(左から)ササノマリイ、たなか、Ichika Nito

Diosがニューアルバム『Seein’ Your Ghost』を完成させた。『CASTLE』で自らの城を築き上げたのち、『&疾走』ではそこから飛び出し、冒険を開始した3人は、TAKU INOUE、Seiho、原口沙輔といった外部からのプロデューサー/アレンジャーと共作をしながら、『ガソリン EP』と『脱構築β EP』を制作。そのうえで、新作ではたなか、Ichika Nito、ササノマリイの3人で作詞・作曲・編曲・演奏をほぼすべて行い(“花霞”のみ、ドラムで凛として時雨のピエール中野が参加)、ロック、ファンク、ダンスミュージックから、シティポップ、ローファイヒップホップに至るまで、幅の広い楽曲を手掛けてみせた。

〈喪失〉がテーマになっているアルバムのキーとなるのは、ラストに置かれた表題曲の“Seein’ Your Ghost”。この曲でたなかは〈bkrr、それが自分だったって/もう思えないんだ ネガティヴじゃなくて〉と、ぼくのりりっくのぼうよみ時代から現在に至る足跡を自伝的に振り返っている。この歌詞はもともと自発的に書いたわけではなく、リクエストに応える形で作られたそうだが、今年がぼくのりりっくのぼうよみのファーストアルバム『hollow world』のリリースからちょうど10年であることを思えば、生まれるべくして生まれた1曲だと言っても過言ではないだろう。メンバー3人に制作の背景について語ってもらった。

Dios 『Seein’ Your Ghost』 Dawn Dawn Dawn(2025)

 

〈&迷走〉を乗り越えた3人

――まずは『&疾走』以降にリリースされた2作のEPについて振り返ってもらえますか?

たなか「『&疾走』は明確なコンセプトがあって作ったんですけど、そのあとはあんまり方向を決めずに、いろいろ走り回ろう、みたいな感じでした。『ガソリン EP』ではササノじゃないアレンジャーの人やプロデューサーの人をお迎えしたり、“愛がすべて”はIchikaがメインで作ったり、いろんなことをやってみて」

――いろんな人と共作したり、今年2月には対バンツアーもあって、外部から刺激を受けながら活動してきた印象があります。

Ichika Nito「音楽的な話でいうと、方向を決めずに走り回ってたとは言いつつも、個人的には〈Diosどうしよう?〉みたいな、迷いの時期でもあったかなって」

たなか「&迷走ね」

Ichika「あんまり公に言うことじゃないかもしれないですけど、ササマリも結構ショートしてて」

ササノマリイ「終わってました」

Ichika「個人のワークスだったり、それぞれいろいろあって、だから〈外部のアレンジャーを探そう〉となったりもして。結果的にはいろんなことを試すいい機会になって、今回のアルバムでまた立ち戻れたというか、またここからやるぞ、みたいな感じになりました」

――『ガソリン EP』のときはリアルに他からガソリンを入れる必要があったと。

ササノ「僕は本当にショートしてました。そもそも僕は音楽の好みとか方向性に関して、だいぶ頑固じじいなもので、自分の中での理想というか、指標となるものがたった一個なんです。そのせいで、いいものを作ろうってなると、考えて作らないと全部そこに集約されて、全部同じになっちゃう。しかも、その自分の中での理想が人々に受け入れられやすいものではない自覚もあるので、自分がいいと思えるものを作った上で、どうDiosに貢献できるんだろう?っていう迷いがすごくあって。

それで〈じゃあ、今回は他の人にお願いしてみますか?〉という話をいただいて、『&疾走』から『ガソリン EP』では大元を別の方に作っていただいたりして。それが自分の刺激になればいいなと思ってたんですけど、まんまと刺激になりました」

――『脱構築β EP』や対バンツアーもまだ模索の期間?

