Photo by Masanori Naruse
ヴルフペックと観客が作り上げた歴史と記憶に残る名ライブ
急いで向かったバリー・キャント・スウィムのステージは、ドラマーも従えた3人構成でのバンドセットで、フレッド・アゲイン同様にフィジカル面を強調したマッシヴなライブだった。海外のフェスでは昼帯での出番もあるようだが、やはり彼のようなエレクトロ/ダンスミュージックを主戦場とするアーティストを見るのは夜に限る。楽曲とシンクロするステージ上部のライトとカラフルな背後のVJ、生い茂る苗場の緑に向けて放たれる無数のレーザー、横隔膜まで響く重低音と反復するビートが五感を刺激する。今後ケミカル・ブラザーズ的なポジションを担う存在として、よりビッグになっていくのではないだろうか。

正直にいえば、山下達郎が終わったら観客の数は減ってしまうのではないかと思っていたが、そうした安直な予想はヴルフペックのために集まった満員のGREEN STAGEを見て見事に裏切られた。フジロック2日目のヘッドライナーであり、これが日本での初ライブとなるヴルフペックは、まるで目の前でクロースアップマジックをひっきりなしに見せられているような、驚きの詰まった祝祭と呼ぶにふさわしいステージを見せてくれた。
とにかく、コリー・ウォンとウッディ・ゴス、ボーカルのアントワン・スタンレーとジェイコブ・ジェフリーズ(ジェイコブは一部楽曲でパーカッションも演奏)以外は曲ごとにプレイする楽器が次々と変わっていくのだ。もちろん彼らのライブスタイルがそうした自由度の高いものだと十分理解してはいたが、いざその様子を直視すると、もう笑うしかなくなってくる。
バンドリーダーであるジャック・ストラットンが観客にハンドクラップを求めてはじまった1曲目の“Animal Spirits”では、セオ・カッツマンの軽快なドラミングと美しいファルセット、ジョーイ・ドーシックの煌びやかなサックスが苗場に響きわたる。“3 On E”の冒頭では、ジョー・ダートによるクイーン“Another One Bites The Dust”のベースラインを引用したお馴染みのネタも披露されたが、ライブ全体を通して、こうしたディープなファンでないと反応できないようなギミックに対して多くのオーディエンスがリアクションしていたのが印象的だった。そう、ヴルフペックとのパーティーを楽しむため、我々も入念に準備してきたのだ。
Photo by Taio Konishi
フジロック初日に登場したマヤ・デライラを招いた“Tokyo Night”では、マヤの歌だけでなくギターも聴けて嬉しかった。アンコールの“Dean Town”では観客がファンキーなベースラインをひたすらシンガロングするという、これまた彼らのライブにおける恒例行事もしっかりクリア。そして完全に終演したかと思いきや、再びステージの照明が灯りダブルアンコールに突入し“Funky Duck”をプレイしてくれた。照明が作り込まれていなかったことから、その場の勢いだけで決まったダブルアンコールだったのだろう。そしてヴルフペックは、これ以上ない喝采を浴びてステージを去っていった。

前日のフレッド・アゲインと同じように、ヴルフペックもフジロックを通して日本のリスナーと深く繋がることに成功したように思う。ヴルフペックと観客が作り上げたこの日のライブは、まぎれもなく歴史にも記憶にも残るライブだった。
TV INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’25完全版
放送日時
DAY1:2025年9月13日(土)19:00~24:00
DAY2:2025年9月14日(日)19:00~24:00
DAY3:2025年9月15日(月)19:00~24:00
放送チャンネル:フジテレビNEXT ライブ・プレミアム/フジテレビNEXTsmart
