ファーストシングル『菜の花』からおよそ7年半。NegiccoのリーダーNao☆がファーストフルアルバム『オブザーバトリイ』を完成させた。本作は、既発のシングル曲に加え、THE BLDSによる“BAN BAN BAN”、SCOOBIE DOと再び組んだ“夜の太陽”、“ゼロ地点から歌わせて”に続き山本きゅーり(ノンブラリ)とJin Onoを迎えた“台風の夜には”、作詞・中島愛、作曲・connie、編曲・sugarbeansという座組みの“未来は”の新曲4曲と、リ・ファンデによるインストナンバー“見晴らし場所”“Observatory”を収録したトータルアルバムに。作品の背景とともにNao☆の近況やこれからの展望を語ってもらった。

Nao☆ (Negicco) 『オブザーバトリイ』 Fall Wait(2025)

 

育児中、でも止まらないNegiccoの活動

――アルバム完成おめでとうございます。コロナが流行り始めた2020年3月にMikikiでインタビューした際、Nao☆さんは「10年後も楽しいライブをしたい」と言っていたんですけど、そのあと少し考えて、現実的な数字として「やっぱ5年後かな」と訂正したんですね。あれから5年が経ちました。余裕じゃないですか。

「いやいや、全然です。大変です(笑)。ファーストフルバムがこうして形になって、みんなに直接お会いしてお届けすることができたりするというのは、もうすごく嬉しいです。リリースイベントで直接ファンの人とお会いして感想を聞けたり、みんなの反応を見たりするのは自分のモチベーションにも繋がりますし、すでにドキドキとワクワクが重なってます」

――一時と比べて活動できるようになってきましたか?

「そうですね、子供がちょっと大きくなってきたので。まわりの人たちにサポートしてもらいながら……結構なわがままを聞いてもらってるので、事務所的には大変だろうなというのはありつつ、アルバムをちゃんとお届けできるようにやっていけたらいいなって考えてます。

いまは3人でNegiccoとしての活動がやれていないなかで、自分のソロの曲数が徐々に増えてきて、ファンのかたからもアルバムを出して欲しいという声をいただけるようになってきたのもあって、ちょうどいいタイミングでアルバムを出せるのかなと感じています」

――Negiccoとしては昨年にアルバム『What A Wonderful World』を出してますし、メンバーのみなさんがお互いのスケジュールを埋めるようにソロ作を出しているので、リリースがずっと繋がっていて途切れている印象がないんですよね。すごいことだなと思うんです。

「それは事務所の回しかたがうまいんだと思います。いろいろと練ってくださってるのかな(A&R雪田容史氏曰く〈偶然です〉とのこと)。でも止まってるように見えちゃうと、〈Negicco終わってんな〉ってなりますよね?」

――育児中だとわかるので、さすがにそうはならないです(笑)。

「connieさんからも〈全然止まってるように見えないよね。結構稼働してるよね〉って言われるんですけど、まわりからはそう見えているんだと思います。自分たちがTパレ(T-Palette Records)にいてリリースイベントをたくさんやっていたときは、いまより何倍も稼働していたので、全然動いてる気はしないんですよね」

――Negiccoに限らず2010年代はリリイベがいまより盛んでしたしね。2025年は久々に〈TOKYO IDOL FESTIVAL〉にも出演されました。

「だいぶご無沙汰でした。頻繁に出ていた頃もアイドルの主流が少しずつ変わっていっているなという実感があったんですけど、いまのTIFに自分たちがはまるのかが気になりました(笑)。自分的には好きなアイドルさん……(東京)女子流ちゃんとかと一緒に出られたし、いいタイミングで出られたなとは思ったんですけど、やっぱり変わりましたよね。いまはかわいい感じが人気かなと思うので、正直、Negiccoの落ち着いた感じが一般の人に響いている感覚はないんですけど、自分たちの音楽や雰囲気を少しでもいいなと思ってくれる人がいたらいいなと思って出てました。ぽんちゃ(Megu)とふたりで出たので、3人の完全な姿を見せたかったというのもあるんですけどね」

 

地に足着けて音楽に向き合えるグループになっていけたらな

――先のことはわからないというのは前提として、活動ペースを少しずつ取り戻せそうな感覚はありますか?