たなか「対バンツアーはめっちゃ楽しかったけど、『脱構築β EP』というタイトルにしてるのは、〈まだβ版〉ということの表れな気がしますね。もうちょい行けます感があったというか、まだ今の俺でジャッジしないでくれ、みたいな(笑)」

 

愛を知ったから音が変わった、わけじゃない

――ここまで外部からの刺激を受けてきたけど、新作は基本3人で作りきってるし、歌詞の内容的にも、改めて自分たちの内側を見つめている印象です。もう少し言えば、そうやって自分たちを見つめることによって、より外に広がるアルバムを目指したというか。

たなか「『CASTLE』は内に向いた作品で、音像的にもそういう感じが、自分の中でのざっくりとした印象としてあって、逆に『&疾走』は外に向かって開けた音で、歌詞もそういう感じになっていて。そこで内と外の両方が出そろって、今回は初めて制御して球を投げれるようになったし、球種も増えた。イメージとしてはそういう感じ」

Ichika「僕も全体的には同じ認識で、あとは結構1曲1曲の話になっちゃうんですよね。今回のアルバムは作るにあたって各曲の役割をはっきりさせて、リファレンスがあって、〈この曲の持つ意味を踏襲しよう〉みたいな、そこから作り始めていて。なので、全体のコンセプトがしっかりあったというよりは、1曲1曲に重点を置いて作った感じがあって、最後の“Seein’ Your Ghost”が接着剤みたいに全部の曲を繋げてくれました」

ササノ「僕はさっきも言ったように考えて作らないと曲が全部同じ方向性になっちゃうから、1曲1曲の方向性を明確にして作れたのはすごくありがたかったです。ただいざ作ってみると〈こうじゃないんだよな〉ということも多くて、今回かなり余裕を持って作り始めたはずなんだけど、結局全然時間が足らなくて。でも、ちゃんと考えて作るとこうなるよな、と思いました。

『CASTLE』は個人的にはいい意味で、他者から見たら良くも悪くもかもしれないですけど、全体的に手癖っていう感じがあって、自然に出せるものだったんです。それをずっと続けることもできるけど、ここまでには脱構築っていう挑戦があったりして、たなかが言ってくれたように、それをどう自分たちで制御して、いいと思えるものに昇華できるか、そこが一番の命題でした」

――自分たちが作れるものを自然に作ったというよりも、意志を持って1曲1曲に取り組んだし、意志を持って曲調の幅を広げたと。

ササノ「3人とも結婚したし、たなかには子供がいるしっていうことで、結構言われるんですよ。〈愛を知ったから音が変わった〉みたいな」

たなか「ありがたいけどね」

ササノ「俺は腹が立っちゃったんですよね。音楽をやってて、結婚以外にも、身内が亡くなったり、人生にはいろいろあるわけで、〈結婚1つで音が変わってたまるかよ〉って。

もう曲を作り続けて20年になるし、根底はそんな簡単には変わらないけど、でも1人でも多くの人に僕らの曲を聴いてもらうために、今回は挑戦として、曲の幅を広げたいと思ったんです。なので、これまでは曲の最終的なまとめを全部僕がやってたんですけど、3〜4曲はIchika主体でまとめたものもあったりして、ちゃんと今までで一番幅のあるアルバムになったと思う。で、それを全部総括するというか、何なら今までのすべてを総括するのが“Seein’ Your Ghost”で、個人的にもちゃんとした区切りを提示できたと思います。なので、意図があって変わってきたことがちゃんと伝わるといいなって。

音楽は楽しいけど、そんなに気まぐれではやってない。〈みんなのために〉っていうのはものすごく押しつけがましい言葉ではあるんだけど、自分たちができることで、みんなにどう楽しんでもらえるかをずっと考えて、今回はバリエーションがいっぱいある。それに対して、〈これは違うな〉と思うこともあると思うし、僕も大好きなアーティストにそう思うときもあるけど……」

たなか「〈変わって良くなった〉って言われてるのはあんまり聞かないかもしれない」

ササノ「自分が好きなアーティストが変化をすると、複雑な気持ちになるのもよくわかるけど、いろんな曲が入った今回のアルバムを聴いて、〈これは好きだな〉っていうものが1つでもあったら嬉しい。僕にとってそういう作品ではあるかな」

 

〈養殖の悲しみ〉は歌えない

――各曲の役割をはっきりさせたという話でしたが、もともとたなかくんの中ではどんな構想があったんですか?

