3コードのビンテージなロックンロール一発録りの一本勝負に振り切った1stアルバム『暴動クラブ』から約1年。暴動クラブの2ndアルバムにしてメジャーデビュー作『暴動遊戯』は、そのプリミティブなロックンロールの熱をしっかり残しつつ、90年代のUKロック/オルタナティブロックやハードロック、レゲエなど大きく音楽性の幅を広げた作品に。そして、サウンドがクリアになったことで、それぞれのプレイヤーとしての個性や、バンド内に3人のソングライターがいることの強みがより鮮明に浮かび上がる。暴動クラブの新たなフェーズに込められた想いとは。
※このインタビューは2025年9月25日発行の「bounce vol.501」に掲載された記事の拡大版です

現在進行形の暴動クラブが楽しめる作品
――先日、別媒体でインタビューさせていただいたときは、「2ndアルバムらしい2ndアルバムができた」とおっしゃっていましたね。
鈴木壱歩(ドラムス)「我ながらいい表現だ」
――(笑)。1stアルバム『暴動クラブ』と比べると音楽的に幅が広がり、音もクリアでパワフルになっていて、予想を遥かに超えた内容でした。
釘屋玄(ボーカル)「1stのときは自分たちのルーツをわかりやすく示そうと思って、3コードのロックンロールに的を絞り、モノラルの一発録りでレコーディングしました。そのあと、そういうロックンロールとはまた違うものを出したくなり、メロディアスで展開のあるシングル“撃ち抜いてBaby,明日を撃てLady”をリリースして、〈俺たち、こういう方向性もできるんじゃん〉って思って。その後に出したカバーEP『VOODOO SEE, VOODOO DO』で幅広い年代のロックンロールを演奏したことで、〈この感じで、もっといろいろなことをやれるかも〉と思ったんです」
――1stから2ndへの流れは意図したものなんですか?
城戸“ROSIE”ヒナコ(ベース)「いえ、なるべくしてなっていったんです。今回の収録曲は、昔の録音のなかから掘り起こしてきた“ラヴ・ジェネレーター”以外、すべて1stをリリースしたあと、今年の2月くらいから作った曲なんですよ。なので、現在進行形の私たちを楽しんでもらえる作品だと思います」
釘屋「“ラヴジェネ”は、バンドを始めて半年ぐらいのときに1回だけライブで演奏してやめた曲ですね」
城戸「〈カッコいい曲があるんだけど〉って私が見つけて、改めてやってみたらよかったんです。みんな忘れてた曲ですね」
マツシマライズ(ギター)「当時に比べて、ちょっとうまくなったし(笑)」
城戸「前は表現しきれなかったことができるようになったんだよね」
釘屋「歌だけちょっといじったけど……」
マツシマ「8割原形が残ってますね」

幡ヶ谷HEAVY SICKでも日比谷野音でも、やることは変わらない
――恵比寿LIQUIDROOMでのワンマンライブをはじめ、演奏する会場が大きくなっていったことは制作に作用しましたか?
釘屋「ライブに関しては、すごくカッコよく言うと小さくても大きくてもやることは同じですね」
城戸「もともと〈デカくなっていくぞ!〉って思いがあったので、〈もっともっと〉という感じです」
鈴木「ヒナコさんが遠いなー、とは思う(笑)」
城戸「たしかに。フェスのステージに出たときに広がる大きな景色は、〈わ! あんなところまで人がいる!〉って感動はしますね」
マツシマ「でも演奏が始まったら、幡ヶ谷HEAVY SICKでも日比谷野音でも変わらないんですよね。視覚的には変わるけど、プレイや気持ちは変わらない」
城戸「見せ方は変わりますね。私は2階、3階の一番うしろのお客さんまで一人ひとり、端から端までガン見するタイプなので、全員の顔を見られないことは少し寂しいです(笑)」
――全員をガン見するんですね(笑)。
城戸「来てくれてるのが嬉しいから、見てやろうって(笑)」