「かえぽ(Kaede)が戻ってきたときに、どういう動きになるのかまだ想像できないです。Tパレからリリースして、いい感じに名前が出て、いろんなとこからお呼びがかかって、というのを経験した身からすると、その時期に比べると露出は減っていると思うんです。リアルなことを言っちゃうと、自分たちが活動したくてもできなくならないようにしなきゃいけないなっていう危機感はあります」

――危機感ですか。

「結婚してからはずっとありますね。これからの人生どうなるんだろうというワクワク感もあるけれど、みんなはどう感じながらアイドルを続けているんだろうと思うし、何年までできるんだろう、何年までやっていいんだろうというのはつねにあります」

――これだけ長く続けるとお手本もほとんどないですからね。もっと長いグループだとPerfumeとか、同じくらいのキャリアとなるとhy4_4yhあたりでしょうか。

「hy4_4yhさんは20周年のライブをされたんですよね。(MCで)Negiccoのことに触れていただいたとファンの人から聞いて嬉しかったです。自分的にはもう一段階、誰かに刺さるきっかけがあったらいいのかなと思っていて。土岐麻子さんみたいなアーティスト像に向かっていけたらNegiccoも先があるのかなと思ってます」

――いまなお知ってもらわねば、もっと言えば、売れなければ、という意識がある。

「それはどうだろう? 売れたところでみんなが動けるか、という現実的な問題もありますし(笑)。いまよりも地に足着けて音楽に向き合えるグループになっていけたらなとは思うんですよね。いい音楽をずっとやっていくにはどうすればいいんだろうって思いますし、それは昔よりいまのほうがよく考えることです」

――“ネガティヴ・ガールズ!”という曲が作られるくらい、つねになにかしらの不安を感じながら続けてきたのかなと。

「そうです! ここにきてやっぱり自分ってネガティブに考えちゃうのかなって感じてます。このあいだもゆっきー(前述の雪田氏)に〈めんどくさい〉と言われたばかりなんですけど(笑)」

――それだけ慎重な性格ということなのかなと。

「これから子供が小学校に上がることとかを考えると、どうなっていくんだろうという別の不安も付きまとってきて。いまは新潟と関東を行き来しているんですけど、二拠点生活の大変さを改めて感じるんですよね。

ただ、最近は子供が大きくなってきて、今日はママが仕事でいない、ということもワガママ言わずに理解してくれるんです。もしかしたら自分が考えているよりも活動がしやすくなるケースもあるのかな、とも思うんですけどね。

女性は特にそうだと思うんですけど、先輩たちは若い頃から活動してきて、結婚して、出産して、というのはこういう不安を抱えて活動されていたのかなと思うようになりました」

――将来のことを先回りすると心配事はいくらでも出てくると。

「病んじゃう人って、今日一日の反省と未来のことを考えちゃう人らしいんですよ。だからあまり考えないようにしたいなと思ってます。Negiccoも辞めようかなと思ったタイミングで辞めないでいられるきっかけがあってここまできたので、なるがまま、なすがままでやっていくしかないのかなと」

 

Negiccoにもない初のチャレンジをした曲も

――そんなこんながありながらもこうして作品をリリースしてくれるのはありがたいですし、素晴らしい内容でした。2018年リリースの『菜の花』は生誕の企画盤的な要素も強かったと思いますが、その後、『ベスト☆フレンド』以降は本格的にソロが始動しました。アルバムとしてまとめることになったときに、どんな作品にしたいと思っていましたか?

「私はライブで楽しく飛んだり跳ねたりアクティブに動くタイプなので、みんなと楽しめる雰囲気の曲がほしいなと思ったタイミングで“悠久の星”みたいな曲がもらえたんですね。楽しい曲もあるし、Negiccoにもないような初めてのチャレンジをした曲もあるので、いろんなテイストの楽曲が入ったアルバムになるなとは思ってました」

――アルバムに収録された新曲について触れていきたいと思います。“BAN BAN BAN”はTHE BLDSの作編曲で、作詞がNao☆さんです。第一印象では、リズムがものすごくてかっこいい曲だなと。

「ちょっとゆっくり歌うところもあれば、急にノリがよくなったりするとことかもあるのでリズムは難しかったですね。作詞については、曲調的にはしんみりした感じでもないので、ポップな、ラフな感じがいいんじゃないかとゆっきーと話していて。