たなか「アルバムは楽曲ごとに良し悪しとは別の部分で役割があるなと思っていて。それを今までなんとなくふわっとやってきたんですけど、もうちょっと明確に言語化して、一回理想のアルバムを、他の人の曲を並べて作ってみたんです。案の定、そこからは全然それていくんですけど、ざっくりとした行き先を提示することで、作りやすくなるよね、みたいな感じ。

で、〈そろそろタイトルを決めたほうが、よりクリアになるよね〉っていうタイミングでできてたのが“B.U.G.”や“One Night Cruising”で、どれも基本的には喪失、失うことについて歌ってるなっていうところから……失うことに対する向き合い方はいろいろあると思うんですけど、〈忘れて踊る〉とか〈新しいことを探す〉というよりは、ドーナツの穴みたいな、〈ないことによって、なさの輪郭が浮き彫りになる〉というところに目を向けているものが多いなと思って。それで『Seein’ Your Ghost』というタイトルが出てきて、他の曲もその感じで作って、最後に表題曲を作って、みたいな流れだった気がします」

――喪失や過去がテーマになってる曲が多かったのは、今振り返ると、何かきっかけや理由があったと思いますか?

たなか「それはもう癖みたいなものですね。ただササノの言ってたことには反するんですけど、俺自身は昔とは明確に変わったなと思ってて。沈む要素が暮らしにおいてなさすぎて、メンタルめっちゃ沈む、みたいなことがもうないんです。それなのに、〈養殖の悲しみ〉みたいなのを作るのはナンセンスじゃないですか。他のアーティストに提供するもので、自分とは全くかけ離れたシチュエーションのものを書くことは全然可能なんですけど、俺が歌う曲でそれを書くのは難しい。

例えば、“Misery”は浅瀬ですごく溺れてて、でもそこがすごく深いような気がしちゃう、みたいな曲なんですけど、今はマジでピンとこない。そういう味の料理があって、〈それ美味いよね〉っていうことはわかるけど、でも今はちょっと違う。だから同じ喪失について歌ってても、書き方は結構変わってると思います」

 

Ichika Nitoがササノマリイのピアノをチョップした“花霞”

――ササノくんではなく、Ichikaくんが最終的なまとめをする曲が増えたというのは、自然な流れだったのでしょうか?

Ichika「Diosの活動と並行して、ソロのファーストアルバムを作っているうちに、自分のスキルが上がってきたんです。今はゲームや映画の音楽にも関わってて、そもそもDTMが上手くなってきたので、1人で完パケできる自信がついたから、ようやくDiosでもそれをやった、みたいな感じ。“花霞”、“醜形の女神”、“周回遅れ”は僕がメインで作ってて、逆に“B.U.G.”と“陽炎”はソロのツアー中だったから、ほぼノータッチ」

ササノ「“花霞”は3人でリレーをして、最終的に……」

たなか「普段はササノが巻き取るところを、全部Ichikaがやった感じ」

Ichika「“花霞”はライブとかフェスに向いてるから、メイントラックにしたいという意見がスタッフからあって、〈Ichika、お前が“花霞”をもっといい曲に仕上げろ〉みたいな、無茶振りをしてきて(笑)。なので、ササマリが作ってくれたやつを、よりフェス向きのロックな感じに一から作り直しました」

――ドラムは凛として時雨のピエール中野さんですね。

Ichika「生ドラムを入れたいなと思ってて、誰に叩いてもらおうかと思ったときに、僕は凛として時雨の大ファンなので、この感じはもうピエールさんかなって。で、お願いしたら、たまたまタイミングが合って、叩いていただけることになって。フレーズは一応全部僕が考えていて、それを忠実に叩いてくださった感じです」

