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板橋文夫に学んだ、限界を超える演奏

――話が前後しますが、上京前の海上自衛隊時代に山下洋輔さんと共演したこともあるとか。

「自衛隊のコンサートにゲストでいらっしゃって、一緒に“Cherokee”を演奏してソロを吹かせてもらいました。打ち上げで山下さんから〈家で新年会のジャムセッションをやるからおいで〉って声をかけてもらえて。結局それには行けなかったんですが、今は一緒にやらせていただいているので、伏線が回収されたなと(笑)。

その少し前に板橋文夫さんも青森に来たことがありました。スナックみたいな場所で地元のミュージシャンと一緒にやっていたので、僕も少し吹きました。山下さんにしても板橋さんにしても、当時はプロを生で観る経験があまりなかったので、演奏を観るだけで感動しましたね」

――今は板橋さんとも活動していますね。

「はい。最初に共演したのはデュオで、その後、板橋さんがツアーで全国を回るときに誘われました。板橋さんと僕とドラムの竹村一哲という変則的なトリオで、2週間ぐらい演奏して。板橋さんの演奏には〈ここまでやるんだ〉という衝撃がありました。僕が思っていた限界が底上げされたというか。それはソロでもオーケストラでも感じます。

今回の僕のアルバムはソロですけど、ソロ演奏だと〈もう無理だ〉ってところまでいってから出てくる面白さがあります。そこで自分の持っているものを再発見することもある。上手くまとめてしまうと、ショーとしては面白いかもしれないけど、発見は少ない。ギリギリまで詰めたほうが発見があるし、それを面白いなと思う人もいるはずなので、僕はそういうほうに賭けたいです」

 

ONJQのヨーロッパツアーで培った経験

――大友さんとはいつから共演するようになりましたか?

「2017年末にONJQを再結成したときに誘ってもらって、それが初めての共演でした。正直、大友さん、水谷浩章さん(ベース)、芳垣安洋さん(ドラム)のトリオが強烈すぎて、最初はどうしたらいいかわからなかったんです。その3人で完全に成り立ってしまっているから。それが最初の印象でした。

第1期のONJQはサックスの菊地さんと津上研太さんがいましたが、再結成時はトランペットの僕とトロンボーンの今込治さんという、どちらかというと即興に不向きな金管楽器に変わっているんです。サックスのほうが長く吹けるし、フリーな音楽にマッチするじゃないですか。金管だと長く吹くのも大変。だけどその難しさも含めて面白さがあるから、いまだに続いているんだと思います」

――ONJQで新たに発見したことはありますか?

「いろいろありますが、ヨーロッパツアーに連れていってもらったことが大きいです。僕はヨーロッパで演奏すること自体が初めてで。向こうはフリージャズや即興音楽に対する理解度が高い土地だと思うと同時に、当たり前なんですけど、面白い人は面白いし、つまらない人はどこの国にもいるなとわかった(笑)。だから単純に視野が広がりました。日本にいると海外からは面白い人の情報しか入ってこないから、勝手にイメージが膨らんでしまう。でも現地に行ったらいろんな人がいる。もちろん根底にある音楽の情操教育の差はあるかもしれませんが、日本だって面白い人もいればつまらない人もいるわけで、どこも変わらないなと」

――ONJQでは中国にも行っていますよね。類家さんのバンドでも2018年に行っていますが、印象的だったことはありますか?

「2018年にRS5pbで出たのは深圳の〈OCT-LOFT Jazz Festival〉というフェスです。アート特区みたいな街で、道端にアートが設置されていたり、ビルの壁面に絵が描いてあったり。街自体が裕福で、ライブはものすごく盛り上がりました。僕でさえキツく感じるゴリゴリのフリージャズなラインナップをスタンディングで聴き続けて盛り上がるという(笑)、面白い場所だなと思いました。〈他国の文化に飢えている〉と言う人はいましたね。レコードやCDを持っていくとめちゃめちゃ売れるし、普段買えないから珍しいというのはあるのかも」

――現地のミュージシャンで面白いと感じた方はいますか?

「大友さんが中国の即興演奏家との交流を続けていますけど、僕が行ったときは、老丹(ラオ・ダン)というサックスや中国の笛を吹く人が面白かったですね。フリージャズのミュージシャンとして素晴らしいし、個性的だと思います」