2011年のライヴ初共演をきっかけにユニットとしてフェスなどのステージを共にしてきた3人が初のフル・アルバムを完成させた。その内容は2015年からYouTubeで発表してきた楽曲群をはじめとする全11曲。U-zhaanの奏でるタブラの柔らかな響きが中心となった音とラップの取り合わせは他に類なし。端々に生活感の漂うほのぼのとしたリリックと併せ、普段着の交流ぶりは親近感を誘う。その意味では、タブラとヒップホップの歴史を交差させる内容の曲や日々に感謝する楽曲、スチャダラパーのカヴァー“サマージャム’95”などもさることながら、ギンビスのお菓子讃歌や、ネコになった矢野顕子がサビでひたすら鳴くネコ目線の“にゃー”のとりとめなさこそが個人的にはキモだったりして。

 


2011年のイベント〈100%ユザーン Vol.2〉から断続的に活動し、“サマージャム'95”“ギンビス”といった楽曲のMVをYouTubeにて不定期に公開してはその度に話題になっていた3人が、活動開始から10年、いよいよフル・アルバムをリリースする。

すでに3人のスタンスや楽曲をご存知の方はお分かりのように、基本はとてもゆるい。それは、おでんとかネコを題材にしたゆるすぎるリリックのせいなのか、タブラの放つ無限の倍音のせいなのか、3人が楽しみながら作っているさまが想像できるからなのか。聴いて思い浮かぶのは休日の昼下がりとか夏休みの光景。自然に囲まれながら、ビールでも呑んで何も考えずにボケーっと聴くのに適している。

U-zhaanが扱うタブラ以外の楽器も、タンブーラ・マシーン、カンジーラ(トカゲ皮のタンバリン)、マンジーラ(小型シンバル)といったインド音楽の楽器だけでなく、指パッチン、ピッチパイプ(タブラ調律用の笛)、菓子の袋を振る音・菓子を食べる音など、不純物0%。生活に溶け込まないわけがないのだ。

……しかし、耳を澄ませてよくよく聴けば、流石は凄腕ラッパー×2と日本タブラの第一人者。ゆるさの奥にあるのは超絶技巧の嵐。ヒップホップとタブラの歴史を分かりやすく追いながら偉大な先人たちにリスペクトを捧げた“BUNKA”の超絶ラップ・スキルや、矢野顕子の歌声を贅沢に使用した“にゃー feat.矢野顕子”の8分の11拍子や“七曜日”の8分の7拍子といった変拍子を自在に乗りこなす3人の姿は、まるでアニメに登場する仙人みたいな〈鍛錬あってこそのゆるさ〉なのだ。

YouTubeのコメント欄やSNSでよく言われる〈神々の遊び〉という言葉、今作はまさにそれの集大成。本当にヤバい人たちは、ゆるく見える。