Diosがニューアルバム『Seein’ Your Ghost』を完成させた。『CASTLE』で自らの城を築き上げたのち、『&疾走』ではそこから飛び出し、冒険を開始した3人は、TAKU INOUE、Seiho、原口沙輔といった外部からのプロデューサー/アレンジャーと共作をしながら、『ガソリン EP』と『脱構築β EP』を制作。そのうえで、新作ではたなか、Ichika Nito、ササノマリイの3人で作詞・作曲・編曲・演奏をほぼすべて行い(“花霞”のみ、ドラムで凛として時雨のピエール中野が参加)、ロック、ファンク、ダンスミュージックから、シティポップ、ローファイヒップホップに至るまで、幅の広い楽曲を手掛けてみせた。
〈喪失〉がテーマになっているアルバムのキーとなるのは、ラストに置かれた表題曲の“Seein’ Your Ghost”。この曲でたなかは〈bkrr、それが自分だったって/もう思えないんだ ネガティヴじゃなくて〉と、ぼくのりりっくのぼうよみ時代から現在に至る足跡を自伝的に振り返っている。この歌詞はもともと自発的に書いたわけではなく、リクエストに応える形で作られたそうだが、今年がぼくのりりっくのぼうよみのファーストアルバム『hollow world』のリリースからちょうど10年であることを思えば、生まれるべくして生まれた1曲だと言っても過言ではないだろう。メンバー3人に制作の背景について語ってもらった。
〈&迷走〉を乗り越えた3人
――まずは『&疾走』以降にリリースされた2作のEPについて振り返ってもらえますか?
たなか「『&疾走』は明確なコンセプトがあって作ったんですけど、そのあとはあんまり方向を決めずに、いろいろ走り回ろう、みたいな感じでした。『ガソリン EP』ではササノじゃないアレンジャーの人やプロデューサーの人をお迎えしたり、“愛がすべて”はIchikaがメインで作ったり、いろんなことをやってみて」
――いろんな人と共作したり、今年2月には対バンツアーもあって、外部から刺激を受けながら活動してきた印象があります。
Ichika Nito「音楽的な話でいうと、方向を決めずに走り回ってたとは言いつつも、個人的には〈Diosどうしよう?〉みたいな、迷いの時期でもあったかなって」
たなか「&迷走ね」
Ichika「あんまり公に言うことじゃないかもしれないですけど、ササマリも結構ショートしてて」
ササノマリイ「終わってました」
Ichika「個人のワークスだったり、それぞれいろいろあって、だから〈外部のアレンジャーを探そう〉となったりもして。結果的にはいろんなことを試すいい機会になって、今回のアルバムでまた立ち戻れたというか、またここからやるぞ、みたいな感じになりました」
――『ガソリン EP』のときはリアルに他からガソリンを入れる必要があったと。
ササノ「僕は本当にショートしてました。そもそも僕は音楽の好みとか方向性に関して、だいぶ頑固じじいなもので、自分の中での理想というか、指標となるものがたった一個なんです。そのせいで、いいものを作ろうってなると、考えて作らないと全部そこに集約されて、全部同じになっちゃう。しかも、その自分の中での理想が人々に受け入れられやすいものではない自覚もあるので、自分がいいと思えるものを作った上で、どうDiosに貢献できるんだろう?っていう迷いがすごくあって。
それで〈じゃあ、今回は他の人にお願いしてみますか?〉という話をいただいて、『&疾走』から『ガソリン EP』では大元を別の方に作っていただいたりして。それが自分の刺激になればいいなと思ってたんですけど、まんまと刺激になりました」
――『脱構築β EP』や対バンツアーもまだ模索の期間?
たなか「対バンツアーはめっちゃ楽しかったけど、『脱構築β EP』というタイトルにしてるのは、〈まだβ版〉ということの表れな気がしますね。もうちょい行けます感があったというか、まだ今の俺でジャッジしないでくれ、みたいな(笑)」
