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〈チャカチャーン〉ではなく〈チャカチャチャーン〉

能地「この本を読み返して面白いのは、そういう佐橋さんのエピソードの一つ一つがドラマみたいなんですよね。〈これ、朝ドラにしたら?〉なんて思ったぐらいで(笑)」

佐橋「朝ドラで思い出した! 永野芽郁ちゃんが主演の『半分、青い。』は脚本が北川(悦吏子)さんだったからさ、小田さんの“ラブ・ストーリーは突然に”がかかった時に〈知ってる? このギターを弾いてるのって松たか子の旦那らしいよ〉なんてセリフがあったんです。で、朝起きたら100何十件もメールが来てるわけ。知り合いが死んだか捕まったかしたのかな?と思ったら、みんな〈朝ドラ見ました〉って送ってきてて(笑)」

能地「佐橋さんっていうとあの〈チャカチャーン〉ですからね」

佐橋「違うの。正確には〈チャカチャチャーン〉」

能地「原稿も直されましたね。〈チャカチャーン〉じゃないんだよって」

佐橋「(ギターを持って弾きはじめる)この曲ね。シャープ2つのキーでBマイナーだからこの位置から上げて弾かないと駄目なんだけど、正確には〈チャカチャチャーン〉! 3連だから」

能地「みなさん、覚えて帰ってください。Twitter(X)にも〈チャカチャチャーン〉ってちゃんと書いてくださいね」

佐橋「今、弾き方を教えましたからね、お家でやってみてください」

 

ヒット曲を生み出してきた抜群の演奏と豊富なアイデア

佐橋「あと、いじめられたこともそうですけど、この本に書いてあるエピソードは本当にあったことっていうのがポイントですね。

先輩って大体(話を)盛るじゃない(笑)? 盛る先輩といえば、亡くなられた村上“ポンタ”秀一さん。ポンタさんの話は話半分で聞いた方がいいって周りの人からも言われてましたから。ポンタさんの先輩にはジョージ川口さんってジャズの巨匠ドラマーがいて、ポンタさんが飲みながら〈ブレッカー・ブラザーズとか、外国の有名なミュージシャンと渡り合ってきたんですよ〉と自慢したら、ジョージさんに〈俺は大戦中に敵機のパイロットの顔を目視したからな〉と返されたそうです(笑)。

あと、上の世代の方々は言葉をひっくり返しますよね」

能地「〈シースー〉とかですね」

佐橋「〈ギロッポン〉とかね。ああいうのも嫌だなと思っていました。僕なんて〈若いターギの子〉って言われてましたよ(笑)。〈ギター〉をひっくり返しているのかって、あとで気づきましたけど。割り勘の時は〈G(ゲー)線通し〉でしょ。そういうのを忌み嫌っていたんだけど、巻き込まれちゃって。僕って常に巻き込まれてばっかりな人生だよね!

あと人懐っこさ以外にもう一個大事な自分の要素は、ちょっと負けん気があることですね。むかつくことを言われると、逆に頑張ってしまうっていう。ディレクターさんやプロデューサーさん、アレンジャーさんが〈こうしたい〉って言うものを実現させたいと常に思ってやってきました」

能地「たとえば、この本にも出てくる槇原敬之さんの“もう恋なんてしない”もそうですよね。佐橋さんは〈こういうギターを弾いてくれ〉と呼ばれてきた先様ありきのセッションミュージシャンなんだけど、音楽マニアなのでちょっと聴かせてもらったデモから〈こういうのを入れたらどうかな?〉ってアイデアが浮かぶことも。それが結果的に大ヒットに結びついたり……。ヒントを一言与えてヒット曲を生み出してきたんです」

佐橋「“もう恋なんてしない”は、キーボードがうっすらと弾いていたフレーズをスライドギターで弾いて、しかもハモってみたらどうですか?って提案して、4チャンネルも貸してもらって。そうやって弾いてみたら、喜んでもらえましたね。〈ジョージ・ハリスンみたいなエレキの12弦ギターを弾いてみてもいいですか〉とかね、そういうのを採用してもらったり。

〈想像していなかったことだけど、曲がよくなるならやってみてほしい〉っていう柔軟なアーティストにアイデアを受け入れてもらってきたんです。思いついたアイデアを口にして〈どう思う? もしよかったら試しにやってみるけど〉っていうスタイルになっていったんでしょうね」

能地「(会場で)今かかっていますけど、福山(雅治)さんの“HELLO”も佐橋さんが曲作りのセッションから参加してアレンジもしたんですよね」

佐橋「“HELLO”は作曲のクレジットに入ってもよかったかもね。僕がリフを弾いていたのを横で聴いていた福山くんが歌い出してできた曲ですから」

能地「すごいですね。人間ChatGPTみたいな(笑)。そういうことができるのは、バンドマンとしてバンドで曲を作っていたからなんですかね」

佐橋「それはすごく思うね。バンドをやっていると、〈もっとこうしたほうがいいんじゃない?〉〈こういうのはどう?〉ってやりとりを日常的にするじゃないですか。僕がスタジオミュージシャンを始めた頃の業界は、ミュージシャンが遠慮させられるような威圧的で閉鎖的な感じで、いじめてくる人もいるし……僕、だいぶ根に持ってるよね(笑)」

会場「(笑)」