――IchikaくんのギターもちょっとTKさん寄りに感じるし、真ん中のピアノの音からも時雨のSEを連想したりしました。

Ichika「ササマリが初めに入れてくれたピアノを切ったり貼ったりして」

たなか「いつもとやってることが逆だね」

Ichika「そう、ササマリが俺のギターをチョップするみたいに、俺がササマリのピアノをチョップして」

ササノ「こういうことかと思いました。おそらくもともとAメロに入れてたフレーズなんですけど、ピアノ単体になってるやんけ!と思って。あれは本来、俺は弾けないんですよ」

Ichika「それをいつもやってるんですよ。あなたが私のギターをチョップして、それをライブで演奏しなきゃいけない」

ササノ「いつもありがとうございます(笑)」

 

自分を愛してくれなかった世界への復讐として、逆に世界を愛する

――個人的には、“周回遅れ”のギターもすごく好きで。

たなか「“周回遅れ”のソロが一番いいんですよ」

――“花霞”とか“醜形の女神”みたいに、基本的にはかっちりしたギターを弾くイメージがあるけど、“周回遅れ”みたいなちょっとルーズなプレイもめっちゃいいなって。

Ichika「“周回遅れ”はローファイヒップホップの拡張版みたいなイメージで、歌も乗っけて、その中で急にジャズギターも放り込んだりして。

あとこの曲は、たなかの声と自分のギターがマッチするいい形を見つけられたんです。サビはもともとオクターブ下で歌ってもらってたんだけど、あえて上の方をメインに使ってみたらハマりが良くなって。吐息感のある歌の方が、クリーンのギターに合うなって」

ササノ「“醜形の女神”はいい意味で俺が作れない曲なんですよ。それがものすごくいい形になったなって。〈俺タッチできてないし〉と思いつつ、レコーディングだけ同席したんですけど、歌が入って、できたのを聴いたらすごくよくて、悔しいなと思って。〈それIchikaに言ったら喜びますよ〉って言われたから、〈よくて悔しい〉ってLINEしました(笑)」

たなか「俺も“醜形の女神”が一番好きなんだよね。曲としてもそうだし、歌詞とか歌唱とか、ミクロの部分でもそう。俺はやっぱり何らかの新しさを生みたいと思っていて、それがないとあんまり作る意味がないと思っちゃうけど、そういう新しさを一番きれいに出せたのがこの曲だなって。

前に“フライディ・チャイナタウン”をカバーしたんですけど、メロはそういう昭和歌謡の系譜です。かつ歌詞は、いわゆるメンヘラ女子みたいな子が主人公なんですけど、それこそ単に沈んでいく曲ではなく、自分を愛してくれなかった世界に対する復讐として、逆にこっちが世界を愛するっていう曲で、そうすると主体と客体が逆転して、人生における主語が自分になる。でもそれは単にハッピーな、〈愛されないなら、愛しちゃったらいいじゃない!〉みたいな話というよりは、もっと暗くて、愛憎の表裏一体のギリ愛寄り。毒としての愛みたいなものが、よく書けたんじゃないかなって」

 

〈打ち込みでどうにもならない音〉への挑戦

――ササノくんは今回いろんな曲に挑戦した中で、特に苦労した曲を挙げるとしたら?

ササノ「“B.U.G.”は本当に頭と時間とお金をかけました。最初たなかからの〈こういう感じの曲が欲しい〉っていうリファレンスがあって。で、ビート感かなと思って、ビートを先に作ったけどそうじゃなくて、結果ブラスだったんです。

でもブラスは、自分が吹奏楽をやってたから余計にそうなんですけど、全ての楽器の中で一番打ち込みでどうにもならない音だと思ってて。サンプリング感を出すならなんとかなるけど、ちゃんとフレーズのあるブラスはいまだに安っぽくなってしまう。なので、いろいろサンプルを買ってみたり、コネコネしてみたり、Ichikaにも助言をもらいつつ、最終的に今の形になって」

――〈打ち込みでも生演奏でもないサンプリングの質感をどう出すかが個人的なチャレンジだった〉というコメントもありますね。

ササノ「ブラスを入れた曲はこれまであんまり作ってこなかったし、入れても室内楽系統のトランペットとか、ゆったりとした流れのものが多かったので、ビッグバンド系は本当に難しいんだなと思いました。でも結果的にすごく楽しい曲になって、こういう曲を作れたらいいなっていうものが一つ形にできた気がしますね」

