Page 2 / 6 1ページ目から読む

愛を知ったから音が変わった、わけじゃない

――ここまで外部からの刺激を受けてきたけど、新作は基本3人で作りきってるし、歌詞の内容的にも、改めて自分たちの内側を見つめている印象です。もう少し言えば、そうやって自分たちを見つめることによって、より外に広がるアルバムを目指したというか。

たなか「『CASTLE』は内に向いた作品で、音像的にもそういう感じが、自分の中でのざっくりとした印象としてあって、逆に『&疾走』は外に向かって開けた音で、歌詞もそういう感じになっていて。そこで内と外の両方が出そろって、今回は初めて制御して球を投げれるようになったし、球種も増えた。イメージとしてはそういう感じ」

Ichika「僕も全体的には同じ認識で、あとは結構1曲1曲の話になっちゃうんですよね。今回のアルバムは作るにあたって各曲の役割をはっきりさせて、リファレンスがあって、〈この曲の持つ意味を踏襲しよう〉みたいな、そこから作り始めていて。なので、全体のコンセプトがしっかりあったというよりは、1曲1曲に重点を置いて作った感じがあって、最後の“Seein’ Your Ghost”が接着剤みたいに全部の曲を繋げてくれました」

ササノ「僕はさっきも言ったように考えて作らないと曲が全部同じ方向性になっちゃうから、1曲1曲の方向性を明確にして作れたのはすごくありがたかったです。ただいざ作ってみると〈こうじゃないんだよな〉ということも多くて、今回かなり余裕を持って作り始めたはずなんだけど、結局全然時間が足らなくて。でも、ちゃんと考えて作るとこうなるよな、と思いました。

『CASTLE』は個人的にはいい意味で、他者から見たら良くも悪くもかもしれないですけど、全体的に手癖っていう感じがあって、自然に出せるものだったんです。それをずっと続けることもできるけど、ここまでには脱構築っていう挑戦があったりして、たなかが言ってくれたように、それをどう自分たちで制御して、いいと思えるものに昇華できるか、そこが一番の命題でした」

――自分たちが作れるものを自然に作ったというよりも、意志を持って1曲1曲に取り組んだし、意志を持って曲調の幅を広げたと。

ササノ「3人とも結婚したし、たなかには子供がいるしっていうことで、結構言われるんですよ。〈愛を知ったから音が変わった〉みたいな」

たなか「ありがたいけどね」

ササノ「俺は腹が立っちゃったんですよね。音楽をやってて、結婚以外にも、身内が亡くなったり、人生にはいろいろあるわけで、〈結婚1つで音が変わってたまるかよ〉って。

もう曲を作り続けて20年になるし、根底はそんな簡単には変わらないけど、でも1人でも多くの人に僕らの曲を聴いてもらうために、今回は挑戦として、曲の幅を広げたいと思ったんです。なので、これまでは曲の最終的なまとめを全部僕がやってたんですけど、3〜4曲はIchika主体でまとめたものもあったりして、ちゃんと今までで一番幅のあるアルバムになったと思う。で、それを全部総括するというか、何なら今までのすべてを総括するのが“Seein’ Your Ghost”で、個人的にもちゃんとした区切りを提示できたと思います。なので、意図があって変わってきたことがちゃんと伝わるといいなって。

音楽は楽しいけど、そんなに気まぐれではやってない。〈みんなのために〉っていうのはものすごく押しつけがましい言葉ではあるんだけど、自分たちができることで、みんなにどう楽しんでもらえるかをずっと考えて、今回はバリエーションがいっぱいある。それに対して、〈これは違うな〉と思うこともあると思うし、僕も大好きなアーティストにそう思うときもあるけど……」

たなか「〈変わって良くなった〉って言われてるのはあんまり聞かないかもしれない」

ササノ「自分が好きなアーティストが変化をすると、複雑な気持ちになるのもよくわかるけど、いろんな曲が入った今回のアルバムを聴いて、〈これは好きだな〉っていうものが1つでもあったら嬉しい。僕にとってそういう作品ではあるかな」