップスの振り幅はまだまだ拡充。ジャズ的な要素も交えたガールズ・ブルース“Rain Check”、トランペット+クラップ+ユニゾン・コーラスによる演出がゴキゲンな“hanasaka”、TVアニメ「鴨乃橋ロンの禁断推理」2nd Season エンディング主題歌“ラビリンス”と続く。

 「hockrockbに“Champon”というジャジーな曲があるんですけど、それをきっかけに自分たちのことを知ってくれたって人も多いんです。“Rain Check”はそういう〈玄関〉みたいな役割の曲として作ってみました。ヒリヒリ感を演出するために音数も少なくして。“hanasaka”は同世代の子たちへの応援ソング。日常をテーマにした曲なので、派手になりすぎないようトランペットもイントロとアウトロだけにして、素朴さを守りつつ、ちゃんとポップソングに昇華できてよかったです」(堀胃)。

 「“hanasaka”は田舎で電車に乗ってるときをイメージして弾きました。地元が山口で、電車からは山しか見えないんですけど、その記憶が強くて。それが私の〈日常〉なんでしょうね」(みと、ベース)。

 「“ラビリンス”の参考曲としてもらったのは、Kvi Babaさんの“TOMBI”や、インスタで使われてる謎のBGMとか。ちょうどその頃、ノルウェー出身のオーロラという歌手の曲を聴いてたんですけど、彼女はエレクトロとポップスの間みたいな表現が上手で、参考にさせてもらいました」(堀胃)。

 その流れを引き受けるのは、田中のデモから広げていった“はじまりの鍵”。

 「発想のきっかけはアニメ『ダンダダン』の第7話。悲しいお母さんの話なんですけど、バレエを踊るシーンがすごい好きで、そこからフラメンコ的な曲調にしようと思ったんです。希望が見える形で終わりたかったのと、〈みんなの声があるからここまで来たんだよ〉ってことを伝えたくて、合唱コーラスも入れました。ライヴでは最後のラララのところをみんなで歌って完成させられる曲にできたらいいなと。いまから楽しみです」(田中)。

 ラストは3月に配信した“ひとつだけ”。軽やかに幕を開けた本作は、やはり肩の力の抜けた聴後感を残して幕を閉じる。

 「〈憧れ〉にもいろいろあると思うんですけど、この曲に出てくるのは、例えば後輩からやお客さんとかが自分に向けてくれる類のもの。憧れには嘘がなくて、自分がどんなに自暴自棄になっていようと、その眼差しは揺るがない。そんな眼差しがひとつあるだけで、見える世界も成し遂げるべきことに対する闘志も変わってくるので、ありがたいですね」(堀胃)。

 「今回のアルバムのひとつのテーマとして等身大の姿を見せたいっていうのがあったので、自分たちが聴いて育った音楽――平成感みたいなところはリズム・アレンジで出しました。丁寧な演奏でまとめたほうがいいかなと思ってたんですけど、エンジニアさんから〈もっと勢いよく叩いたほうがこの曲は伝わるよ〉と言ってもらって。その後の制作を勢いづけてくれた曲だなと思いますね」(田中)。

 「自分が学生の頃に〈こういうバンドができたらいいな〉って思い描いていたような形になったと思ってます。機材も昔好きだった曲と同じものを使ってみて。いろんな意味で、この曲は〈昔の憧れをやってみた回〉ですね」(みと)。

 逸るような疾走感で駆け出すエンディングは、次のフェーズに向けてスタートを切る3人の姿でもある。「道しるべのような作品になってくれたら」という『朝の迎え方』。彼ららしい12通りのエールは、聴き手それぞれの夜明けをいつもと違ったものにしてくれることだろう。