 

かつての自分のような人に話しかけたい

――途中でも話に出たように、やはりラストの“Seein’ Your Ghost”が今作のキーになる曲で、ぼくりり時代も含めた過去を見つめ直す歌詞になっていますね。

たなか「曲が全部出そろって、〈ラストにもう1曲何かやりますか?〉みたいになったときに、スタッフから、〈自分のことを書いた曲があった方がいいんじゃない?〉と言われて。個人的にはあまりそういうのはやる気がなかったというか、自分語りは嫌いなんです。自分の話をするよりは、美味しいものというか、意味のあるものをメインでやりたい気持ちがあるんですけど、今回は〈やってみたら?〉と言われたので、〈じゃあまあ、やりますか〉って、やってみた感じです」

ササノ「他者にとってはそれが美味しいし、ファンとしての気持ちもあるから、僕は〈それいいな〉と思って、あえて〈あの頃の感じ〉をやろうと思いました。

最初にIchikaがループとして使うギターをくれて、それがもう良かったから、そこからビートを作ったんです。結構自分の気持ちがこもってる曲ですね。自分のオタク心というか、〈この曲の立ち位置はこうであってほしい〉という気持ちがだいぶ音に表れたなって。

僕にとっては本当に総括の曲で、それをちゃんと伝えられるものにしたくて、刺激が強くて聴けない人もいると思うんですけど、それをあえてはっきりと、ちゃんと当時(ぼくのりりっくのぼうよみ時代)を想起できる形にしてあげることが大事な気がして、そうさせてもらいました。好きなんですよね、この曲」

――たなかくんは『&疾走』の頃から、〈聴いてくれる人のための曲〉という視点が生まれて、自分なりのそういう曲を作るにはどうすればいいのか、その試行錯誤の2年間でもあったように思います。その中で、〈いま歌いたいのは、おれみたいな誰かをあたためる言葉〉という歌詞があるように、音楽を届けたい対象が明確になって、だからこそかつての自分を振り返る曲が生まれたのかなと感じました。

たなか「個人的には、特定の誰かのために歌いたい、特定のこういう属性の人のために歌いたい、みたいなことはあまり念頭に置かなくて。でも曲ごとには結構あるんですよ。“&疾走”の〈正しいフォーム&疾走〉っていうコンセプトは全人類に当てはまるものだし、それが脳みそにちょっとでもインストールされると、より良く暮らせるし、生きやすいと思う。

そういうことで言うと、“Seein’ Your Ghost”に関しては、かつての自分みたいな人に話しかけたいという思いはありました。もちろん〈Diosから知った人は聴くな〉という話では一切なく、この曲をより深く聴いてくれるのは、ぼくりりをやってたときから聴いてくれてる人だろうな、とは思う。ただ、ギャップがすごくあると思うんです」

――ギャップというと?

たなか「自分はぼくりりが終わって、Diosが始まって、結婚をして、子どもも生まれて、本当に紆余曲折があって。やっぱり10年という時間は非常に長いので、人間としての性質みたいなものもすごく変わっていて、その変化に取り残されていると感じる人もいると思う。

その人もその人で10年間あったら変わってるはずなんですけど、俺が変わった部分とは別のところが変わっていて、当時ぼくりりにフィールしてくれていた部分が依然残っていたりする人にとっては、最近のDiosとか、それこそ“&疾走”とかって、置いていかれたような感じがしてると思うんですよね。なので、辛い思いをしてまで聴かなくてもいいというか、本当にラフに、その人が聴けるときに聴いて、楽になってくれたらいいよね、ぐらいの感じ。

自分の人生をありのまま歌うことで、過度な具体化が逆に裏返って一般性に広がるというか、全然別の人生を歩んできた誰かの、何か別のところにつながって、〈俺の人生もこうだな〉みたいに聴いてもらえたら一番嬉しいですね」

 

ドット絵の墓場

――〈ありのままの世界に/今日も雨は降るが/いずれ晴れるでしょう〉という最後のラインは、誰の人生にも当てはまりますもんね。Ichikaくんはこの曲をどう受け止めましたか?

