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過去と現在両方の良さを提示できれば、もっと世の中が面白くなる

――本書の中で印象に残ったことのひとつに「世代」を意識している点があります。Jさんは本書で自分たちを「70年代以降のさまざまな時代のおもしろいものを体験してこられた幸運な世代」と位置づけています。これは、日本のロック黎明期から現在まで、音楽シーンの変遷を実体験として知っている世代という自負が感じられるといいますか。

「僕たちが音楽(活動)をやってきた中で、技術でいえばアナログからデジタルに移り変わっていく時代を走ってきた。それは、聴く側だけではなくてレコーディング環境なんかも大きく変化しています。その変化の過程を僕らはものすごく経験させてもらってるんです。

僕が感じているのは、今の時代ってすごく便利にはなっているということです。ただ、僕たちがやってきたのは、ひとつの音を作り出すために、大げさじゃなく2、3日かかったり、そのたったひとつの音を作ることだけに時間をかけて試行錯誤していた。それはものすごく大変だったけれど、その過程でいろんなことを発見して、ものすごく面白いことでもあったんですよ」

――それは本当に大変なことで非効率かもしれないですが、一方で時間をかけることがある種の豊かさにつながっていたとも思うんです。

「そうですね。当時はなんであんなに時間があったんだろうなって思うんですよ。きっと今だったらレコード会社の人たちから〈何やってんの?〉の一言で片付けられちゃうでしょうね。

もちろん、〈昔は良かったね〉といいたいわけではなく、過去と現在の両方の良さを僕たちは知っているということなんですよね。それをシンプルに提示できれば、また活性化していくんじゃないかな、なんていうふうには感じてはいるんです」

――活性化というのは、音楽シーン、バンドシーン、それとももうちょっと広いものを想定されている?

「もちろん。それと同時に人間として……というか、話が大きくなってしまってもあれなんですけど、自分たちの世代はいろいろなことを見て経験をしてきていて、その中での答えの選び方みたいなものを経験してきたというのはあると思うんです。それが皆にひとつの例えとして伝わっていけば、もっと世の中が面白くなっていくのかな……。音楽もそうですし、そこをきっかけにいろいろなことが発生していくと思うので」

 

僕は何よりもかっこいいロックを追い続けている

──たとえば、先日はマクドナルドのキャンペーンCMに、“ROSIER”が起用され、大きな話題を呼びました。“ROSIER”といえば、CMタイアップが当然だった時代に、ノンタイアップでチャート上位に食い込んだとして語り草になっているシングルでもあります。カウンター的な存在だったものが、時を経てある種の〈真ん中〉に位置づけられているというか……。

「本当に嬉しいですよね。実際に僕たちも、世の中に対する退屈やカウンターみたいな想いでバンドを始めたわけですよね。〈こんな音楽を聴きたい、こんな音楽をやりたい〉という、カウンターとして始めたものが、徐々に皆に伝わっていき、皆を熱くさせて、燃え広がっていった。だから、僕らが真ん中に行ったというよりも、ファンの皆とその真ん中を自分たちの元に〈手繰り寄せた〉と思っています。

先程のCMの話もですが、僕たちがずっとプレイし続けてきた曲が、もう30年以上前に生まれた僕たちの曲が、いまだに皆の心の中に響いてくれている。そしてCMになり、曲を楽しんでくれたり、口ずさんでくれたり、話題になり日本中が盛り上がってくれて。それって、本当にとんでもないことで、最高なことだと思っていて」

──なるほど。

「僕にとって、ロックミュージックってものはいつだってすごく〈かっこいいもの〉なんですね。で、そのかっこいいものがなぜ売れないんだろう、なぜ売れちゃいけないんだろう、ってずっと思ってきている人間なんです。それだけすごいものが、なんで皆に認められないの、認められなきゃおかしいだろっていう。

ロックは何よりもかっこいいものだから、皆が聴いているものじゃないと変だよなって思ってるんですよね。僕は、その何よりもかっこいいものをずっと追い続けている感覚なんです。

僕自身もアンダーグラウンドの音楽を聴いてきて、〈なんでこのかっこいいバンドがこんな扱いなんだ〉って思うことがたくさんあった。でも、ロックファンってちょっとずるいところもあるじゃないですか」

――「こんなかっこいいものを知っているのは俺だけだぜ」じゃないですが、選民思想的なところでしょうか。

「そこで止まってしまって、満足しちゃうっていうか。でも、それこそがロックミュージックを馬鹿にしている態度のような気がして。僕は、なんでそんなにかっこいい音楽がヒットチャートの1位とかにならないわけ?とか、普通に思っちゃうんですよね」