燃える真赤な太陽、ギラリ輝く白銀――現体制で怒涛の10年を駆け抜けてきた3人が、昭和100年を迎えて軋み続ける現代社会に『18』で投げかけるテーマとは?
そのうち現実世界も……
桜井青(ギター)「次はインダストリアルなアルバムがいいなって。もうギターほっぽり出して、ずっとメタパー(メタル・パーカッション)叩いて踊っていたいみたいな。そういうライヴもアリかなって思ってたんですけど、もう手遅れだったんですよ。石井さん(石井秀仁、ヴォーカル)が『17』とか『17.5』の流れでけっこう曲を作っていたので。それでまあ、結局はインダストリアルどころか、えらいポップな作品になっちゃったっていう(笑)」
これまでのほとんどの作品がナンバリング・タイトルであるcali≠gariから届いたニュー・アルバムの名は『18』。結果的に異なる方向性となったものの、桜井が最初に〈インダストリアル〉と思い付いた理由は〈18〉と紐付くジャケにある。そのヴィジュアルに登場するのは、77年に放映された石ノ森章太郎の原作による特撮作品「大鉄人17(ワンセブン)」……の弟にあたるロボット〈ワンエイト〉だ。
桜井「ワンエイトは『大鉄人17』の最終クール直前に5回だけ出てくるんですけど、主役の兄の敵として現れて、そのあと味方になって、最後は兄を助けて死んでいくっていう。幼稚園の年長さんだった当時の自分としては衝撃だったんですよ。あと、デザインもワンセブンより好きだったんです。無骨で可愛いじゃないですか。それがずっと自分の中に残ってたから、今回のジャケットにどうかな?って提案してみたらOKになって、それならここからコンセプトを広げていくのがいいだろうっていう。それで最初にインダストリアルを連想したんですよね。あともう一つのテーマとしては、いまのAI社会について。『大鉄人17』は〈地球を壊す人類を滅ぼそう〉対〈人類だけが地球を救える〉という人工知能同士の戦いを描いた内容なんですけど、いまのAIも賢すぎておっかないんですよね。そのうち現実世界もそっちの方向に行くんじゃないかって思ってしまうぐらい」
AIが人間の生活に自然と溶け込んでいる2025年――昭和100年。『18』は、そんな現代社会をさまざまな視点から描きつつ、80〜90年代のヴィヴィッドなロック・サウンドを我流で再構築したような一枚と言える。オープニングをパワフルに駆け抜ける“藍より蒼く”からして、桜井は「ちょっとこの疾走感で短いとLUNA SEAすぎますかね?」と石井に尋ねたらしいが……。
桜井「青臭くポーンと駆け抜ける短い曲。ライヴの最初にあったら元気が出そうな……元気が出そうな時点で、もうインダストリアルじゃない(笑)。でも“FATE”(91年作『LUNA SEA』収録)とかがかかるといくつになってもバンギャ心が炸裂しちゃうから、世代によってはたまらないかな、と(笑)」
石井「LUNA SEAって言われて一般的に思い出すのは“ROSIER”とかでしょうけど、青さんの場合はインディーズのファースト・アルバム(91年作『LUNA SEA』)ですからね。逆にLUNA SEAすぎるからいいんじゃない?って」
続いては石井によるリード・ソング“東京亞詩吐暴威”。開口一番にガナる石井のヴォーカルが鮮烈な、いなたい翳りを纏ったロック・チューンだ。
石井「この曲でMVを撮るってことで、監督の映像のイメージで作ったところが大きいですね。シンプルで、ちょっとだけ殺伐としてるっていう。ロックって基本的に殺伐としてるじゃないですか。だからもう、Aメロのド頭からシャウトしないとダメだぞっていう。なんだけど、演奏はどこか軟弱な感じというか……80年代に聴いてた、自分たちが好きだった頃の日本のロックってそんなのが多かったなって」
それを引き継ぐのは、日本に噛み付くグラマラスな“ニッポニアニッポン”。歌詞のわかりやすい毒っ気が石井にしては珍しい。
石井「歌詞は噛みついてるふうですけど、それは全部ザ・スターリンの“ロマンチスト”に出てくる単語ですから。だから、俺が噛み付いてるわけじゃなくて(遠藤)ミチロウさんが噛み付いてるんです(笑)。タイトルも調べてもらえれば全然そういうものじゃないですし」
そのあとは、インダストリアルの名残が感じられる桜井製の“"Hello, world!"”。変声コーラス混じりのカオティックなポップ・チューンだ。
桜井「最後の抵抗ってやつです(笑)。メタパーを入れるとなんとなくそういうふうに聴こえるんですよ。歌詞はAI目線で、可愛く作りました(笑)」