Ichika「僕はそもそもぼくりりを通ってなかったんですよ。なので、この曲を作るとなったときに、なんとなくこういうことがしたいんだろう、みたいなことはわかりつつも、ササマリほどの解像度はなくて。ギターに関しては、墓場をイメージして作りました」

――〈墓前の花に あなたを想う〉という歌詞もありますしね。

Ichika「歌詞を読んだときは、これは家族のことであり、ここ2人(Ichikaとササノ)のことともリンクしてるのかなと思って、それは普通に嬉しくなりました」

――〈横を見れば二人がいて 今はなんか怖くないな〉って、僕は完全にDiosのことだと思ったけど、奥さんと子供とも受け取れるのか。

Ichika「僕はまずそっちを考えて、でもよく考えたらバンドの意味かって」

たなか「俺はどっちかっていうとバンドのイメージ。家族の話は頭のほうでしてるから。まあ、いいダブルミーニングということで(笑)。

ただやっぱりこうやって自分の人生を物語化して他者に提示することへの葛藤とか忌避感みたいなものは結構ありますね。なので、これからもこういうことをやっていくのかというと、そんなことはないと思う。でもありがたいです。画家で、初期・中期・後期みたいな、画風が変わっていくパターンがあるじゃないですか。あの感じがちょっとずつ、もう10年もやってると出てくるっていうのは、結構面白いなと思う」

――ササノくんが昔を意識してサウンドメイクをしたという話があったけど、じゃあ当時と全く同じかというと、そうではなくて、やっぱり変化がありますしね。

ササノ「今はIchikaもいるしね。僕があのとき作った“曙光”っていう曲が葬式を行うことに対しての手向の花束だったとしたら、今回は線香って言ったらいいのかな」

Ichika「ギターを入れるときは、ドット絵の墓場みたいなイメージ。重厚な墓じゃなくて、チープなイメージで、エフェクトはそういう感じ」

ササノ「お寺での法要というか、親戚が集まって……」

たなか「まあ、俺はそこまでガチじゃなく捉えてほしい気持ちもあって」

Ichika「俺はそうかなと思った」

ササノ「俺はちょっと厄介入ってるんで(笑)」

たなか「自分にとってぼくりりというのは別にタブーでもないし、もっとうまくやれたなと思うことはあるけど、それ以上でも以下でもないというか。自分の人生の通過点の1つで、いろいろご迷惑をおかけしたみなさんいらっしゃると思いますが、それもまあ、そういう意図だったというところもありますし、そうじゃなかったところもありますし……今はこんな感じです、ぐらいかな」

――〈ごめんね、反省あれども後悔はないんだ〉ともありますね。

たなか「という感じで、今は楽しくやれていて、ありがたい限りです」

 


RELEASE INFORMATION

Dios 『Seein’ Your Ghost』 Dawn Dawn Dawn(2025)

■完全生産限定盤

リリース日:2025年10月29日(水)
品番:DDDR-1009
価格:6,600円(税込)

■通常盤
リリース日:2025年10月29日(水)
品番:DDDR-1010
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. B.U.G.
2. ジレンマ
3. 花霞
4. 醜形の女神
5. One Night Cruising
6. 周回遅れ
7. 喪失のワルツ
8. 陽炎
9. Seein’ Your Ghost

 

LIVE INFORMATION
Dios Tour 2025 / Dance With Your Ghost

2025年11月16日(日)北海道・札幌 PENNY LANE 24
2025年11月26日(水)福岡 DRUM LOGOS
2025年11月28日(金)大阪 GORILLA HALL OSAKA
2025年12月02日(火)愛知・名古屋 DIAMOND HALL
2025年12月09日(火)東京・お台場 Zepp DiverCity (TOKYO)