なにか題材がないかなと思ったときに、東京駅で電車を降りるときに体当たりされたことがあったんですね。それでひとりで泣いてしまったんです。あとは洗濯物が乾かないとか、日常にはそういうこともあるけれど、ライブではっちゃけちゃおうよ、みたいな内容にしようと思いました。私はバンギャ時代にヘドバンしたりしてストレス発散していたんですけど(笑)、丁寧にライブを見るとかじゃなくて、フェスのように好きに頭を振ったり手を上げたり声を出したりできるような」

――“夜の太陽”はSCOOBIE DOのマツキタイジロウさんの作詞作曲で、演奏がSCOOBIE DOです。“ベスト☆フレンド”以来の座組みですね。

「“ベスト☆フレンド”はSCOOBIEさんにお願いしたいと自分から言って作っていただいたんですけど、理想的な曲がいただけたのでまたやってもらいたいなと思っていたら、〈マツキさんに書いてもらいます〉と連絡がきたので、楽しみにしていました。

“ベスト☆フレンド”のときはNegiccoのNao☆がどんな人かを見て書いてくれたんだと思うんですけど、今回はマツキさんがSCOOBIE節で好きな感じに作ってくださったのかなと思いました。聴いたときに〈まさにSCOOBIEだ!〉と思った曲です」

――“台風の夜には”はブラジリアンなアプローチの楽曲です。“ゼロ地点から歌わせて”を編曲したJin Onoさんが作曲・編曲で、作詞はノンブラリの山本きゅーりさんです。

「“ゼロ地点から歌わせて”のときはきゅーりさんの歌を参考にして歌ったんですけど、“台風の夜には”はできるだけOnoさんの理想に近づけるように歌いました。

私は裏声を意識して歌ってもどうしてもミックス(ボイス)になっちゃうんですね。だから完成した音源を聴くまではどうなるかわからなくて心配もありました。仕上がりを聴いて、自分の声ってこういう感じなんだなと改めて発見できました。ライブで歌っていったらもうちょっと変化する気がするので、そこはこれからの楽しみでもあります」

 

中島愛の歌詞から受け取った大切なメッセージ

――そして、“未来は”。作詞が中島愛さん、作曲がconnieさん、編曲がsugarbeansさんです。Negicco関連のアルバムは終盤に驚異的ないい曲が置かれるパターンが多いですが、これはまさにそうだと思います。アルバムのハイライトではないでしょうか。

「ゆっきーが歌詞はまめぐ(中島愛)さんにお願いしていると言っていて。ただ、まめぐさんが、自分でいいのかな、できないかもしれないと不安に思っていたようで。やってもらえるかわからなかったんですけど、こうして歌詞を送っていただきました。

まめぐさんはプラス思考というより、不安に対して繊細になる、Negicco寄りのかただと思うんです。そのまめぐさんの思いと、まめぐさんが知っているNegiccoと私の、すべてが重なった歌詞だと感じました。まめぐさん自身のこととも重なるから私もジーンとするし、しかも私たちのことでもあるので、不思議な感覚がありました」

――ポジティブな曲ではあるけれど、それこそ今日話しているような未来に対してのさまざまな思いがリアリティを伴って刻まれていますよね。

「はい。これを何年後かに歌ったときに、いまとはまた違った感情になるのかもしれないと思います。あのとき不安な気持ちだったけど、結局いまはすごくいい未来に辿り着けたね、という気持ちになれていたらいいなと思います。

まめぐさんから大切なことも教えてもらっている気がしたので、レコーディングのときはイメージをあまり作り込まず、歌詞が届いたときの素直な気持ちで歌いました」

――アルバムを締めるのがソロのスタートラインとなった“菜の花”ですね。ここから7年かけてアルバムまで辿り着きました。

「アルバムタイトルの『オブザーバトリイ』は観測所とか展望台という意味で、このアルバムが過去から未来までの自分を観測するというコンセプトなんですね。

30歳のときに“菜の花”を作って、当時はただただ自分の誕生日記念の曲という感じで、自分の存在ソングみたいな歌詞にしたんですけど、このアルバムで最終的に着地したのが“菜の花”になったのが意味がある気がしてよかったです」

――7年前の曲と2025年の曲が並んでも違和感がないなとも思いました。リリースした曲を並べたベスト盤みたいなものではなくて、“見晴らし場所”と“Observatory”のインスト曲が挿入されたこともあってしっかりアルバムらしいアルバムになっている印象を受けました。

「ありがとうございます。それは自分で聴いても思いました(笑)。もし10代の頃からソロをやっていたら違ったと思うんです。ネギの昔の曲を聴くと〈さすがに若いな〉って思ったりするので(笑)。Nao☆というものが仕上がった状態からの歌が並んだんだなとは思います。

いろんな自分を知ってもらえると思うし、30歳から模索し始めてここに辿り着いたけど、まだまだ自分を観測していく未来があったらいいなと思いますし、なにかのきっかけでこの作品に出会ってくれる人がいたら嬉しいなと思います。もし40代になって歌えてたらきっと違う味も出てくると思うので、それも楽しみですね」

 

自分たちが選んだ未来だから

――以前は「40代は想像がつかない」ということを言っていましたが、いまはこの先も歌っている想像ができるのではないでしょうか?