■金額
スタンディング:6,000円(ドリンク代別)
指定席:6,800円(ドリンク代別) ※東京公演のみ

 


PROFILE: Dios
たなか(前職・ぼくのりりっくのぼうよみ)、YouTube登録者数270万人超えの今最も注目すべき世界的ギタリスト・Ichika Nito、ボカロやオンラインゲーム界隈ともリンクしぼくりり過去作も手掛けたトラックメイカー/シンガーソングライター・ササノマリイが新たに結成したバンド。2022年6月に1stアルバム『CASTLE』をリリースして以降、全国5大都市を巡る1stツアーを各地ソールドアウトで終え、2023年3月にはベーシストとパーカッショニストを加えた編成でBillboard Liveツアーを完遂。2023年9月に2ndアルバム『&疾走』をリリース。2023年10月に全国ツアーを満員で終え、2024年1月に各メンバーにフォーカスを当てた楽曲シリーズ〈VS〉のリリースやヴァーチャルシンガー・花譜を客演に迎え既存曲を拡張するなどDiosだからこそ挑める制作を続けている。2025年2月に対バンツアー〈脱構築β with〉にて和ぬか、なとり、PEDRO、Reol、礼賛といった面々を迎えし、大盛況でツアーを終えた。バンド名は、たなかの好きな漫画「ジョジョの奇妙な冒険 Part 7 スティール・ボール・ラン」の登場人物・Dioとギリシャ神話における陶酔や酩酊を司る神・ディオニュソスに掛けて名付けられている。

PROFILE: たなか
1998年生まれ。前職はぼくのりりっくのぼうよみ。ぼくりりを辞職した現在はたなかとして歌手活動のほか、楽曲制作・提供やフィーチャリングで他アーティストの楽曲への参加を行なっている。音楽以外にも文筆業やボルダリングなど様々なジャンルに取り組み活動中。また、やきいも屋を営み、わずか2ヶ月でやきいもを1.5トン売るなどの成果を残し、やきいも界でも注目を集める。
X:@aaaaaatanaka
Instagram:@aaaaaa_tanaka

PROFILE: Ichika Nito
イギリスのギター雑誌「Total Guitar」の読者が選ぶ〈史上最高のギタリスト100選〉で〈現在最高のギタリスト〉として8位にランクイン。2018年からゲスの極み乙女の川谷絵音らとインストバンド・ichikoroでも活動している。ドリーム・シアターのジョン・ペトルーシやザ・フーのピート・タウンゼントといった著名なギタリストはもちろん、ゼッドやマーティン・ギャリックス、ホールジーやXXXテンタシオンなどの楽曲をプロデュースしているJohn Cunninghamといった別ジャンルの世界的アーティストたちからも厚い支持を受けている。Ichikaの研ぎ澄まされた感性と唯一無二のギタースタイルとトーン、テクニックには海外からも楽曲提供や楽曲参加のラブコールが絶えない。またInstagramのフォロワー数はギタリストというカテゴリーにもかかわらず120万人以上、そして去年から始めたYouTubeは現在登録者数が270万人超えとワールドワイドな注目の高さが窺える、今日本で際立っている知っておくべきギタリスト。
X:@ichika_mo
Instagram:@ichika_mo

PROFILE: ササノマリイ
エレクトロニカやクラブミュージックに深い影響を受けつつ、ボカロやオンラインゲーム界隈ともリンクするビートメイカー/コンポーザー/シンガー。耳に残るメロディラインと融合された深度のあるサウンドデザインが特徴的で、自作のみならず他アーティストへの楽曲提供や楽曲制作、プロデューサーとしても活動している。また過去の映像作品が動画サイト・Vimeoのスタッフピックに選ばれ、アヌシー国際アニメーション映画祭2016の委託作品部門(フランス)、Anifilm(チェコ)、Golden Kuker-Sofia(ブルガリア)など数々の映像、アニメーションフェスティバルで入賞するなど音楽のみならずアート方面での注目度も高い。
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■Dios公式SNS
YouTube Channel:https://www.youtube.com/c/Dios_band
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