「あと3年ですね。そのときに事務所があったらやりたい(笑)。自分たちが制限をかけてしまっているというのもあるし、いろんな人たちを見てきて、ただやりたいだけで続けられないというのもわかるんですよね。私はできれば歌っていたいし、それが可能になるような活動をしていけたらなと。またツアーをやったり、フェスに出たりもしたいですし、Negiccoをやっててよかったと思える経験をしたいですね」

――しかし、こうして続けているのが偉大だなとしみじみ思います。

「今年、TIFに出たときにLinQの高木悠未ちゃんと話したんですけど、自分もNegiccoさんみたいになりたかったけど、どんどん後輩が入ってくるとそうはいかないのかな、みたいな現実的なことを言っていたんですね。それを考えると、メンバーが変わらないNegiccoというグループだったから続けられたんだなと思います。羨ましいと言ってくれる人たちもいるなかで、自分たちが選んだ未来なのだから、ちょっともう厳しくなりました、とはなるべく言いたくないですよね」

――序盤にも出てきた話題に少し触れますが、結婚して子供ができたことで活動がぐらつくことがありますよね。そのとき、特に女性は、続けられるのか、続けていいのかと悩んでしまう。でも、例えば、活動中のバンドマンがそういったことでバンドを辞めなきゃいけないとはならないじゃないですか。あるかもしれないけど、少なくともそこの男女差はかなり大きいわけで。それはやっぱりおかしな構造なのではないかと思うんですよね。

「それはつい最近思いました。女の人はそういうことを考える壁が必ずありますよね。長く活動できている人たちも、そのたびになにかを選んで、もしかしたら諦めなきゃいけない選択をしてきたのかもしれないって思うんです」

――結果的にそこを静かに切り拓いているNao☆さんやNegiccoの3人を尊敬しているし、グループの在りかたに希望を感じています。

「ありがとうございます、頑張ります。先のことはなにも決まってはいないけど……なんて言うのかな、私はずっと一緒にいる感覚があるんです。これからもみんなと一緒にいられるようにしたいですよね」

 


RELEASE INFORMATION

Nao☆ (Negicco) 『オブザーバトリイ』 Fall Wait(2025)

リリース日:2025年12月24日(水)
品番:FAWA-0034
形態:CD
価格:2,970円(税込)

TRACKLIST
1. 見晴らし場所
作曲・編曲 リ・ファンデ

2. 好きな歌をうたって
作詞 岩里祐穂 作曲・編曲 北川勝利

3. 何回もドアを叩くんだ!
作詞・作曲・編曲 カジヒデキ

4. 悠久の星
作詞・作曲 オオニシレイジ(Nagakumo) 編曲 Nagakumo

5. BAN BAN BAN
作詞 Nao☆ 作曲・編曲 THE BLDS

6. ゆるく ゆれる
作詞・作曲 connie 編曲THE BLDS

7. 夜の太陽
作詞・作曲 マツキタイジロウ(SCOOBIE DO) 編曲 SCOOBIE DO

8. ベスト☆フレンド
作詞・作曲 マツキタイジロウ(SCOOBIE DO) 編曲 SCOOBIE DO

9. Observatory
作曲・編曲 リ・ファンデ

10. 台風の夜には
作詞 山本きゅーり(ノンブラリ) 作曲・編曲 Jin Ono

11. ゼロ地点から歌わせて
作詞 山本きゅーり(ノンブラリ) 作曲 connie 編曲 Jin Ono

12. 未来は
作詞 中島愛 作曲 connie 編曲 sugarbeans

13. 菜の花
作詞 Nao☆ 作曲 北川勝利 編曲 北川勝利、Tansa

 


PROFILE: Nao☆
新潟市出身。2003年結成Negiccoのリーダー。作詞やイラスト、ハンドメイドアクセサリーの制作なども行う。